薬物にとりつかれてしまった医師たち
■ 記事作成日 2014/8/3 ■ 最終更新日 2017/12/5
2014年は薬物事件に世間的に注目が集まった年です。人気歌手ユニット「CHAGE&ASKA」のボーカル、ASKA(アスカ))=本名・宮崎重明=被告(56 ※2014年8月3日時点)が重度の覚醒剤中毒である疑いから逮捕起訴される事件が起こり、その輝かしい歌手キャリアを無駄にしてしまった意見を始め、これまで「脱法ドラッグ」と俗称されていた薬物が「危険ドラッグ」と行政用語として呼ばれるようになるほど、世間の耳目を集める薬物関連事件が増えました。
<追記>
この記事を執筆してから1年半ほど経ちましたが、2016年の今現在は話題の元プロ野球選手清原和弘氏が覚せい剤常習者だった事件が露呈したり、アイドル歌手複数名が覚せい剤や麻薬に関連した事件で大々的に取り上げられました。いつになっても、薬物事件がお茶の間を騒がせることに代わりはないようです。
医師業界でも恒常的に薬物で逮捕される先生が露見している
意外なこと?に医師の世界においても事情は余り変わらないようです。下記のデータは、厚生労働省発表の医道審議会医道分科会議事要旨をまとめたものですが、毎年片手に余る以上の医師が薬物使用や所持で逮捕され、マスメディアに実名報道をされ、更には、医師免許はく奪や医業停止の行政処分を受けています(薬物による医業停止行政処分は3年に及ぶケースも多く、医師免許が取り消されなくとも、医師人生としては大ダメージを追う結果を受け入れざるを得ない大参事につながっています)。
前回のコラムで紹介したように、この3年間で行政処分を受けた医師で、以前より顕著に件数が増加しているのが薬物(覚せい剤、向精神剤含む)です。今回は、その中から笑うに笑えないケースを紹介します。
※画像はmsn産経ニュースより引用
医師においても再犯性が高い薬物事件
2013年6月の行政処分で医師免許取消となったA医師。
A医師の処分内容も覚せい剤取締法違反によるものでした。実は、このA医師は2006年に一度、3年間の免許停止の行政処分を受けており、そのときの理由も覚せい剤取締法違反。そのため、二度目となった2013年の処分では免許取消処分となってしまったようです。
このA医師、2005年に逮捕された時点で、10年以上前から覚せい剤を利用していたことを公判中に証言していて、相当常習性が強かったように思われます。
免許停止明け2年後に再度逮捕されたことを考えると、3年間の免許停止期間中にどれだけリハビリができていたのか、少々疑問に思いますし、またこうした常習性の強い案件の場合は、リハビリの進み具合によって、免許停止期間を延長しても良いようにも思います。
もうちょっと、強く言えば、そもそも10年以上も長期間にわたって覚せい剤使用を認めているわけですから、このような場合は一発取消でも良かったかも知れません。
覚せい剤入りのカバンを電車に忘れた医師
また、2013年6月の行政処分で免許取消3年の処分を受けた、B医師の場合は、逮捕された経緯が少々お粗末でした。
大阪のJRのとある駅ににかばんの忘れ物が届きます。駅員は当然中身の確認をいたします。(中身の確認をしないと持ち主が現れたときに、本人確認ができませんので)そうすると、覚せい剤と思わしき白い結晶状の粒が入った小さな袋とガラスパイプを隠したメガネケースを見つけました。
当然、駅員は最寄の警察に通報します。警官が中身が覚せい剤であることを確認し、その場で待機していると、「かばんの忘れ物をしました」と現れたのがB医師でした。あえなくB医師はその場で逮捕。あっけなく容疑を認めたそうです。
まあ、かばんの中にはB医師の身元を証明するものも入っていたでしょうから、黙っていてもいずれはバレると思ったのかも知れませんが、覚せい剤が入ったカバンを電車内に忘れてノコノコ取りにいくというのもどうかなとは思います。
いや、そもそも命と同じくらい大事な医師免許の取消までありうる覚せい剤を入れていたカバンなんていうものは、ある意味命と同じくらい大事なもののように思います。それを電車内に忘れてしまうくらい、意識がもうろうとしていたのでしょうか。その理由までは定かではありませんが、それほど覚せい剤の影響が大きいということなのでしょうか。ちょっと理解しにくい行動に思えます。
医師でも常習性から逃げられない恐ろしさ
この両医師に共通しているのは、覚せい剤の常習性です。A医師の場合であれば、前述しましたように一度目の逮捕時は10年以上常習していたとされ、さらに二度目の逮捕となれば免許取消になることは分かっていたはずなのに、やめられなかったわけですし、何でも二度目の逮捕の際は、交際していた女性からの通報でホテル内で逮捕されたという話です。どれだけ薬におぼれていたかが伺えます。
B医師についても、この時点では初犯ということらしいですが、日頃持ち歩くカバンに覚せい剤とパイプを保有していたということは、いつでもどこでも吸いたかったということだと思われます。多少でも我慢できれば、自宅に帰ってから吸引する等方法はあったわけで(もちろん、この方法なら許されるというわけではありませんが)、その程度の我慢もできない状況になっていたということでしょうか?
薬物中毒患者に対して、治療と校正指導を行う立場であるはずの医師免許保有者でさえも、こうも簡単に籠絡してしまう薬物の恐ろしさは筆舌に尽くしがたいものがあるのでしょう。
医師キャリアを奪う「人生の罠」には注意
本来、医師というのは覚せい剤の恐ろしさを一番理解している職種だと思われます。もちろん、覚せい剤でもしたくなってしまうほどのストレスを抱えやすい職種だということは理解できます。
また、医師(特に勤務医)は夜勤なども多く最初は眠気覚ましのために手を出してしまう医師も少なくないようです。それでも、覚せい剤ほど人間性そのものを崩壊し、そして医師にとって何より大事な医師免許まで奪い去ってしまう可能性が高い薬物に、なぜ手を出してしまうのでしょうか。
それが覚せい剤の恐ろしさだと言ってしまえばそれまでですが、それでも「医師の意志」が足りなかったように思えてなりません。
昨今、覚せい剤ではなくても脱法ハーブ(危険ドラッグ)と呼ばれる新たなドラッグが誕生し、非常に身近になってきています。いずれもインターネットなどでも容易に入手することも可能です。
実際、今回紹介した両医師は2人ともインターネットで覚せい剤を入手していました。「容易に入手できる」だからなおさら試されているのは医師の意志なのだと思います。これをご覧になっている医師の方はくれぐれもこうした処分対象にならないようにしていただきたいと思います。
あなたの医師キャリアを簡単に腐らせてしまう罠は、人生のそこかしこで簡単に接触可能になってしまっている時代であることを、意識しておくべきでしょう。
この記事を書いた人
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