本当に怖い医療事故…そして医療訴訟…
■ 記事作成日 2015/9/30 ■ 最終更新日 2017/12/5
どんなにベストを尽くしても、医療には不確実性が付き物ですし、万能な人間などいません。どんなにドクターが医療現場で真摯な働き方をしていても、空前絶後の危機が突発的に訪れる可能性は否めません。
重篤な医療事故…そして医療訴訟…ほんの一瞬の出来事が、ドクターの人生をズタズタに切り裂いてしまう事があります。ドクターや医療機関側が「不可抗力」だと説明しても、原告側が「医療事故」と考えた場合は、「医療訴訟」に進展してしまいます。
もしも原告側の主張が認められたなら…昨今の医療訴訟では、医療機関と共にドクター個人も訴訟の対象として被告となる事が多く、ドクター個人に大きな賠償責任が降りかかる判例も増えてきています。
しかしながら…ドクター個人の“医療賠償責任保険”加入率は、およそ半数程度にしか過ぎないというデータもあります。40代以上のベテラン医師に未加入の傾向が見受けられ、非常に危険な状態で勤務しているドクターが多いという、恐ろしい現実が浮き彫りとなっているのです。
「ドクターは、個人で医療賠償責任保険に加入していますか?」
「ドクターが関わる医療機関の、危機管理体制は万全ですか?」
就職・転職・アルバイトなどのあらゆるリクルート活動において、医療賠償責任保険の考慮は、もはや避けられない重大事項であります。もしもドクターがこのテーマをおざなりにしてしまっているならば、ここで立ち止まり、しっかりと考える機会にして欲しいものです。
医療賠償責任保険の加入環境は?
ほぼ全ての医療機関は、医療賠償責任保険に加入していると推測されます。中でも「日本医師会医療賠償責任保険」はその代表例で、日本医師会に属している医療機関や医師は、この保険に加入する事ができます。
この保険、損害賠償金の年間総支払限度額(最高限度額)は、1事故1億円で、保険期間中3億円となっており、1事故100万円以下の案件は、免責事項となっています。(オプション契約による拡大保障あり)
日本医師会のA会員(各種すべて)ならば、特別な手続き無しでこの保険に加入している事になります。従って、日本医師会に属する全ての開業医は保険加入者と言えます。しかしながら、問題は“勤務医”です。日本医師会に属していても、A会員であるとは限りませんし、そもそも医師会に属していない医師もまれにいます。
何年か前までは、勤務先の病医院が医療賠償責任保険に加入していれば、勤務医も自動的に保障されていました。しかし昨今では、病院を対象とした保険の仕組みが変化しており、病院側がオプション契約を任意で結ばなければ、医師個人の責任までカバーできる保障にはなっていません。医療訴訟が増え続け、医療機関だけではなく、医師個人への責任追及が一般的になった今、特約事項でなければ医師個人の保障までカバーできなくなったと言うのが実情でしょう。
日本医師会医療賠償責任保険は、医師個人が加入するものですから、ドクターが転職しても、その保障はずっと続きます。しかし、保険の保障が勤務先病医院の保険でカバーできると誤認していれば、ある日重大なアクシデントに遭遇し、首が回らなくなる事も想定していなければなりません。
医師会の保険と民間保険の違い
医療損害賠償責任保険は、「日本医師会医療賠償責任保険」だけではなく、民間の保険会社が独自に開発した商品もあります。
勤務先などで、医療機関側から民間保険加入を勧められた経験があるドクターもいるでしょう。民間の保険会社は…
「〇〇病院にお勤めのドクターは、〇〇%OFF」
「〇〇学会に所属のドクターは、〇〇%OFF」…などという、加入促進キャンペーンをする事もあるようで、医療機関が民間保険にも加入していたり、医師会に属していないドクターは、民間保険という選択肢で、比較的高額な民間保険を(医師会の保険よりも割高傾向)優位な条件で契約できる事もできるでしょう。
しかし、医師会の保険と民間保険には、大きな違いがあります。
それは、紛争が起こった場合の審理機構の性格です。医師会の場合、医師会が有識者を集めた「審査会」が判断しますが、民間保険では「保険会社」が行います。ドクター自らが当事者となる紛争が起こってしまった場合、より充分な審査が期待できる保険に入っておく事は重要です。
また、医師会の保険には、ドクターが医師会退会後や死亡後でも、10年先まで延長保障してくれる「特例事項」が通常商品に包含されています。民間保険でその特約はオプション契約であり、延長期間は5年に留まるようです。
ドクターが安心して堂々と診療行為にあたるために、医療損害賠償保険は重要です。保険加入の有無と、保険契約先、保険契約内容を今一度しっかりと調べて下さい。
もしもドクターが未加入ならば、こんなに恐ろしい事はありません。今すぐアクションを起こし、必要な保険商品を吟味して、しっかりと加入のうえ、保障が受けられる環境を整えておくべきです。
勤務先の危機管理状況を確認する
ドクターが勤務医ならば、所属する医療機関(あるいは転職する医療機関)に、危機管理施策の状況を聞いてみて下さい。そして、医師個人の責任までカバーできる医療賠償責任保険に加入しているのか、しっかりと把握しておく必要があります。
このような委細事項まで追求するドクターは非常に少ないため、勤め先によっては、多少訝しく思われるかもしれません。しかし、コンプライアンスを重視し、事務局がしっかりとしている医療機関ならば、逆にその取組をPRする事もある程の重要事項です。
ドクターが転職活動中ならば、危機管理体制においても入職先の検討条件に入れ、転職エージェントのコンサルタントと共に、しっかりと状況判断をして欲しいものです。
医療事故と訴訟の市場背景
勤務医であっても、どんな診療科であっても、医療賠償責任保険への加入(あるいは勤務先加入保険でのカバー)は欠かせない今、その市場背景はどのようなものなのでしょうか?
医療賠償責任保険がより重要視される背景
医療事故に関する訴訟は一昔前よりも随分と増えています。その理由は主に二つ考えられます。一つ目は、患者側の考え方が成熟し、諸外国並みに患者の権利を主張するようになった事です。二つ目は、二十年程前、重大な医療事故が次々と明るみになった事で、医療に対する神話が崩壊し、信用が失墜した事です。
そんな中で、訴訟が元で廃業に追い込まれる医療機関も増え続けています。原告の主張が通って勝訴したとしても、被告側に支払い能力が無ければ、賠償金を受け取れません。そんな状況を防ぐために、医師個人も訴訟の対象する傾向にあると考えられます。今や、医療事故の訴訟において、医師個人も被告となるケースは全体の約半数に上るようになりました。
ドクターの危機管理は万全でしょうか?
もちろん、医師本人が責任を持って医療に従事する使命は保険加入の有無に何ら関係ありませんが、人事を尽くしても対応しようのない事も起こり得ます。医療賠償責任保険は、そのような危機に備えるために、医師や医療機関ができる、数少ない転ばぬ先の杖なのです。
訴訟の多い診療科
訴訟件数が最も多いのは「内科」で、次いで「外科」です。内科や外科は医師数も患者数も圧倒的に多い事から数字が目立ちますが、医師一人当たりの訴訟件数が最も多いのは「産婦人科」です。実に、内科の約4倍の訴訟リスクがあると言われています。
産婦人科の場合、医師に全く過失が無くとも、高度脳性麻痺などを伴う誕生もあります。母体そして胎児や乳児に何らかの障害が残ったり、死亡に繋がった場合、どうしてもその原因を究明したいという当事者心理は察するに余りありますが、このリスクが産婦人科医不足の一因にもなっています。
このような状況を少しでも改善するために、医師や医療機関側に一点の過失がない場合でも、高度脳性麻痺などの症状に保険金を支払う制度も開始され、現況改善の一石になるのか、注目されています。
実は減少している訴訟件数
ここ二十年余りで医療訴訟が一般的になっていますが、実はここ数年は減少傾向にあります。その要因はいくつかあり、医療機関側が医療事故を防ぐために徹底した対策を取りはじめた事や、医療係争がノウハウ化・ケーススタディ化され、理不尽な訴訟が減ったり(訴訟を起こす前に弁護士などが充分に内容を審理するステップが踏まれるようになった)、医療機関内に調査機関が設けられ、示談で解決できる方策を模索するようになった事などが挙げられます。
つまり、訴訟にまで発展するかどうか?…は、医師本人の意識や技量だけではなく、医療機関が組織的に、どのような危機管理体制を整えているか?…という事が大変重要なポイントなのです。よって、勤務医がより良い医療を提供するためには、自らが務める医療機関がどのような危機管理体制を敷設し、マニュアル化しているか…?という実情をよくよく調べておく必要があります。
もしもドクターが転職を検討しているならば、この重要項目の有り様を、転職エージェントと共に徹底的に確認して下さい。この要求にお茶を濁すような医療機関には、最初から入職しないくらいの意識で対峙すべき問題です。
医療ミスで医師に降りかかる4つの責任
ドクターが医療ミスを起こしてしまった場合…あるいは、訴訟において原告の主張が認められた場合…ドクターは、4つの責任を負う必要がある事を、予め把握しておいて下さい。
社会的責任
もしも医療ミスあるいはその疑惑が明るみに出たら、訴訟に発展するか否か?訴訟に敗訴するか否かに関係なく、社会的責任を取らざるを得なくなります。後に審理の結果、ドクターに何の責任も無い不可抗力だったケースに於いてでもそうなるのです。
先ず、医療機関内で、上司や同僚や部下はもちろん、あらゆるコメディカルスタッフからも陰口をたたかれる対象となります。有る事無い事噂され、居心地が悪くなり、業務に支障を来すケースもあるでしょう。敵と味方がはっきと分かれるならまだ良い方で、誰を信じたら良いか分からない状況にも陥るはずです。
医療機関内の調査委員会や医師会などの審理委員会・そしてケースによっては弁護士や警察といった面々から事実関係を激しく追及され、大きな精神的ダメージを被る事は免れません。事と次第によっては、そのまま勤務する事すらままならなくなり、処分保留の自宅謹慎処分や、停職などの制裁を受け、精神的・経済的・社会的な大打撃となります。
また、ネットでの誹謗中傷は留まる事を知らず、ドクターをターゲットに罵詈雑言が囁かれ、ドクターの人間性や医師としての評判を根本から否定する輩の標的となります。訴訟にまで発展した場合は、マスコミの襲撃と言う暴挙にも耐えなければなりません。
そのような環境での暮らしは、家庭を崩壊の危機へと導く可能性もあります。妻は買い物にも出られなくなるかもしれませんし、自宅近辺に誹謗中傷を書いたビラが撒かれるかもしれません。子供が学校でいじめられて不登校になったり、夫婦の絆が揺らぐばかりか、経済的にも困窮し、生活が成り立たなくなる事もあるでしょう。
この極めて恐ろしい社会的責任の襲来は、仮に示談で事が解決しても、仮に訴訟でドクターに過失が無かったと認められても、一度割れた珠が元には戻らないように、完全にダメージを回復する事は不可能です。不本意ですが、社会とはそういうものなのです。
例えばネットへの誹謗中傷などの書き込みは、どんなにドクター側がSNS運営会社などに削除を依頼しても、判決後に無実が証明されるか、ドクターが自ら名誉棄損で訴訟を起こして勝訴でもしない限り、削除対応をされる事はありません。また、仮に運営会社が自社内サイトで情報を削除しても、ありとあらゆるリンクや検索痕跡が散らばっているネット社会において、その総てを完全に消し去る事は不可能です。
例えば医療ミス係争事案で家庭が崩壊してしまった場合、どんなに無実が証明されても、家族に入った亀裂は元に戻せません。既に離婚が成立していた場合など、どうしようも成り難い事例は枚挙にいとまがありません。
訴訟の有無や判決の結果とは無関係なところでも、必ず取らざるを得ない社会的責任が、ドクターにずしりと乗りかかって来るでしょう。
刑事的責任
ドクターが直面した医療係争事案で、「業務上過失致死」「業務上過失傷害」「医師法違反」などが認められた場合、刑罰法規に抵触する犯罪を犯したとして、刑罰を課せられる事があります。そうなれば、保険で損害賠償を払うだけでは免れない、懲役刑や罰金刑という、重大な責任です。
刑事的責任を負った者は、人生に大きな影を落とすでしょう。もしも刑事的責任を果たし終えた後でも、それは“前科”としてつきまといます。仮に刑罰を全うし、医師免許が回復したとしても、前科の事実は消える訳ではありませんから、その時点からの就職や開業は、ほぼ不可能となるでしょう。ドクターが人生を掛けて取得した医師免許を、事実上返上するという廃業状態に追い込まれるのです。
医師を廃業しても、他の職に就けるならばまだ良いのですが、一定の年齢を超えて新たな職業に就くのは至難の業ですし、そもそも就業させてくれる企業が見つからないでしょう。刑事的責任を負うという事は、人生のリスタートさえできない、暗中模索の五里霧中が続く余生に成り得る事を意味します。ただ、よほど悪質な事案でない限り、医療過誤で刑事裁判にまで発展する事はまず無いようです。
民事的責任
ドクターの主張が認められ、刑事責任が問われない判決が出たあとも、まだまだ係争が続く可能性があります。患者側が刑事訴訟結果に納得しなければ、民事訴訟を起こされるケースも少なくありません。
刑事裁判で無罪でも、民事裁判では有罪とされる事もままあり、刑事的責任と民事的責任は、全く別の者として解釈されます。また、民事訴訟でもドクターの無過失が認められたとしても、係争が長引けば多大なる損失が上積みされるだけです。
民事的責任は、主に損害賠償として追及されます。その賠償額は、数千万円から数億円に上る事もあるでしょう。そんな時、医療賠償責任保険に入っていなければ、とんでもない事になります。逆立ちをしても果たせない責任を、医業と言う生活の糧を奪われた状態で、一生背負っていかなければならないのです。
行政的責任
刑事裁判の結果次第では、行政処分を受ける事になるでしょう。医師法では…罰金以上の刑を課せられた時、医事に関して犯罪や不正行為があった時、医師の品位を損ねた時、これらの何れかに該当した場合、厚生労働大臣の命により、「戒告」「三年以内の医業停止」「免許の取消」という処分が行われる可能性が規定されています。諮問機関の聴聞を受けて、ドクターの過失の具合に応じた処分が下されるのです。
命の次に大切な医師免許を、一定期間、あるいは恒久的に取り上げられる処分は、医師にしてみれば、社会的に抹殺されるに等しい責任を負うことを意味します。
場合によっては所属している各団体から除名を受けるでしょうし、仮に医師免許取り消しを免れても、停止期間明けに再び医業を続ける事はかなり難しくなります。勤務医は就職先を失くし、開業医は信用を無くすどころか悪評が増幅している環境は免れません。ドクターはどの道、普通の医師ではなくなってしまうのです。
どうしても医業を続けたい場合、続けるしかない場合は、全く違う土地に転職するなどの手段が常套ですが、事情のあるドクターの転職活動は、非常に条件の悪いものにならざるを得ません。
医療事故等の審理の流れ
もしも万が一、ドクターが医療係争事案の当事者となってしまった場合、どのように事案処理がなされるのでしょうか?
“医師会への届け出”
患者側から損害賠償請求を受けた場合、医師は先ず、都道府県の医師会に「事故報告書」を提出します。損害賠償が100万円を超えそうな重要事案は日本医師会に報告し、100万円以下の事案は損害保険会社などに連絡する事になると考えられます。
“調査委員会などでの審理”
医師会に届けられた事故報告書を元に、医師会や損害保険会社が手配した弁護士や医療従事者などが事案を調査し、調査委員会や賠償責任審査会で、過失の有無やその程度を審理します。
また、重大な死亡事故の場合、厚生労働省による「医療安全調査委員会」が調査を行い、医療事故による死亡の原因を究明し、医療事故の防止に役立てるための新しい国の組織として機能させようとしています。
これは、2008年に法案の大綱が発表され、2015年10月にスタートする新たな制度です。既に、その中心的な役割を果たす「医療事故調査・支援センター」として、日本医療安全調査機構(理事長=高久史麿氏、東京都港区)を指定したことが公示されています。
“賠償支払いの有無の決定”
医師側に過失が認められた場合、保険金が支払われます。医師側に賠償責任が無いという結論に達した場合はもちろん、賠償金の支払いはなされませんが、事案解決のために要した弁護士費用などは保険金で賄えるようになっています。しかし、これまでの審理や審理結果に患者側が納得せずに和解に応じない場合は、民事訴訟に発展する事になるでしょう。
“民事訴訟の審理”
訴訟が始まると、一審の結審には2~3年程度を要すケースが多いようです。この時、「調査委員会」「賠償責任審査会」厚生労働省による「医療安全調査委員会」などでの調査結果も重要視されます。
医療過誤の場合、多くのケースで和解を目指す事になるでしょう。実に医療過誤裁判の第一審では、50%程度の和解が成立しています。また、医療過誤裁判における一審の原告勝訴率は、およそ25%程度で、民事裁判の一般的な第一審勝訴率85%程度に対し、この数字はかなり低いと言えます。医療過誤が争点となっている場合、善意の行為による傷害について争われるという性格が根本にありますので、その争点が難しいといった背景があるようです。
“過失割合の決定”
予期せぬアクシデントで医療過誤がおき、調査あるいは訴訟事案となって、患者側に賠償金支払い命令(あるいは和解成立)により賠償金支払いが決定した場合、損害保険会社から賠償金が支払われ、一応の社会的決着がつく事になります。しかし、ドクターと医療機関にとっては、まだまだ終結ではありません。
ドクター側と医療機関側の過失割合を決めなければならないのです。それは、自動車事故における過失割合決定の考え方に似ています。ドクターと医療機関の責任は、日本医師会や損害保険会社の査定により決定された過失割合を元に決定し、その割合の分だけ双方が分担して賠償金を支払う事になります。ドクターが医療損害賠償責任保険に加入していたら、もちろんその賠償金は損害保険会社から支払われます。
そしてその過失割合は点数化され、後々まで記録に残ります。これは、ただ単に保険の等級などに影響が及ぶだけではありません。ドクターの転職や海外留学にまで、半永久的に関連してきます。過去の事故歴と過失割合は、履歴書提出時などに細かくチェックされる項目の一つであり、重要な判断材料となっているからです。
“損害保険料の改定”
医療損害賠償責任保険の費用は自動車保険などと同じような考え方で、その保険を利用すると、保険料が上がります。また、契約期間内の保障限度額にも影響します。ただ、あくまで今の所ですが、医療機関側に保険料改定(値上がり)はあっても、医師側の保険に値上がり改定制度はないようです。
もしもドクターが不幸な事故の当事者になってしまった場合…考えるだけでも恐ろしい事ですが、経済的な問題だけは、医療損害賠償責任保険でカバーする事ができます。もしも無保険ならば…職を失うような環境の中、数百万、数千万、時には億単位の賠償金を、自らの資産で支払う責務が発生します。
医療に不確実性はつきものですから、どんなに優秀な医師でも、いつ、医療過誤の疑いをかけられるか分かりません。ドクターとして働く者は、しっかりとこの現実に目を向け、無保険状態だけは避けるよう、自らの保険環境を把握しておく必要があります。
医療損害賠償責任保険の例
医療賠償責任保険には、日本医師会による「日本医師会医師賠償責任保険」の他にも、民間サービスとして商品化されているものもあります。
保険商品は様々な条件によってその良し悪しが変わるものですので、ご興味のあるドクターは、自ら保険会社に資料請求をするなどし、個別具体的に検討して下さい。
尚、医師向けの医療損害賠償責任保険は、自動車保険などのように広く一般に向けた商品ではないため、公式Webページに詳しい説明が載っていない所も多いようです。また、各社代理店が独自に作ったWebページもありますが、情報が古かったり、不十分な事が多いようなので、信用できる代理店に依頼をするか、各社公式資料請求フォームからコメント欄記載を通じて情報収集される事をお勧めします。
▼日本医師会医師賠償責任保険制度について
http://www.med.or.jp/doctor/report/003368.html
▼損保ジャパン日本興亜ひまわり生命
http://www.sjnk-is.co.jp/ibai/ibai.html
▼東京日動海上
http://www.tokiomarine-nichido.co.jp/
▼三井住友海上火災
http://www.ms-ins.com/
未加入では怖い、医療損害賠償責任保険…
もう一度お尋ねします。
「先生は、個人で医療賠償責任保険に加入していますか?」
「先生がお勤めになっている医療機関の、危機管理体制は万全ですか?」
もしもドクターが、この問いに曖昧な答えしか出せない場合は、いますぐ状況を把握し、あるべき姿のために善処して下さい。医業と言う不確実性が伴う仕事において、いつ誰が訴訟事案の当事者になってもおかしくないのですから。
そして今、もしもドクターが転職活動中ならば、転職エージェントのコンサルタントに、入職検討先の医療賠償責任保険契約条件(ドクター個人の保障もされるか?)など、危機管理体制についても尋ねてみましょう。
尚、医師紹介会社の中で医療損害賠償責任保険を積極的に取り扱っている企業として、民間医局があります。
民間医局に登録した医師の方には、担当者が医療損害賠償責任保険についての詳細なご説明がされるはずですので、機会あれば1度しっかりとお話を伺ってみるのも手だと思います。
私、野村龍一が、医師転職コンサルタントの立場から、口を酸っぱくして言っている事があります。それは…良い転職は、転職エージェント選択時に決まっている…という事実です。
特に医療機関側の危機管理体制にまで踏み込んだ条件収集に対応するためには、しっかりとパートナーを選ぶ必要があります。
ドクターがより良い転職を実現できるよう、当研究所がお勧めする優良なエージェントへのコンタクトを、心からお勧めします。
この記事を書いた人
医師キャリア研究のプロが先生のお悩み・質問にお答えします
ツイート