医療法人の事業承継を考える
■ 記事作成日 2016/6/8 ■ 最終更新日 2017/12/6
事業承継問題でお悩みのドクターは多い
医療法人として運営をしているなら、事業承継についても様々な考え方を知っておくべきと思います。この事業承継というものは亡くなってからではなく、その前に慎重に準備を進めることで、理事長個人の将来におけるライフワークにも関係してくるのです。
現在は勤務医をされていらっしゃる先生の中でも、将来的には独立開業を目指している方は大勢いらっしゃると思います。知っておいて損はないお話ですから、是非、目を通しておいてください。
それでは以下、主な手法についてご説明いたします。
1.親族もしくは第三者を理事長に就任させる
これまで最もポピュラーな考え方、手法でした。院長先生がある年齢に達した場合や親族の方などにある程度権限を委譲してもいいなと思った時点で、理事長を交代します。
その際に、院長先生は役員退職金の支給を受けます。支給方法も一括支給の他に、分割支給などで法人の資金繰りに影響が出ないようにすることも可能です。何と言っても、法人は退職金という経費で節税はできるし、院長先生は退職金なので通常の給料よりも大幅に税金が安くなります。
また、その後も理事には居残ることで理事報酬を受けることは可能です。一般企業で言う会長職としての立ち位置となります。(ここで、理想形は医療行為全般を次世代に任せて、トップセールス、地域貢献など大所高所から経営を見守ってください。)
2.M&Aで事業譲渡を行う
いわゆる医療法人を丸ごと売却することです。医療法人の理事長をついてくれる適当な人材が見当たらない場合には、このM&Aはかなり有効な方法といえます。通常はスタッフの皆さんは売却後の元で何事もなかったように働くことになるので、相手先が安定した法人であるならば理事長にも従業員にもメリットがあります。
また、理事長は一定期間医療法人に残っていただき、急激な組織の変化にスタッフが不安の感じることの無いように配慮することがベターです。
そして金銭的なことを申し上げますと、M&Aの場合には交渉にもよりますが、医療法人の価値を算出しそれをベースに売買金額を決定していきます。この価値は時価となりますが、売主と買主ではその時価には相当の開きが出てきます。
その折衝力、提案力によって、またそれを誰が行うかによっても売買金額は変わってくるものです。最近ではこの売買代金の他に、役員退職金も一緒にお支払いするケースがあります。
3.第三者との合併を行う
これは、理事長が退任するという場合だけではなく、発展的な成長を望んでいる場合にも行われる手法です。一般企業でも行われるやり方ですね・・・
より規模を大きくするということで、組織力もより安定し、将来の理事長候補、幹部候補をじっくりと合併をした相手先の理事たちとも協力し合い、より盤石な体制へと移行していく方法です。
どちらが主導権を握るかなどで合併後に破断するケースもありますから、決断には慎重を期して臨んでください。つまり金銭的な問題よりも、組織構造、社風などが問題になってきます。もし理事長が金銭面をメインで考えるならば、上位2の売却ではなく、買収を選択してください。
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