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「ドクターX 外科医大門未知子」の視聴率が好調

ドクターXの「神原名医紹介所」は存在しうるか(医師紹介会社の組織パターン)

 

■ 記事作成日 2014/10/31 ■ 最終更新日 2017/12/6

 

「私失敗しないので」の決め台詞で活躍する、フリーランスの天才外科医、大門未知子(米倉涼子)を描く人気のテレビドラマ「ドクターX 外科医大門未知子」第三弾が好調です。初回放送から3放送連続で視聴率20%超えをたたき出し、近年のドラマとしては異例とも言える大ヒットとなっています。医療モノドラマの限界が叫ばれていた昨今、「ドクターX」シリーズは2012年に放送された初作から続けてヒットを飛ばし、2013年、そして今年2014年と3シリーズ続けてヒットを飛ばしています。

 

 

 

ドクターX」は、天才的な腕を持ちながら組織に属さず、フリーランスとして病院を渡り歩くクールで型破りな外科医・未知子を通して医療現場を描いた人気ドラマ。第3弾の今シリーズは未知子が日本医学界の頂点に君臨する「国立高度医療センター」に派遣され、日本の東西を代表する「東帝大学病院」と「西京大学病院」の覇権争いに巻き込まれながら、“史上最大の戦い”を繰り広げる。

 

※マイナビニュースより http://news.mynavi.jp/news/2014/10/24/112/

 

医療モノドラマということで、我々も毎回楽しく視聴させていただいておりますが、第三作となる今回は更にストーリーに「非現実度」が増してしまったかな?という初見感想を持っております。とはいえ、ドラマは現実を忠実に再現すれば面白くなるというものではなく、むしろ、現実味を薄めることによってインターテインメントとしての娯楽度や視聴者理解度が増すケースが多いので、「非現実度」が増したからといって別に問題は無いと思います。だからこそ面白いのであって、

 

「こんなフリーランス外科医医師なんていないだろ」というツッコミはナンセンスで空気が読めていない発言なのです。

 

さて、実際に、外科医がフリーランス医師として活動することの非現実性についてはいつくかのメディアで既に記事にされているのを散見しておりますが、単純に麻酔科医などの平凡な(?)フリーランス医師より、他の誰にも扱えない難病に挑む外科医の方が単純にドラマティックなのであって、純粋に娯楽としての完成度が好調な視聴率に跳ね返っているのでしょう。

 

米倉涼子「ドクターX」のようなフリー医師は実在するのか?(DMMニュース)
米倉涼子「ドクターX」で疑問…フリーの医者は本当にいる?(livedoorニュース)

 

みなさん、主人公の大門未知子(のような)フリーランス医師が本当に存在するのかどうかに興味津々であります。ちなみに、ドラマ第1期より「フリーランス女医」のネタ元+モデル(?)となっているのは、麻酔科医の筒井冨美さんであることは有名です。

 

・筒井冨美さんの連載「 ノマドドクターXは見た」(東洋経済ONLINE)

 

しかしながら、当研究所では、主人公の大門未知子のようなフリーランス医師が本当にいるかどうかよりも、もう少し別の人に興味津々なのです。

 

それこそが、凄腕天才外科医である主人公大門未知子を医療機関(しかも超有名大学病院やマンモス医療機関ばかり!)に派遣している医師紹介会社「神原名医紹介所」とその所長、神原晶(岸部一徳)です。

 

 

劇中の神原晶所長は、大門未知子の「師匠」であり、医師免許を取り消された過去がある「元ドクター(外科医)」という設定です。それ以外の情報は殆ど謎に包まれており(今後、劇中で詳細が明らかになるかもしれません)、大門未知子が難手術を終えた後に、高額な請求書とメロンを必ず持参して美智子の派遣先に現れる姿がなんとも言えず味があり、コミカルで、印象的ですね。

 

請求書とメロンと神原所長のシーン(特に請求書を渡し終わり、ステップを踏みながら医院の廊下を歩いて去って行く場面)は、ドクターXシリーズの恒例の「オチ」を飾るシーンとなっています。

 

神原晶の経営する医師紹介会社

 

神原名医紹介所は、まるで学生寮のようなおんぼろアパートに居を構えており、紹介所に登録している医師らと一緒に1つ屋根の下で共同生活をしています。仕事(オペ)のないときは常に皆で雁首そろえて麻雀、酒、猫(ベンケーシー)を囲んでばかり、ますます学生寮のような雰囲気です。

 

 

この学生寮のような神原名医紹介所には複数のドクターが所属しているようで、ドラマから推測すると、大門未知子のパートナーとも言えるフリーランス麻酔科医の城之内(内田有紀)を含めて4~5名程度のドクターが常に「常駐型」で在席しているようです。しかも、それぞれのドクター全てが「スーパードクター」といえる名医ばかり。

 

さて、「スーパードクターばかりを紹介するノーライセンス元ドクターが仕切る登録者同居型の医師紹介会社」。

 

こんな医師紹介会社って実際にありうるのでしょうか?少々ナンセンスなことを知りつつも、ドクターXの神原名医紹介所を取っ掛かりとして、現実世界の医師紹介会社の運営パターンについて、今回は取り扱ってみようと思います。


医師紹介会社の組織パターン

まるでブラックジャックのようなスーパードクターばかりを「独占的」に複数名抱えこみ、高額な治療費をガツガツ医療機関(大抵、組織内に「巨悪」が蔓延っている)から取って来る。しかも所長は元外科医のノーライセンスドクターで、所属スーパードクター(大門未知子)の師匠でもある。

 

こんな医師紹介会社があれば本当に(ある意味)痛快ですね。しかし、残念ながら現実はそう簡単には行かなそうです。フリーランス外科医の存在と共に、こういった破天荒な医師紹介会社も実際には存在しなさそうです。では、医師紹介会社のパターンはどういったものがあるのでしょうか。

 

代表的な組織例は下記のようになります。

 

  1. 医療メディア等企業が始めた医師紹介会社
  2. 昔から医師人材を扱っている医師紹介会社
  3. 調剤薬局運営企業が母体の医師紹介会社
  4. ベンチャー型の独立系医師紹介会社
  5. 開業コンサルが母体の医師紹介会社
  6. 他の医療人材紹介が主力の医師紹介会社
  7. 一般人材会社から参入した医師紹介会社
  8. 全く別の分野から参入した医師紹介会社
  9. 求人を外部から寄せ集めた医師紹介会社

 

それではそれぞれを個別に見て行きましょう

1.医療メディア等企業が始めた医師紹介会社

元々医師免許取得者をターゲットとしたメディア媒体、情報サービスなどを展開していた企業が、提供サービスの一貫もしくは新たな主力事業として、医師転職支援事業を開始したパターンになります。

 

特徴として、元々大規模な医師データベース(個人情報)を有している会社が人材紹介を始めることで、スタートアップ時の顧客営業の負担が非常に少なく、医療機関側の求人情報を効率よくあつめることと、転職希望やアルバイト志望の医師ニーズと就業後のフォローアップが出来るだけの業界知識、きめ細やかさを有していれば、スムーズに組織拡大が可能になります。

 

人材紹介事業のノウハウは、社内で1から涵養させていくケースと、M&Aにより元々医師紹介事業を行っていた企業を買収することで、ノウハウを内製化していく方法があります。

 

このケースの組織で代表的なのが、「エムスリーキャリアエージェント(エムスリーキャリア株式会社)」、「ケアネットキャリア(株式会社ケアネット)」などになります。「エムスリーキャリアエージェント(エムスリーキャリア株式会社)」は日本最大の医師コミュニティ「m3.com」を有しており、ユーザー医師数は20万人とされています。医療系人事紹介会社の「SMS」のノウハウを取り入れたジョイントベンチャーとして活躍して中です(当研究所の評価はAAA)。

 

 

 

「ケアネットキャリア(株式会社ケアネット)」は、医療ポータル「ケアネットドットコム」を展開しており、ユーザー医師数は「m3.com」と同じく20万人と公称しております。

 

同社は「エムスリーキャリアエージェント(エムスリーキャリア株式会社)」よりも医師紹介事業にリソースを費やしている様子はなく、実際の転職支援活動は外部の登録業者に実務を担当させて、自社は求人情報の掲載と医師のマッチングのみを行っている点が、「エムスリーキャリアエージェント(エムスリーキャリア株式会社)」と大きく異なります(当研究所の評価はB)。

 

 

スタイルは違えど、もともと医師業界に深く食い込んでいる組織パターンですので、初期費用としてとても大きい「新規顧客獲費用(Cost Per Order)」をとても低く抑えることができ、医師紹介会やとしても実績を残しやすく、元々ブランド力が高いケースが多いことも相まって、安定した事業を行っている印象です。

2.昔から医師人材を扱っている医師紹介会社

今のように医師紹介業界が激戦市場になるより前の時代から、医師転職支援やアルバイト支援を行っていた会社が該当します。

 

「老舗の医師紹介会社」として組織規模を大きくした企業もあれば、昔から規模も変わらず営業スタイルも変えず、社長の人脈のみを頼りに細々と事業を続けている「零細医師紹介会社」の2パターンに分類されます。

 

ドクターXの「神原名医紹介所」が実在するならば、後者に該当するのでしょうか。しかし、実際の「零細医師紹介会社」は、神原名医紹介所のようにスーパードクターを在籍させることもできなければ、高額のフィーを医療機関に請求することもできずにいるわけなのですが・・・。大きな違いですね。厚生労働省による2004年の研修医制度変更に目をつけた新規参入企業が増える中、激化する競争の煽りを受けて苦境に陥る老舗医師紹介会社も珍しくありません。

 

「老舗の医師紹介会社」として比較的大手で有名なのが「e-docotor(株式会社リンクスタッフ)」でしょう。後者の「零細医師紹介会社」は色々ありますが、業歴で考えると「ABEドクターステーション」などが1例として数えられるでしょうか。

 

 

 

尚、「e-doctor(株式会社リンクスタッフ)」は過去にニセ医者派遣事件を引き起こしておりますので、当研究所としては評価C(※現在再評価検討中))。「ABEドクターステーション」は評価Bとして、企業評価査定がでております。

3.調剤薬局運営企業が母体の医師紹介会社

調剤薬局を数百店舗規模で、全国的に運営している企業がいくつか存在します。また、全国れベルまで行かなくとも、特定の地域・地方に重点展開している調剤薬局チェーンは結構な数に上り、上場を果たしている企業も珍しくありません。

 

御存知の通り、調剤薬局チェーンの多くが、大小様々な医療機関に近接する形で店舗展開がなされており、こういった企業所属の薬剤師は、隣接の調剤薬局だけでなく、医療機関に派遣されて調剤業務にあたっていることも多いです。自然、調剤薬局チェーン企業と医療機関の営業的連携は密なものとなり、医師資格取得者の紹介事業に進出した際も、スムーズに契約がまとまる面が多くなります。

 

こういった調剤薬局チェーンに出自を持つ医師紹介会社は、かなり広範囲の医療機関それぞれの内部事情に最初から相当詳しい土壌ができているため、登録した医師のニーズを組み上げると、調剤薬局営業で構築された膨大な社内データベースを活用し、その医師の就業ニーズにマッチした医療機関や製薬会社などをスムーズに紹介することができるのが強みです。

 

また、調剤薬局店舗展開とエリア攻略シナジーが効くことから、全国を対象に医師転職支援を行うことが容易であり、極度に大都市や地方のみに偏った転職候補先を強いられることがないというメリットも医師にはあります。

 

母体の調剤薬局運営事業は「経営的に堅い商売」であり、運営組織規模が大きいこともあるので経営リソース(人、モノ、金)に不足することも少なく、自然、派生した医師紹介事業についても安定的な事業経営流されているケースが多いと言えます。

 

調剤薬局チェーンを母体(親会社含む)とする代表的な医師紹介会社は評価AAAの「医師転職ドットコム(株式会社メディウェル)」、「スマイルドクター(日本メディカルシステム株式会社)」などがあります(株式会社メディウェルは医療コンサルティングからスタートした企業ですが、現在は調剤薬局最大手の「アインファーマシーズ」を親会社に持っています)。

 

4.ベンチャー型の独立系医師紹介会社

元医師紹介会社社員や役員などが独立して立ち上げた医師紹介会社です。医師免許取得者が立ち上げた医師紹介会社もあります。元々所属していた医師紹介会社の事業運営方法を踏襲している事が多く、話を聞いていると「なんとなくあの会社に似ているな…」と気づく事が多いです。

 

しかしながら、元々所属していた医師紹介会社を事業規模、事業レベルで大きく超えることはなかなか難しいようです。元株式会社メディカルリサーチアンドテクノロジー(MRT)の代表取締役を務めた米山隆一氏が立ち上げた「iDoctor」が良い例でしょう。(※しかもiDoctorはMRTから顧客名簿を持ちだしてしまい、刑事事件にまで発展。逮捕者まででてしまうという体たらくです)。

 

 

 

後発の医師紹介会社が単純に先発組と同じことをしてみてもうまくいかないのは自明の理かもしれません。それでも中には特徴的なサービスのプッシュに成功し、一定のポジションを得ることに成功する医師紹介会社も存在します。

 

例えば、社長が自らも麻酔科医だった経験と、大手医師紹介会社(リンクスタッフ)への登録時に医師紹介会社運営ノウハウなどを取得。麻酔科医のアルバイト・非常勤に特化して成功している「アネナビ(株式会社アネステーション)」などが良い例です。

 

5.医療コンサルが母体の医師紹介会社

医療コンサル(クリニック開業・経営コンサルティング会社)が主力事業、母体である医師紹介会社は結構多いですね。勤務医の転職支援で営業ネットワークを広げておけば、ゆくゆく、転職支援やアルバイト支援で関係を持った医師が独立開業する際に、コンサルティングサービスを提供することも可能になります。

 

案外、クリニックの開業コンサルティング会社は玉石混交状態であると言えます。開業コンサルティングに腕が立つような企業は案外少なくて、医療機器や不動産の斡旋を目的としただけのようなコンサル企業も珍しくありません。そのような中には、小規模で経営自体が追い込まれているのではないか?と思われるようなコンサル企業が(苦し紛れに?)医師紹介事業に進出するケースなどもみられ、そういったコンサル企業が運営する医師紹介事業は、大抵レベルが低いです。

 

勿論、開業コンサルティング事業で名前を大きく上げた上に、医師紹介事業でも成功している企業はあります。先に紹介した「医師転職ドットコム」を運営する株式会社メディウェルは、親会社は調剤薬局チェーンでもありますが、元々は医院開業経営コンサルティングで大きく成功した企業です。

 

株式会社メディウェルは特殊な部類で、ほとんどの開業コンサルがメインの医師紹介会社は一般的に組織規模も小さいケースが多くなっております。当研究所でも企業レビューをしている「開業・経営コンサル」を母体とする医師紹介会社を2つほどピックアップしておきましょう。

 

6.他の医療人材紹介が主力の医師紹介会社

薬剤師、看護師、介護士、医療事務を含めた、他の医療系人材派遣・紹介を主力としてきた人材紹介会社が、医師の転職・アルバイト支援事業に乗り出してきたパターンの医師紹介会社です。

 

このタイプの医師紹介会社は、医師の紹介事業で大きく成績を伸ばす有力企業が頭角を出し始めた2004年~2009年頃に事業参入してきた企業が多いです。それらの多くが、「既に医療関係の人材紹介会社をやっているから、医師紹介も簡単にできるだろう」という、割と安直な考え方で参入してきたフシが見られます。

 

例えば、求人検索データベースのシステムが看護師や薬剤師などと殆ど同じの使い回しシステムだったり、求人票の作りがやたら簡素だったりするケースが見られ、直ぐに「医師専門ではないのだな」と喝破することが可能です。概ね、医師の詳細多岐にわたる専門性や過去実績とキャリア将来性ニーズに対応した求人などを揃えることができず、看護師や薬剤師のケースと比べて人材マッチングが上手く行かず破綻するケースが珍しくありません。

 

そもそも医師の転職は、実務にかかる時間も他医療系職種よりも長期間(時には年単位)を要し、就業先医療機関への営業活動はもとより、転職志望の医師を集めること自体が、相対的に難易度が高くなります。従って、他の医療系人材の紹介を主力とした会社で、医師紹介事業を軌道に乗せられているのは、それなりの規模の資本を最初から用意することができている、ほんの少数の企業のみというのが現実です。

7.一般人材会社から参入した医師紹介会社

7番目は医療とは無関係の、一般的な人材派遣紹介会社から、医師紹介事業に参入してきた医師紹介会社です。薬剤師や看護師紹介を主力とする人材会社より状況は酷いのが一般的で、医療業界、特に大学医局と医師のキャリアにまつわる複雑なしがらみ、慣習、人間関係、ルールを理解していない会社が殆どです。

 

酷い医師紹介になると、サラリーマンやOLの転職支援と同じような感覚で「正社員」「パートタイム」という言葉を乱用したりします。また、医局をやめようとお考えの医師と大学病院との難しい人間関係のしがらみについての理解なども低く、簡単に跡を濁すような退局を強引に進めようとしたりするケースすら見受けられます。

 

全ては医師キャリアの特殊性に対する知識不足からくるものです。

 

これらの中には「マイナビDoctor(株式会社マイナビ)」のように、人材紹介企業の超大手から参入してきた企業も存在しますが、それでもやはり、専業として医師転職支援事業に邁進してきた企業からは見劣りがしてしまいます。

 

いまさらながらなのですが、医師転職支援事業というものが、如何に他の業種人材ビジネスと比較して「特殊」なものなのか、という事を改めて感じます。

 

 

8.全く別の分野から参入した医師紹介会社

 

更に、全く人材紹介事業の経験もなく、「医師紹介事業は儲かる(はず)」という目論見のもと、唐突に業界に参入してきた企業も見て取れます。特にM&Aによって医師紹介事業の経験に長けている企業を取り込むなどの施策も打たず、人間だけ配置して「とりあえずやってみよう」的な、勢いのみで投下資本を目減りさせ続けている企業が殆どです。

 

医師の紹介事業は、突然に素人が参入してきてさっさと成約するような、簡単な事業ではありません。少なくとも、医療業界、特に医局と医師キャリアへの厚い知識、受け入れ先医療機関への広く深いネットワークなくして、事業を前に転がす事はまず難しいでしょう。

 

株式会社TS工建が運営する「ドクターズWORKER評価A)」のように、割と堅実な運営軌道に乗っているのかな?という会社もありますが、どうしても医療業界への精通道を感じると、全く畑違いの業界から入ってきた企業に、簡単に医師キャリアに関する重大な決定に関われせる訳にはいかないと感じてしまいます。

 

また、「セコムメディカルリソース」のように、セコムグループという超大手資本をバックグラウンドに持ちながらも、凡庸な経営スタイルと特徴のないサービスで、医師紹介事業にはかなり「苦戦」しているなと見て取れる会社もあります。

 

まずは、医師転職業界での実績をある程度積んだ状態にまで事業を育てないと、どうしても医療業界精通度も高く、医師紹介事業歴も長いような、評価の高い競合他社と比較すると、見劣りがしてしまうのは仕方ないのかもしれません。

 

 

 

9.求人を外部から寄せ集めた医師紹介会社

 

自社では医療機関、製薬会社などの医師就業候補先への営業を一切行わず、外部の医師紹介会社から求人情報だけを集めて、ウェブサイト上で一覧表示だけする医師紹介会社です。ほとんどがIT系企業やウェブ制作会社が運営しており、医療業界や医師キャリアに対する知識も経験も0に近い状況です。

 

多数の医師紹介会社の求人募集を一度で調べられるという長所がある一方、いざ実際の求人内容への問い合わせや面談までのステップ、就業後のフォローアップなどは一切外部任せですので、当事者である医師紹介会社は一切のフォローを行いません。当研究所としては、あまり皆様に関わりを持ってほしくないタイプの医師紹介会社パターンです。

 

「とりあえず求人マッチングサイトだけ作りましたよ。後は勝手に当事者同士でやりとりしてね」というスタンスの企業も多く、概ねその後は運営が滞ったり、古い賞味期限切れの求人をぶら下げたまま更新もせず、事業撤退もしくは放置状態に陥る既定路線に走るケースも目立ちます。

 

大手の医師紹介会社が本サービスとは別個に同様の求人サイトを運営するケースもありますが(m3.com career, ケアネットキャリア等)、ほとんどのケースでユーザーからの不満が溜まり、運営が困難担っていくケースです。

 

こういうサービスサイトを運営している企業はそもそも「医師紹介会社」とは呼べず、単に「ITサービス企業」でしかありません。医師転職業界独特のバックアップフォローを求めること自体がナンセンスなのかもしれません。

 

例としては、評価Bの「医療人材ネット(メディアオンライン株式会社)」などが有ります。

 

 

ドクターXからは随分と話題が離れました

 

ドクターXと神原名医紹介所の話題からは随分とお話がそれて(?)しまいましたが、一口に医師紹介会社といっても、これだけの組織パターンがあるわけで、おのずとそれぞれの組織で営業スタイルや医師フォローへの姿勢からリソースまで異なってきます。

 

こういった企業それぞれのバックグラウンドや組織体制なども緻密に考慮しながら、満足いく転職を迎えたいものですね。

 

ところで、法外なフィーをふっかける、スーパードクター住み込み式の「神原名医紹介所」。誰か同じようなスタイルで事業を立ち上げてみてはどうでしょうか?外科医でなく麻酔科医や婦人科医オンリーだったら、やり方によっては成功するかもしれませんよ。もちろん、私は経営結果に責任は持ちませんが。

 

この記事を書いた人


野村龍一(医師紹介会社研究所 所長)

某医療人材紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。

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