産業医とは、どんな仕事なのか
医師が働く場所は、医療機関だけではありありません。今回は企業で働く医師の仕事として、産業医についてご紹介します。
知られてない産業医
「産業医」という仕事は、医師の中でも良く知らないという方が多いのではないでしょうか。知られていない、そして知らないことで産業医として働くことに不安が持たれるため、産業医を育てる学校であっても実際に産業医として働く人はその中の2割にも届きません。
医師の中でも仕事内容への曖昧な理解から、医師としてのやりがいが得られない、あるいは目指しているものが違うなどと感じることで、転職では選択肢の1つにも入れないという人が少なくありません。"
産業医とは?
産業医とは、企業の中で医師としての役割を持つ人のことを言います。しかし仕事内容として、医療行為を行うことはほとんどありません。中には「医療行為をしないのは、医師ではない」と感じる人もいるのではないでしょうか。
産業医の主な仕事としては、職場の環境改善や従業員の健康管理、それに伴う助言といったアドバイザー的役割になります。医務室といったイメージが強く、健康診断をするなど病院の医師とは役割が違うと思われている方が多くいらっしゃいます。
また産業医は企業で勤務する仕事ですが、何も大手企業だけに存在するものではありません。従業員(正社員、派遣社員、パート、アルバイトを含む)が50名以上いる場合、産業医が必要になってくるのです。"
産業医になれる医師
医療行為を行わないのであれば、医師免許をもたない人でも産業医になるのではと思われがちですが、産業医に医師免許は必須です。さらに1996年の法改正によって、医師の免許に加え以下いずれかの資格も必要となりました。
・日本医師会認定産業医
・産業医科大学の基本講座終了者
・労働衛生コンサルタント
こうした資格を持ち、産業医としての経験を積んでいけば、転職でも選択肢の幅が広がってきます。しかし実態として、そこまで産業医を続けている人は多くありません。
産業医に対する不安
産業医は病院などの医師に比べて、ハードな部分が少ない仕事であるといわれています。ではなぜ産業医を希望する人や、長く勤める人が少ないのか。
・この不景気で企業が倒産したら、就職先がなくなるのかもしれない
・やってみて自分のやりたかった医師というものと違っていたらどうしよう
産業医を転職先としてご紹介した際には、こうした不安・意見が挙がってきます。
実際に産業医として働くと、企業の従業員ひとりひとりを産業医一人で診ることになります。そのため世間で言われているより、ハードな一面もある仕事です。
特に従業員の労働環境を見ていくことが多いので、メンタル面での判断知識が必要になることも多くあります。そういった労働環境と疾患との因果関係についての知識が必要なため、法律の既成によって医師免許以外の資格も求められているのです。
また企業である以上、倒産の可能性はどんな職場でもゼロではありません。しかしこれは、医療機関でも同じことでしょう。しかし産業医は、現在とても人手不足な状況があります。そのため不安はあると思いますが、需要の多い産業医は何かあっても就職し易い環境といえるでしょう。
確かに医療行為をすることは滅多にありませんし、人によっては自分のやりたいことと仕事内容が合わないことも考えられます。しかし専門性を活かして誰かをケアしていくという視点は同じですので、そういったことにやりがいを感じる医師であれば、産業医は思っているよりもマッチした仕事かもしれません。
この記事を書いた人
医師キャリア研究のプロが先生のお悩み・質問にお答えします
ツイート