赤くて丸いドーナツ『赤血球』
■作成日 2018/2/27 ■更新日 2018/5/9
元看護師のライター紅花子です。
今回から「ミクロの世界をのぞいてみよう」と称した新コラムをスタートします。知っておくとほんの少しだけカッコいい、元看護師による看護師のための薀蓄(うんちく)コラムです。
1回目の今回は、看護師ならば誰でも知っている「赤くて丸いドーナツ」のお話しです。
赤血球のとはこんな血球
体の中にある「赤くて丸いドーナツ」といえば、赤血球ですね。赤血球の主な仕事は、全身に酸素を運搬することです。血液全体のうち90%以上を占めており、細胞まで酸素を届けながら、血流にのって全身をめぐります。それと同時に、末梢の細胞で不要となった二酸化炭素を運びながら、心臓・肺まで戻ってきます。
赤血球の構造、まずは大きさです。赤血球1個は、直径およそ7~8㎛(マイクロミリ)、厚さはおよそ2㎛(マイクロミリ)。真ん中がへこんだ円盤状であることから、「ドーナツ」と表現されます。高い柔軟性と変形機能を持っていて、赤血球自身よりも狭い、内径が3~6㎛の毛細血管をも通ることができます。
ヘモグロビンって??
赤血球が赤く見えるのはなぜでしょうか。それは、赤血球の細胞質の中に、タンパク質の一種である“ヘモグロビン”が含まれているからです。ヘモグロビンは「1つのヘムと1つのグロビン鎖」で1つのサブユニットを形成し、これが4つ合わさって形成されます。また、“ヘム”と呼ばれる物質は、「プロトポルフィリン環と鉄」が結合したものです。ヘムは、グロビン鎖の内側にある空間に、ヘムを取り込むことで、ヘモグロビンが完成します。
ヘムに含まれる鉄には、酸素と結合する性質がありますが、ヘモグロビン1分子には4つの酸素が結合します。赤血球1個には、2億5000万個のヘモグロビンが含まれるため、赤血球1個でおよそ10億個もの大量の酸素を結合させることができる計算です。
赤血球 七変化?
では、赤血球はどのようにして生まれるのか、その誕生の瞬間までを見てみましょう。
ルーツは共通の「造血幹細胞」
赤血球に限らず、すべての血球(赤血球・白血球系の各細胞・血小板)は、同じ種類の細胞「造血幹細胞」から生まれます。
造血幹細胞が自己複製や分化を繰り返すことで、それぞれの血球へと成長します。この過程を「造血」といい、成人ならば主に骨髄の中で行われますが、胎児期は主に肝臓や脾臓、出生後は主に骨髄というように、人の成長とともに変化していきます。
末梢血への関所 基底と小孔
骨髄内には、網目状になった静脈洞が広がっています。造血幹細胞は、静脈洞の隙間で「自己複製と分化」を繰り返しながら成熟度を増し、機能を持った成熟血球へと成長していきます。骨髄側と静脈洞側の間には関所のようなはたらきを持つ3層の構造が存在しており、成熟して各々の機能を果たせるようになった血球のみが、小孔とよばれる孔を通り抜け、静脈洞に入ることができます。
赤血球の成長過程
血球のすべての始まりは造血幹細胞なのですが、そこから急に一人前の赤血球になれるわけではありません。いくつかの過程を経て、成熟した赤血球となります。
関門を通過したオトナの赤血球は、120日間にわたって体内を循環し、主に脾臓で破壊され、その一生を終えます。
貧血
赤血球はその成長過程の中で、何かしらの障害が起こることがあり、いくつかのタイプの貧血の原因となります。貧血は、赤血球が酸素をうまく運べないことにより、組織での酸素需要に酸素供給が追いつかない状態のことを言いますが、分かりやすくいえば、赤血球が生まれる量と失われる量のバランスが崩れている状態ということです。バランスが崩れるのは「正常な赤血球数が生まれる数が少なく、十分な機能を果たせない」こと、「失われる赤血球の量が多いこと」、もしくはその両方による場合があります。
その原因となるのが、赤血球の成長過程での障害ですが、これは成長過程のあらゆる段階で起こり得ます。ここでは主なものを挙げています。
貧血の最もよい指標は、血中ヘモグロビン濃度です。WHOによるヘモグロビン濃度による貧血の基準値は、成人男性:13g/dL未満、成人女性・小児:12g/dL未満、妊婦・幼児:11/dL未満とされています。そう、検査結果では「Hb」と表示される、あの数値ですね。
参考資料
北海道大学病院 血液内科 血液の病気について
http://www.hokudai-hematology.jp/patient/blood-disease/
一般社団法人日本血液製剤協会 血液製剤について 血液について 赤血球
http://www.ketsukyo.or.jp/blood/blo_01.html
日本赤十字社 血液の基礎知識
http://www.jrc.or.jp/donation/first/knowledge/
書籍
病気がみえる vol.5: 血液 - 医療情報科学研究所