何故、非常勤医師という働き方を選ぶ先生が増えているのか?
■ 記事作成日 2012/4/21 ■ 最終更新日 2018/5/3
2015年に日本医師会総合政策研究機構より公表された「病院における必要医師数調査結果」によると、医師全体の18.4%が非常勤の勤務形態をとっています(常勤と短時間正規雇用医師を合わせると81.6%となります)。
実に医師全体の5分の1に近い人々が何かしらの形で非常勤勤務に携わっており、実際に2010年の調査(厚労省調査)と比較すると、非常勤医師の数は18.3%から18.4%と微増とはいえ増加傾向にあることがわかりました。
勤務形態別医師構成比
(引用:「病院における必要医師数調査結果」)
多くの医師紹介会社も非常勤求人を積極的に取り扱っていることがわかるように、医師からも非常にニーズの高い非常勤医師(定期非常勤、スポット非常勤)という働き方ですが、産休産後の女性医師やシニア医師、常勤とかけもちすることで給与増額を狙う医師、介護やQOL重視のライフスタイルを送りたい医師など、様々な先生が様々な理由で非常勤勤務に従事しています。
更に近年は、ドラマや書籍等の影響からか常勤と掛け持ちは行わない、完全な非常勤医師(フリーランス医師)に注目が大きく集まってきています。
ここでは非常勤医師を選択するその理由、非常勤医師のメリットとデメリットから、その背景に関する具体的な数字までを細かくご紹介します。
特に、他の先生がどうして非常勤医師を選択したのか?その理由を知ることは、あなた自身が初めて非常勤求人に応募する際に、大いに参考になるかと思います。
非常勤医師の定義 - 就業形態における常勤医師との違い
非常勤医師の定義を行うには、まず常勤医師の定義から考えるとわかりやすいでしょう。
週32時間以上勤務=常勤医師。非常勤とはそれ以外の勤務体系。
医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱によると、下記の就労条件をみたした者を常勤医師として規定しています。
常勤勤務医師
- 1日8時間以上の勤務を行い
- 且つ、1週間に4日以上、合計週32時間以上勤務する
上記条件を満たさない場合(つまり、週32時間勤務に満たない場合)を非常勤医師としてとらえることとなりますが、個別事情で常勤と非常勤の医師の解釈を上記以外で考えている医療機関も存在しています(例:「短時間正規雇用(短時間正社員制度)」の規定がある場合など)。
いま、同じ医療機関に勤務する非常勤医師の数を組み合わせることで「常勤医師が存在するとみなそう」という考え方が出てきていますが、都道府県等の病院立入検査時の常駐医師数算出に医療機関は神経をとがらせています。
そのため、勤務形態によって「ウチの病院ではこういった勤務の方を常勤医師として換算しています」という個別ケースも存在します。例えばこちらの病院では、本来週5日勤務だった医師を「常勤医師」としていましたが、週4日勤務でも常勤医師としてみなすことと規定しています。
移譲を前提に、一般的には週に1日から3日の勤務医師の事を言います。「非常勤」という言葉は医師以外でも一般的によく使われるので(非常勤講師、非常勤職員等)、時間拘束が長い正社員等とは対照的に、時間的に融通がきく働き方というイメージは湧き易いでしょう。
定期非常勤とスポット非常勤に分かれる
非常勤医師については、それぞれの医師の個別状況によって「定期非常勤医師」「常勤かけもち医師」「アルバイト医師」「フリーランス医師」「スポット医師」「スポットアルバイト医師」などという言い方をするケースもありますが、大きく分けて1.定期非常勤と2.スポット非常勤に分かれます。
- 定期非常勤…定期的に同じ曜日同じ時間帯で、同じ職場で仕事をする場合
- スポット非常勤…日々全く違う勤務体系と職場で仕事をする場合、単発の仕事
非常勤勤務をする医師は、それぞれの都合によって定期非常勤とスポットを使い分けるケースもありますが、一般的にスポット勤務の方が時給そのものは高い傾向にありますが、求人数が少なく、良い条件の求人は応募医師同士の奪い合いになるケースも多いです。
更に、かなりの多くの常勤医師が、休日や研究日を利用して非常勤勤務を「かけもち」していることが多いため、一概に「非常勤医師=フリーランス医師(アルバイト医師)」とは必ずしも言い切れません。
医師のアルバイトというと、資格を取り立ての研修医の世界だけと一般的には思われがちです。
しかし、実際は皆さんが十分ご存じのように、ある程度の勤務経験を積んだ医師や主婦業との両立、まだ独立開業したばかりの医師が経済的理由で非常勤就業したり、育児・産休などの理由で職務にブランクがある女性医師の復帰の場としても、人気のある就業形態になっています。
非常勤医師に応募する理由と医師人物像
非常勤求人に応募する先生に理由を尋ねてみると、大凡下記のようなご返答をされることが多くなっています。それぞれの理由を見てみると、該当する医師の人物像もおぼろげに見えてきます。
1.年収を手早くアップさせたい先生(専業の非常勤医師、常勤かけもち医師)
専業での非常勤医師の勤務体系は非常に柔軟性があるために、ハードに働けば常勤勤務医をはるかの凌ぐ収入になり得ます(高額を稼ぐフリーランス医師として注目される医師はこのパターンです)。麻酔科医師の場合だと、年収3000万円をはるかに超える先生も存在している状況です。
眼科(コンタクト)や整形外科、スキルがある外科医の訪問診療なども高報酬が得られる非常勤勤務として数えられます。
また、専業にならずとも常勤勤務の合間(休日や学会研究日)にかけもち勤務をするだけでも、かなりの年収アップが狙えます。
定期非常勤の一般的な時給は1万円といわれていますが、郊外に行けば時給は更にアップしますし、産科の日当直などは1回の勤務で40万円もの報酬が支払われることもあります。
1回の外来勤務(8時間)が10万円という非常勤求人を数多く目にしますが、月に3~4日勤務をすればそれだけで月額30万円(年額360万円~480万円)もの年収アップが見込めます。常勤勤務の給与と合算すれば、年収1000万~1300万円程は楽に到達できる世界です。
独立行政法人労働政策研究・研修機構のアンケート調査によると、常勤医師の49.5%が非常勤勤務などで複数の勤務先を持っています。しかも常勤医師の7.9%は5か所以上の勤務先で同時に勤務をしていると答えています。
如何に、非常勤勤務のかけもちが常勤医師のなかで「当たり前」のことになっているのかがよくわかります。
(引用:独立行政法人労働政策研究・研修機構)
また、同様に上記アンケート調査によると、非常勤勤務などで複数勤務先を持つその理由のトップが「収入を増やしたいから(48.1%)」となっています。
(引用:独立行政法人労働政策研究・研修機構)
2.産休・産後・子育て期間で、時間を上手く使って働きたい(女性医師)
常勤勤務を行っていたがお産や子育てを理由に退職、休職をする女性医師は数多くいらっしゃいます。そういった女性の先生がお持ちになっている、子育ての隙間時間を上手に利用して働きたいというニーズを埋めてくれるのも、非常勤医師ならではの働き方です。
常勤換算されない週2日程度勤務でも、定期非常勤求人は豊富に揃っています。実際に非常勤勤務の医師を性別で比べると、女性の方が非常勤医師数は多く存在しています(非常勤は医師全体の18.4%に対して、女性医師全体の24%が非常勤医師となっています)。
※男性医師の非常勤医師は凡そ17%です。
(引用:「病院における必要医師数調査結果」)
性別 | 常勤医師 | 短時間正規雇用 | 非常勤医師 |
---|---|---|---|
総数 | 80.3% | 1.3% | 18.4% |
男性 | 82.2% | 0.8% | 17.0% |
女性 | 72.7% | 3.2% | 24.0% |
(引用:「病院における必要医師数調査結果」)
3.QOLを充実化させたライフスタイル重視の先生
男性医師でも、常勤勤務の余りの激務に嫌気がさして非常勤勤務医としての生活を選ぶ先生は、もはや珍しくありません。
しばしば耳にするのは「子供や家族をほったらかしで仕事だけの人生に嫌気がさした」「働きすぎて、自分自身の健康を害してしまった(害してしまう恐れがあった)」という理由です。
4.転職の準備として、最新医療技術に触れていたい先生
常勤転職を考えている先生が、いきなり転職をしてしまって失敗をすると取り返しがつかないため、まずはスポット勤務や非常勤勤務で職場の雰囲気、人間関係、就労条件の履行状況などの様子をみた後に、改めてその職場に常勤転職を狙うというケースも存在します。
こういった先々を見据えたキャリア重視の非常勤勤務の場合は、あらかじめ医師転職コンサルタントから非常勤勤務先の状況をある程度、事前情報入手しておくことが必須でしょう(でないと、非常勤勤務そのものが無駄になる可能性も出てきます)。
また、大規模病院などで最先端技術に触れていたい、周辺知識を取得したい、できるだ余計な雑務を省き、自分の専門分野のみ臨床経験を数多く積みたい、と考える先生が非常勤勤務にシフトするというケースも、相対的に数は少ないながら見られます。
勿論、新米医師の研鑽の場(というより、生活の糧)として非常勤勤務が活用されているのは、言うまでもありません。
5.その他理由(開業準備、シニア医師、Iターン、Uターン、両親の介護など)
その他の理由として、開業準備段階の就業や修行を兼ねた勤務のため非常勤勤務を行う先生、シニアの医師がマイペースで再就職をしたいので、あえて忙しい常勤ではなくゆったりした当直勤務の非常勤勤務を選択するケース、IターンやUターン就職をするために、調査を兼ねて非常勤勤務で様子をまずは見るケース、両親の介護などの理由で常勤勤務が難しくなってしまった先生が、非常勤勤務にシフトするケースなどがあります。
非常勤勤務医を選ぶ主な理由
- 年収をアップさせたい(専業非常勤、常勤かけもち医)
- 育児と仕事を両立させたい女性医師
- QOLを充実させたいライフスタイル優先医師
- 常勤転職の前段階準備
- 最新医療機会、専門臨床数を増やしたい医師
- 新米医師の研鑽の場(生活収入補てん)
- 開業準備の医師
- シニア医師のゆったり再就職
- Iターン、Uターン医師
- 両親の介護
非常勤医師の業務内容
非常勤医師の求人業務内容は「外来求人」が最も多く、次いで「病棟管理(当直、日当直)」「救急対応」といわれています。外科医師の場合は美容外科医、眼科医、麻酔科医を除くと、あまり積極的な執刀を任せてはもらえない場合が多く(この辺はテレビドラマ「ドクターX」などとは大違いです)、訴訟リスクなどの責任問題に発展する業務とは縁が薄いといえます。
外科医などは術後管理の問題があり、執刀を任せてもらえないこともあります(眼科医などは非常勤でも手術を数多くこなせる例があります)。
簡単に言えば、あまり責任が重くない業務が非常勤医師の仕事と言えます(従って、産科などでは非常勤求人は極力に少なく抑え、できるだけ常勤勤務医で業務を回そうとする意思が経営層に働きます)。
高給で責任があまり問われない業務は一見すると「非常に好ましい」と思われがちですが、専門医資格の取得を目指したり、キャリア志向の強い医師、将来的に独立開業をするための実績づくりを考えているにとっては、フラストレーションが残るケースもあります。
また、雇用側(医療機関側)としては「常勤医師を助けてくれる即戦力」として期待している一面もあるため、この辺りの事情もきちんと組んで仕事に取り組まねばなりません。
非常勤だから楽に仕事すればいいや…という訳にはいきません。
非常勤求人の可能性が大きい診療科
では、どの診療科目で非常勤医師は活躍できる可能性が高くなるのでしょか。
先の産科の例を見ればわかりますが、これすなわち「常勤医師割合が少ない診療科=非常勤医師の勤務が容易(求人数も多い)」と判断することができます。
先の日本医師会総合政策研究機構による資料を再び参照しますと、診療科ごとの常勤医師の割合は下記グラフのようになっており、最も常勤割合が高いのが上から「産科(91.3%)」「心臓血管外科(89.6%)」「臨床検査科(89.1%)」となっています。
これらは非常勤医師が入り込みづらく、自然、求人数も少ないことが予想されます。
逆に、「美容外科(60.2%)」「心療内科(69.9%)」「全科(70.4%)」「一般内科(75.2%)」は非常勤医師が多く入り込める診療科です(実際に、求人数も多くなっています)。
更に同調査では、女性医師割合の多い「皮膚科(75.5%)」なども非常勤医師にとってチャンスの多い診療科としています。
(引用:「病院における必要医師数調査結果」)
上記の他にも、施設訪問診療などではコミュニケーション能力の高い非常勤医師が優遇されたり、高齢患者の多い整形外科や胃瘻技術や人工呼吸器技術の高い外科医が、非常勤医師として優遇されるケースなども実務的には見て取られます。
スポット医師の場合は更に単純業務に
スポット医師求人の場合は、内科一般外来が定番業務であり、その他には健康診断、人間ドック(それぞれ春夏に募集が増えます)、ワクチン注射、コンサートライブ会場やスポーツイベント会場などの帯同医師としての勤務といった、変わり種求人が混じってきます。
明らかに定期非常勤勤務よりは「ルーティン的業務中心だから楽で、責任は少なく、給与は高い(ただし求人数は少ない」という特徴があります。
非常勤医師のメリットについて
メリット1.時給換算すると常勤よりも高収入
常勤医師の方が合間を見て非常勤医師勤務をする一番のメリットは、収入の増加でしょう。
もしも単純に医師の収入を時給に換算するとすれば、常勤より非常勤の方が断然と高くなるケースが多いです。
平成29年の常勤医師の平均年収は1370万円(健康保険組合連合会調査)、常勤医師の平均週勤務時間が46.6時間(独立行政法人労働政策研究・研修機構)ですから、1年間を52.18週間とすると、時給は5634.2円になります。
一方、8時間勤務の外来非常勤時給は平均1万円といわれています。
実に、常勤勤務の倍ほどの時給差が生まれていることになりますが、これが産科や産業医といった高額給与の勤務だった場合や、郊外・地方の医療機関で非常勤勤務をした場合は、更に金額が跳ね上がり、常勤勤務よりも高額報酬が得られることになります。
もし常勤とかけもち勤務をするならば、あなたの年収は楽々と1000万を超えることになるでしょう。
常勤医師の時給
平均年収(1370万円)÷52.18週間÷46.6時間=5634.2円(時給)
非常勤医師の時給・日給
10,000円(平均時給 - 東京都)
15,000円(平均時給 - 千葉県)
80,000~100,000円(8時間勤務平均日給)
400,000円(産婦人科日当直例)
150,000円(麻酔科、整形外科1回勤務)
メリット2.気楽(ドライ)な人間関係と自由な時間
非常勤勤務の医師の中には、職場の人間関係に深入りしたくない人も多いようです。実際に常勤勤務と比べると、不意な残業や当直を頼まれることもありませんし、突然のオンコールやオンコール翌日勤務にも悩まされることもない代わりに、非常に淡々とした「仕事上のお付き合い」のみで仕事が進行することに気づくはずです。
仕事以外のプライベートなどにワークライフバランスの重点を置きたい医師にとっては、非常に気楽な環境であるといえるでしょう。
勤務日が固定されていることからプライベートの予定は立てやすいので、ストレスが少ないということも働きやすいポイントでしょう。つまり「病院に拘束されている」という気持ちが少ないままで割りきれて仕事が出来るわけです。
医療現場では「過労」を始めとする医師勤務環境の崩壊がとりざたされますが、非常勤医師としての勤務であれば、かなりの時間的コントロールが可能ですので、常勤医師達のそういった悩みとは無縁でいられます。
メリット3.多種多様な職場で研鑽をつめる
また、常勤医師と非常勤医師を掛け持ちしている人の中には、収入以外にも(常勤では)得られない経験を積むためという理由で、非常勤として働く医師も多くいらっしゃいます。
病院によって専門や得意不得意はありますから、色々な病院で症例を診察したり経験して周辺知識を蓄積することは、医師としての個人スキルアップに繋がるからです。もちろんそういった経験は積み重なることによって医師としての自信になり、将来的なキャリアアップに活かすことができる、医師としての大きな財産となり得ます。。
当然ですが、非常勤医師として働いていると、複数の職場において新たな人脈が生まれます。
勤務地が変わることで、いつもとは異なった人との出会いがあることも、医師にとって大きなメリットとなるでしょう。
非常勤医師のデメリットについて
ここでは常勤かけもち医師ではなく、非常勤医師の専業者(フリーランス医師)に絞って考えてみます。
デメリット1.社会保険、年金、健康保険、確定申告の手続き
専業の非常勤医師の場合、社会保険、年金、健康保険に関する手続きをすべて自分でまかなわなければならないというデメリットがあります。
勤務先で社会保険への加入を許可してくれれば良いのですが、そうでないならば、医師国民健康保険に自分で加入手続きをしなければなりませんし、費用の補助はもちろんありません。
フリーランスという立場であるがため、年度末の確定申告を毎年行わなければならないという、煩わしさもついて回ります。
デメリット2.退職金、福利厚生、交通費等手当
常勤医師には退職金や住居手当などの福利厚生、交通費などは当たり前のように支払われる職場でも、非常勤医師に対しては支払いを行っていない医療機関は多数あります。
デメリット3.社会的信用(住宅ローン、クレジットカード等)
悲しいかな、非常勤医師の社会的信用度は常勤医師と比べて劣っているといわざるを得ません。所属勤務先という大きなバックボーンがないことは、住宅ローンやクレジットカードを作成する際などの信用調査時に、マイナスの影響を与える可能性は否定できません。
デメリット4.雇用側都合による就業の不安定さ
雇用側としては、あくまでも最初に守るべき対象は正規雇用者(常勤医師)です。
経営上の都合でリストラや病床縮小などが始まった場合、非常勤医師は最初に雇用契約解除の対象になる可能性が高いことは、理解しておくべきです。
デメリットを補って余りあるメリットを考える
常勤医師と異なり、期間契約就業保障がないため、どうしても心理的に不安を抱えている医師もいるようです。とはいえ、組織に縛られず自由なライフスタイルで高給を得ることができるために、一概にデメリットのみを強調するのはナンセンスかもしれません。
自分自身の時間を作れることが本来のメリットの1つなのに、中には非常勤でありながら出勤頻度がやたら多くなってしまい、プライベートの時間が減ってしまったという話もあるようです。特に常勤かけもち医師や、急性期病院などの医療機関で働く場合に、こういったケースが発生しています。
複数の勤務先に在籍するということは、複数の組織ルールや人間関係に順応剃る必要が出てきますので、順応力やコミュニケーションに自信がない医師にとっては、こういった環境の変化についていけない人もでてくるでしょう。
非常勤医師の時給、給与、年収の相場は?
先ほど、非常勤医師の時給平均が1万円、日給平均が8万円というデータを見ましたが、ここでは実際の医師紹介会社が供給する求人票のなかから、非常勤求人の給与相場を見てみましょう。
CME@医師転職の非常勤給与ランキングによると、日給120,000円、半日110,000円、当直は1回230,000円という給与水準の求人も数多く存在しています。
非常勤1日給与(引用:https://www.cme-drtenshoku.jp/drmbc-lp/)
非常勤半日給与(引用:https://www.cme-drtenshoku.jp/drmbc-lp/)
非常勤当直1日報酬(引用:https://www.cme-drtenshoku.jp/drmbc-lp/)
また、産業医という仕事そのものは非常に楽な上に給与は大変に高給で魅力ある求人という、非常に(医師にとっては)美味しい仕事がまだまだ存在しているのも現実なので、これからも非常勤勤務医師の中から、普通の勤務医ではありえない高給を得る先生が出てくることは間違いないでしょう。
逆に、ハードな仕事を一切やめてゆったりと医師人生を過ごしたい、子育てに専念していきたい…といったニーズをくみ取るならば、週2~3日の非常勤勤務で、常勤医師とほぼ変わらないような年収を得ることも難しくありません。
医師転職サイトの多くが非常勤医師の求人情報を積極的に取り扱っている
多くの医師紹介会社や医師転職サイトにとって、(定期)非常勤医師求人の取り扱いは常勤維持求人の取り扱いに次いで多くなっています。
1日や半日限りのスポットアルバイト(単発アルバイト)案件は募集の回転がとても速く、人材会社としても取り扱いは細かく、業務量も多いために、ある一定以上の規模でないと情報データベースの最新化が難しいのが現実です。
一方の定期非常勤の場合、基本的には「一定の期間以上継続して働いてもらうアルバイト」という扱いになりますので、求人情報の数は「常勤より多く、スポットより少ない」という程度となるため、データベースの維持管理も比較的容易だからです。
◆医師紹介会社や医師転職サイトの求人数の多さ
常勤求人>定期非常勤求人>スポット求人
※意図的にスポット求人は取り扱わない会社もあります。
例えば、主要の医師転職サイトについて、常勤医師求人と非常勤医師求人の全体取り扱い数を単純に比較してみましょう(※細かく見ていくと診療科目や対象地域についても違いがありますので、あくまでも企業単体の保有数全体を俯瞰します)。
m3.com CAREER 保有の非常勤求人数
https://career.m3.com/recruits/parttime から画像引用
2017年6月2日調査の段階で、m3.com CAREERのサイトでは(エムスリーキャリアエージェントとは別サイト)、常勤医師求人が9325件、非常勤医師求人が5771件、スポット医師求人が4421件となっており、件で説明した保有求人数バランスの通りになっております。
リクルートドクターズキャリア 保有の非常勤医師求人数
リクルートドクターズキャリアの常勤求人数
※https://www.recruit-dc.co.jp/hijokin/ より引用
リクルートドクターズキャリアでは、非常勤とスポットが混在している様子ではあるものの、常勤医師求人が12870件、非常勤医師求人が5779件と、やはりこちらでも常勤医師数よりは非常勤医師数の方が少ない結果となっています。
◆e-hijyokin(リンクスタッフ) 保有の非常勤求人数
※https://www.e-doctor.ne.jp/h/search/ より引用
※http://www.hijyokin.jp/ より引用
リンクスタッフ運営の「e-hijyokin」では、同社運営の常勤医師求人専門サイト「e-doctor」の4715件の求人に対し、4275件の非常勤医師求人が確認できました。やはり非常勤求人の数が(500件程度ではありますが)常勤医師求人よりも少なめとなっております。
常勤4日、非常勤1日を組み合わせて働く医師も
このように、各紹介会社や医師転職サイトが積極的に非常勤バイトの求人募集を行っている背景には、医療機関のみならず医師側からのニーズも大変強く影響しています。
近年、労働基準監督署による労働条件是正勧告や立ち入り調査が電通のような一般企業だけではなく、聖路加国際病院といった医療業界にまで及ぶようになってきております(聖路加病院では労基署の査察後、医療従事者の労働条件改善のため土日外来が全廃する事態に至っております)。
この監査で、サービス残業が当たり前という聖路加の「ブラック企業」ぶりが指摘された。また、他の病院と比較して給与体系も低く、後期研修を終えた三十代前半の医師で年収は約四百万円程度にとどまっているという。しかも「アルバイトは原則禁止」(同)となっており、「聖路加で働かせてやっているのだから文句を言うな」(同病院医師)という態度であることも明らかになった。
これはすなわち、これまでは「聖域」とされて、その職業的使命感と倫理観から長時間労働が当たり前と考えられていた、医療現場で働く医師、看護師、コメディカルスタッフ自身の意識が相当に変化してきたことも1つの要因でしょう。
医師も自分の人生、プライベートと仕事のバランス、QOLをこれまで以上に意識しながら生きていくことができる時代になってきたといえます。
そのような中で、常勤勤務は4日のみ可能な職場に転職をして、更に1日~2日をご自身の経済状況とニーズ(子供の進学、親の介護、開業その他)に合わせて調整できる収益日として、非常勤勤務を追加するという医師が増えてきました。
完全に非常勤医師(フリーランス医師)になってしまうのは、保険、税金、福利厚生を考えると不安極まりないが、ギチギチに時間拘束をされる完全常勤も嫌だ・・という医師にとって非常に都合よい折衷案であるといえます。
人生をもっと楽しみたい、仕事と家族を両立させたい、と考える医師達にとっては、非常勤求人というシステムは非常に柔軟性があふれ、且つ、高給を得られるスタイルとして人気を得ているともいえます。
【参考資料】
日本医師会総合政策研究機構
http://www.jmari.med.or.jp/
病院における必要医師数調査結果
http://www.jmari.med.or.jp/download/WP346.pdf
医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/T11/T11HO070.html
短時間正規雇用支援事業の実施について(厚生労働省)
http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20081016_03.pdf
非常勤医師を組み合わせて「常勤」とみなす仕組みを拡大へ(メディ・ウォッチ)
http://www.medwatch.jp/?p=16756
医療法人社団常仁会 牛久愛和総合病院
http://www.jojinkai.com/
独立行政法人労働政策研究・研修機構アンケート
http://www.jil.go.jp/press/documents/20120904.pdf
医師需給に係る医師の勤務状況調査(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/03/s0327-2c.html
第21回医療経済実態調査 結果報告に関する分析(健康封建組合連合会)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000185817.pdf
【2018年版】 非常勤/スポット求人に強いTop3社
非常勤/アルバイト求人を考えている医師の場合、当研究所調査で高評価をマークしたこの3社だけまとめて同時登録しておけばまず間違いありません。以下の3社は非常勤、アルバイト求人募集を豊富に所有しており、3社同時登録することで、優良求人入手のチャンスを逃さない確率が高まり、かなり自由度の高い好条件の案件獲得につながる可能性が大きくなります。
注意すべき点は、医師紹介会社の求人獲得営業には特徴と強み弱みがあり、「常勤に強い会社」と「非常勤/アルバイトに強い会社」は全く異なっている点です。登録候補先の紹介会社は、常勤、非常勤のどちらが得意分野なのかを事前に把握しておきましょう。
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