病院ランキングの刊行ラッシュは吉か凶か
■ 記事作成日 2014/9/7 ■ 最終更新日 2017/12/6
近年、各出版社、雑誌社を中心にマスメディアによる病院ランキング本の刊行が相次いでいます。また、一般雑誌はもとより、ビジネス誌による病院ランキング特集が年に何度も企画されるなど、「部数を伸ばせるネタ」として、病院ランキング特集はマスメディアからの取材人気が高いコンテンツになっています。
医師転職に「病院ランキング」は参考になる?
こういった好調な誌面売上からみて、病院ランキング雑誌が一般患者のかかりつけ病院選びに大いに役立っているのは一目瞭然ですが、医師資格保有社の転職時に参考にはなるものなのでしょうか?
一般的に、病院ランキングの上位にランクインする病院は、「手術件数」の多い病院がランクインしているケースが多いです。そのため、病院ランキング上位は多忙な職場になりがちな可能性は高いといえるでしょう。当然、ランキング入りの結果誌面を参考に、更に患者が押し寄せるという現象が起こりがちです。
また、手術件数が多いということは単に「短い時間でオペがこなせる手術」を多数こなしている可能性もあります。長時間を必要として困難を極めるような難手術は、件数をこなすのが難しいのは言うまでもありません。
外科医の先生ならば簡単にそのカラクリが見抜けますが、案外、他の診療科の先生はこの表の数字の裏側事情に気づいていないケースがあるようです。
病院ランキング特集は医師転職の参考になる
ただ一般的に、手術件数が多い場合は高度専門知識と最新医療設備投資を行っている、もしくは、行う体力のある医療機関である可能性が高いので、自らのキャリアアップや専門医資格取得のために経験を積みたい医師にはうってつけでしょう。
しかし、プライベートを尊重したい、QOLを重要視する医師にとっては、転職先候補から真っ先に外す病院となる可能性もあるわけです。全ては先生ご自身の今後の人生に対する考え方次第です。よって、マスコミの病院ランキングは、ランクインした病院に就業を希望するにせよ、就業をあえて避けるにせよ、1度は目を通しておくべきかと思います。
各紙のランキング例をみてみましょう。
参考までに、今我々の手元にある4誌から、病院ランキングトップ10をそれぞれ抜き出してみましょう。それぞれの誌面毎にランキング選出の条件がかなり異なっているとはいえ、結果に相当な差がでているのがよくわかります。
日経ビジネス(2013.4.1号 日経BP社)病院満足度ランキング
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- 4位: 京都大学医学部附属病院(京都府)
- 5位: 東京大学医学部附属病院(東京都)
- 6位: 順天堂大学医学部付属順天堂病院(東京都)
- 7位: 大阪大学医学部附属病院(大阪府)
- 8位: 東京女子医科大学病院(東京都)
- 9位: 岡山大学病院(岡山県)
- 10位:名古屋大学医学部附属病院(愛知県)
週刊ダイヤモンド(2013.10.26号 ダイヤモンド社)頼れる病院ランキング
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- 5位: 獨協医科大学病院(栃木県)
- 5位: 聖路加国際病院(東京都)
- 5位: 東京医科歯科大学病院(東京都)
- 5位: 東邦大学医療センター大森病院(東京都)
- 5位: 関西医科大学牧方病院(大阪府)
- 5位: 鳥取大学病院(鳥取県)
暮らし批評(2013.2.1号 晋遊舎)本当に信頼できる病院辛口ランキング
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- 4位: 東京慈恵会医科大学病院(東京都)
- 5位: 慶應義塾大学病院(東京都)
- 6位: 東京女子医科大学病院(東京都)
- 7位: 岡山大学病院(岡山県)
- 8位: 東京医科大学病院(東京都)
- 8位: 倉敷中央病院(岡山県)
- 10位:杏林大学病院(東京都)
- 10位:岩手医科大学病院(岩手県)
- 10位:兵庫医科大学病院(兵庫県)
病院情報局(http://www.hospia.jp)病院機能評価の得点が高い病院ランキング
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- 4位: 岡山旭東病院(岡山県)
- 5位: 青梅市立総合病院(東京都)
- 6位: 聖隷浜松病院(静岡県)
- 7位: 相良病院(鹿児島県)
- 8位: 山口労災病院(山口県)
- 9位: 高知医療センター(高知県)
- 10位:関東労災病院(神奈川県)
このように、各誌まちまちなランキング結果になっていますが、一部の医療機関は複数誌面のランキングに共通してランクインしていることもわかります。この結果を踏まえて、各医師が自身の転職先に求める条件、環境に照らし合わせながら、新たな就業先候補として参考にしてみるのは大いにありでしょう。
ただし、肝心の病院内のリアルな人間関係といった部分は、ほとんどランキング結果には反映されていないのは言うまでもなく、実地調査を別途行う必要性が出てくるわけです。
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