相続税の税務調査に選ばれやすい医師の7つの特徴
■ 記事作成日 2021/1/6 ■ 最終更新日 2021/1/6
突然ですが、医師とは厳しい相続税調査が入りやすい筆頭の職業です。
医師には裕福な家庭出身の方が多く、両親も医師、もしくは、ウチは代々医師の家系という人が珍しくありません。また、医師の多くはお子さんにも医師になって欲しい、もしくは、既に医師になっているが多いのはご存知のとおりです。
そういった多くの医師家庭に共通する悩みが相続税の問題。ご自身が親から資産を相続する時に加え、お子さんに資産を相続させる時も含めると、人生で2度ほどこの難題を解決しなければなりません。
そこで今回は、相続税の税務調査の基本に加え、調査対象として選ばれやすい医師の家庭について、共通する特徴を7つご紹介します。相続税にお悩みの先生にとっては非常に重要な情報ですので、最後までご覧になってください。
本日は
序章.相続税調査の現状
1.金融資産2億円超の医師家庭
2.開業医、企業経営者の医師家庭
3.申告書に不備がある、申告をしない医師家庭
4.海外口座を所有する医師家庭
5.過去に税務調査で引っかかった医師家庭
6.外部からのタレコミ(SNS含む)
7.被相続人が浪費家の医師だった家庭
この順番でお話していきます。
序章.相続税調査の現状
先に述べましたが、医師は相続税務調査が入りやすい職業の筆頭。しかし、相続税制度にはいろいろな控除や特例があり、それらの適用で相続税はゼロになるケースもあります。
有名なのは相続税の基礎控除で、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」までは非課税となり、申告そのものが必要ありません。
また、被相続人が配偶者であれば1億6,000万円まで控除される制度も有名です。
とはいえ、税収不足に悩む政府としては、取れるところから1円でも税金を取りたい。その格好の対象が相続人ですので、小さな隙間から強引に体をねじ込んできて実地調査をしてきます。
コロナでさらなる税収が必要となる政府が、この傾向をさらに強めることは間違いないでしょう。
実地調査の対象になる確率ですが、年度と地方(税務署の管轄エリア)により異なるものの、およそ平均すると相続税申告者全体の2割に税務実地調査が入っています。
そして、実際に調査に入られると、8割の確率で申告漏れ等により追徴課税がされています。
尚、税務調査対象となる項目は一般的に以下のものです。
- 不動産(法務局の登記簿)
- 過去10年分の預貯金の出入金履歴(銀行や郵便局)
- 過去10年分の有価証券の移動履歴(証券会社や信託銀行)
- 生命保険金の支払い履歴
- 所得(所得税の確定申告書や源泉徴収票、役員となっている(いた)法人の法人税申告書)
では、具体的に税務調査に入られやすい医師とその家庭について説明していきましょう。
1.金融資産2億円超の医師家庭
税務調査は「追徴課税ができそうな医師家庭」を優先して選出します。その代表は相続額が大きい富裕層。国税の持つデータベース、KSKシステム(国税総合管理システム)には、亡くなった被相続人の過去の収入や支出のデータが蓄積されており、それに基づき調査対象先が選出されます。
亡くなった故人の過去履歴から「この医師はだいたいいくら位残して亡くなったはずだ」と推測値を立てた上で、税務署員はやってきます。
この推測値と申告額との差が大きい場合、「金を隠しているのでは?」と疑われるきっかけとなります。
調査先は地域差などあるものの、しばしば「2億円を超える金融資産」を有する先には調査が入りやすいと言われます。尚、相続資産としての土地は評価額が変動しやすいので、それよりは現金、株式、債権などの流動性が高い金融資産の割合が多い医師程、調査対象になりやすいです。
また、相続額が小さくても実地調査をされる可能性は十分にあります。
その場合、調査対象にされているかどうかの指標があります。
相続申告前に、「相続税についてのお尋ね」および、「相続税の申告要否検討表」が送られてくると、相続額が少なくても税務署からは調査対象とみられていると推測できます。このお便りに返信しないと、更に実地調査の可能性が高まると言われます。
2.開業医、企業経営者の医師家庭
相続人もしくは被相続人が勤務医に比べて開業医だった場合、相続税の実地調査がダントツで入りやすくなります。これは個人医院でも医療法人でも同様であり、開業医は勤務医よりお金のコントロールが相対的にしやすいからです。
相続人の過去の医院経営や他の事業、被相続人の現在の事業についても現状の資産状況を表す決算書や株主名簿など合わせて調査される可能性を覚悟してください。
また、法人だけでなく家族にも調査が同様に入るケースがあります。
お子さんに対する年間110万円の生前贈与目的で、やたら高額の預金を銀行にプールしていたり(名義資産)、20代位のお子さんが不動産や超高級車を現金一括購入していたりすると、その資金の出どころとして相続人の資産が調査されるのは間違いありません。
3.申告書に不備がある、申告をしない医師家庭
単純な話ですが、申告書の記載に漏れ、計算ミス、記入上の不備があると、それだけで調査対象の候補に祭り上げられます。申告書の単純記入ミスは、サクッと調査に入り、手間なくさっさと追徴課税を召し上げることができる「イージーな安牌案件」です。
また、申告書第1表(1枚め)に税理士の名が入っていない場合も「バックに税理士がいない医師からは取りやすい」と判断されて調査されやすい傾向があります。
4.海外口座を所有する医師家庭
海外の金融機関に口座を持っていたり、資金移動をしたりした形跡があると調査対象間違いなしでしょう。一昔前にはタックスヘイブン等を利用した海外オフショア節税が存在しましたが、現在ではまず不可能。むしろ余計な調査を招き入れるきっかけになっています。
尚、1回100万円以上の海外送金については、金融機関から税務署長に提出される「国外送金等調書」経由で、国に全てを補足されていると考えてください。
5.過去に税務調査で引っかかった医師家庭
相続人、被相続人のどちらかもしくは双方が過去に税務調査を受け、追徴課税(特に重加算税)を受けた経験がある場合、非常に有力な相続税調査対象候補となります。
理由は簡単で、「1度やった人は次もまたやるはず」と税務署が考えているからです。しかも考えているだけでなく、実際に追徴課税を受けた人は、再度、また受けるケースがとても多いそうですので、統計的にも間違いないとのこと。
過去の調査履歴はKSKシステムで即座に弾きだされるので、ごまかしようがありません。
6.外部からのタレコミ(SNS含む)
実際に税務調査に入るきっかけが「外部の第三者によるタレコミ」というケースはあとをたちません。
経営している医院のスタッフ、患者さんを始め、過去に他人と深刻なトラブルになった事がある先生は、相手方によるタレコミに注意すべきです。単なる雑談のつもりで「いやあ、相続税対策が大変でまいっちゃうよ」と口に出したがために、妙な誤解をした周辺の人物が税務署に連絡を入れるということすら日常茶飯事です。
また、ブログやSNSでお金持ちアピールをしている先生も注意です。国税も税務署もそういう口が軽いタイプの医師を常にネット上で定期チェックしているのは有名な話です。
7.被相続人が浪費家の医師だった家庭
KSKシステムは亡くなった方の過去の収入を全て捕捉しているとお話しましたが、仮に、相続人が非常に金遣いの荒い医師だった場合、何にお金を使ったのかわからないが、とにかく資産をろくに残せなかった、という場合があります。風俗やギャンブルにハマっている先生にありがちなケースです。
このように表に出てきづらいお金の使い方をする医師がなくなった場合でも、税務署のKSKシステムは「いや、どこかにお金を隠し持っているはず。申告額よりかなり稼いだはず」というデータを容赦なく出してきます。
そうなると、ロクに資産が残っていないのに調査対象にされた…というケースが発生します。こういった場合は、調査で事実をストレートに説明するしかありません。関係者全員にとって時間の無駄でしかありませんが…。
また、申告期間中に、不動産屋、証券会社、ハウスメーカー、高級車ディーラーなどから反面調査として「被相続人の高額現金支出」が浮かび上がってきた場合も、やはり調査対象になる可能性があります。
そのお金の出元はどこですか?というわけですね。
従って、申告期間中に大きな出費をするのは控えるほうが得策でしょう。
まとめ
ではまとめです。
本日は、相続税調査の対象になりやすい医師とその家庭7つの特徴についてお話ししてきました。
このような結論になっています。
相続についてお悩みの先生は、是非今回の記事を参考にご自身の生き方の参考にしてみてください。
この記事を書いた人
医師キャリア研究のプロが先生のお悩み・質問にお答えします
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