看護師が転職する理由…現在の職場の不満や問題点
■作成日 2018/2/27 ■更新日 2018/5/9
転職には、相当のエネルギーが必要です。看護師も他の職種と同様に転職にはかなりのエネルギーを使います。日勤夜勤など多忙な勤務の合間を縫うようにして、転職サイトに登録したり、看護協会の求人をチェックしたり、一般向けの求人誌や新聞広告から自分の希望するような職場を目を皿のようにして探します。
転職サイトに登録して職探しをする場合もあるでしょう。それでも希望するような職場に行き会えることはなかなかありません。
そして慣れない履歴書と職務経歴書とにらめっこしながら書類を書いていきます。看護師が人とコミュニケーションをとる仕事だからと言ってもやはり就職面接は特別なもの。緊張しないわけはありません。
それでもなお看護師が転職に踏み切ろうとするにはそれ相応の理由があるのでしょう。
それは人間関係の難しさからかもしれないませんし、収入や労働時間の長さへの不満かもしれません。この3つは看護師が転職を考える3大要因と言われています。この3大要素で転職を考えるきっかけになる様な問題が起きるパターンを見て行きましょう。
看護師の退職理由1:人間関係の不満
シフト勤務で二交代や三交代で夜勤もこなし、人の命や健康を預かるミスの許されない仕事をしており、常に緊張感の高い状態でいると言えるでしょう。こういった環境に絶えずさらされていると、ちょっとしたことで人間関係がギスギスすることがあります。そういう状態は自分だけでなく、周囲のスタッフも過度の緊張感を受けてストレスを感じやすく敏感になります。
そんな緊張感に満ちたセンシティブな環境では、どんな相手であっても摩擦や衝突が起こりやすくなるでしょう。
日々顔を合わせてチームで働いている先輩や後輩、同期などの看護スタッフ同士でも気の使い方が変わってきますし、さらに上司や担当科の医師、他科の医師、多くの他職種のスタッフ、そして患者とその家族。多くの人と接する機会が多い看護師だからこそ、尚更ストレスを感じる場面に遭遇する率もも多いのではないでしょうか。
そして、日々の小さなストレスがだんだんと積もり積もって、対人関係のストレスで職場を変わりたい、辞めたいという気持ちが募っていく場合もあるのではないでしょうか。
しかし、はたして相手側だけに問題があったのでしょうか?自分のコミュニケーションには問題はありませんでしたか?
見方を変えれば、そのコミュニケーションの裏側には、良いコミュニケーションに変えられる側面もあるのではないかと思います。人は良い面悪い面を白黒つけたがりますが、コミュニケーションや対人支援の場面では、はっきりと二局に分けられるものではありません。
もし、好ましくない反応が返ってきたならば、そこには何か理由があったのかもしれません。好ましい反応を求めた場合、どの様な対応が果たして適切だったのか考えてみたことはありますか?
看護師の退職理由2:収入の不満
収入に関する不満も多いようです。
一般の職業に就いている女性に比べると、看護師は高収入と言われています。しかし、夜勤や超過勤務などをこなしている割にはやはり給与水準は低いものではないでしょうか。
給与に反映されないサービス残業も問題になっています。
人の命に関わるような業務内容やその責任の重さに勘案したならば、割に合わないと思うのも致し方ないでしょう。しかし、仕事を通じてたくさんの学びはありませんか?仕事をしながら担当の科について学ぶのは大変ではありますが、学んでいたからこそ良い結果に繋がったり、最悪の結果を免れたりした経験はみな何かしらあるのではないでしょうか。
自己実現というとあまりに大きな表現になってしまいますが、小さな達成感や成功体験はあなたに何をもたらしたでしょうか。得られる物は何もありませんでしたか?思い返してみてください。
看護師の退職理由3:勤務時間数の不満
他の仕事と比べてみると、意外にもトータルの勤務時間数だけならば、看護師は一般の職業に比べて必ずしも勤務時間が長すぎるとは言い切れません。しかし、夜勤を含むシフト制の勤務などで、自由になる時間は限られます。勤務時間が不規則なことから、生活リズムが狂ってしまいがちです。また、夜間に働くことで体への負担やストレスは大きいといってもよいでしょう。
看護師は女性が多い職業ですから、出産や幼い子どもの育児に大きく影響を受けます。配偶者をはじめとした家族の助けや、保育所などの預かり施設がなければ働き続けるのは難しくなります。特に夜勤があれば育児や家事、介護などと看護師勤務は両立するのが難しいのでしょう。
配偶者をはじめとした家族のサポート体制が充実していなければ、家事と仕事の両立に困難を感じることになります。困難を感じない方の方が少ないかもしれません。病院併設の保育所があったとしても、子供の体調が思わしくなければ仕事の途中でもお迎えに行き、早退しなければなりません。
配偶者の仕事の状況も家事や育児に影響がありますね。帰りが遅いような忙しい仕事をしていたり、時には出張や転勤の話も出るかもしれません。病院併設の24時間体制の保育施設があるなど、病院として育児に支援をしているところもあります。
育児と仕事の両立に悩んだ時、1人で抱え込んではいませんか?周囲にも同じような悩みを抱えた方や、それを乗り越えて仕事をしている人もいるかもしれません。ぜひ、声に出して相談してみましょう。きっと何かしらあなたの助けになってくれるはずです。
隣の芝生は青く見えるといいますが、実際に転職してみても同じような状況に陥ることも多々あります。かえって悪い状況になる場合もあります。同じ職場で働き続けることに工夫をすることは悪いことではありません。新しい場所で一から始めるよりも、今いるところで再スタートを切る方が断然ストレスは少ないのです。
看護師の転職に適した時期とは
短期間で転職を繰り返すことは、次の採用にとってはむしろ不利に働きます。それでも、突き詰めて考え自分に問いかけた時に、やはり「転職したい」「転職の可能性について考えてみたい」との結論に達したのなら、簡単に自分のキャリアを客観的に見つめ、紙に書き出してみましょう。
その後に書くことになるかもしれない履歴書や職務経歴書を書くのにも役立ちますし、自分の強みや弱みも見えてくるかもしれません。
逃げ道ではなく、前向きな手段としての転職
先ほど述べた転職のきっかけになる三代要素のみを追求していくことも必要な場合もありますが、それだけでは転職先が見つからないということもあるでしょう。
具体的に何に不満を持っていて、どうすることで改善できるのか、または現在の職場で満足している点も具体的に考えてみましょう。自分と向き合い、自分と現在の職場での状況や生活を振り返ってみるのは転職するにしてもしないにしてもとても良いことです。改善の余地があるのかないのか、ゆっくり考える時間も必要です。
転職のきっかけとなる三代要素について考えてみましょう。人間関係や収入、労働時間に対してあなたが何かアプローチして改善できることはありませんか?
その職場では改善することができなかったとしても、振り返ることは必ず次の転職先で役立つでしょう。振り返り、具体的に改善策を考えてみることをお勧めします。
次に、自分の経歴や特性について考えてみましょう。あなたの仕事上の強みや弱みはどんなことですか?小さなことで構わないのです。コミュニケーションが笑顔でできる、きちんと必要なケアを予定通りにできる、患者さんと視線を合わせて会話できるなど、日常できていること、気をつけていることなどを改めて振り返ってみましょう。
経歴についてはどうでしょう。学校の卒業歴だけが経歴ではありません。今までに転職の経験はありますか?転職だけでなく配置換えによる複数の科での職務経験や院内の役割についてはどうでしょう。何か委員会活動やチームでの役割がありましたか?色々と細かにみていくと確かな自分の足跡が見えてくるかもしれませんね。
印象に強く残っている成し遂げたことはありますか?看護師は医師の指示による医療行為の介助、患者さんの療養上必要な日常生活の介助を行いますが、日常的な行為と直結する解除や処置のため、達成感を得にくい職業の1つでしょう。
外科病棟ならば、整形外科や耳鼻科、産科など、はっきりとした目標があり、達成感を感じる場面もあると思います。しかし、一般内科や療養病棟、施設、ターミナルケア施設などでは、ケアを続けても改善が見られない、今後死に直結する疾患で緩和がなかなか難しいなど、達成感を得難い勤務先もあります。
そんな場合でも、食事ができるようになった、苦しいという言葉が減り笑顔が見られるようになったなど、小さな変化を見逃さず、小さくとも達成感を感じられる感性を磨きましょう。きっと今までとは違う患者像が見えてきたり、自分の仕事に対する姿勢も変わることでしょう。
特別な技術や資格はありますか?取りたい資格や得たい技術はありませんか?近年は、認定看護師や専門看護師が増え、需要もあります。あなたは何か興味のある分野はありませんか?認定看護師や専門看護師の資格を取りたい場合、その専門科で働かなければ資格を取る要件は満たしません。
病院では、認定看護師や専門看護師の配置で加算が取れることもあり、資格取得に力を入れている病院もあります。病院の協力なしには取れない資格ですから、もし認定看護師や専門看護師に興味があるのでしたら、今の職場では資格取得に協力的か、資格を取得するための要件を満たしていますか?
そう言ったことも調べてみましょう。もしかしたら身近にそう言った資格を持ち働いている方がいるかもしれません。少しでも認定看護師や専門看護師などスキルアップに興味があるのでしたら、転職希望先がどのような体制になっているかも調べてみると良いでしょう。
スキルアップのために何か資格を取るだけでなく、日常的に担当科の治療や看護について雑誌や講習などで学んでいますか?医学の常識は数年で常識が非常識に変わることがあります。例えば、現在は創傷治癒のために創を消毒しませんが、数年前までは消毒しないなんていうことは考えられなかったでしょう。常に学び、新しい情報を得ることは医療職者の責務でもあります。
認定看護師や専門看護師などの資格だけでなく、職場内の管理者などを目指すのはどうでしょうか?施設により呼び方が異なりますが、スタッフを束ねるチームリーダー、病棟を束ねる師長、病院全体の看護部門を束ねる看護部長など長だけをみてもこれだけあります。
サブリーダーも含めるとさらに多くのポストがあります。チームの一員からではなく、大きな視野を持って周囲の調整を図っていく役割も非常に重要です。幅の広い視野と計画性が養われることでしょう。
今までとは異なる質の責任も生じますから、性格や特性で合う合わないがあるかもしれませんが、一スタッフとして問題視していたことを解決するために上層部を目指すのは良いことです。現場ではどうすることもできないことでも、病院全体で改善していくことが可能になります。一スタッフだった経験を大きな視野で役立てられるチャンスでしょう。
仕事上の得手不得手について
仕事上の得手・不得手はありますか?技術的に不得手なことがあれば習熟度を上げるために練習が必要でしょうし、そうして習熟度を上げる姿をチームスタッフに見せることはチーム全体の士気を上げます。練習する過程で得られたことはチームと共有することでより士気も技術も高いチームづくりに貢献できます。
自分1人で仕事をしているわけではなく看護はチームで行うものです。看護チームでの自分の役割も意識して仕事ができると良いですね。
このようなことを考えながら、思いついたまま正直に紙に書き出していくことで、求める仕事の方向性や自分のことを客観的に見ることができます。大事なのは、現状から逃げるために「転職したい」と考えるのではなく、どんな風に働きたいか、どんな看護師を目指し働いているのかを考えながら転職について考えてみることを心に留めておきましょう。
転職するにしてもしないにしても、きっとあなたのステップアップにつながる様に自分を見直していくことがとても大切です。