転職医師たちの「キャリア」事情、本音の話
■ 記事作成日 2015/6/15 ■ 最終更新日 2017/12/5
出世・キャリアアップ・キャリア形成…etc.
多くの医師たちは、「やりがいのある医療」「自己実現」「社会的意義」「自己存在価値」などを求めて転職を考える訳ですが、残念ながら、いざ踏み出したその一歩が、必ずや「吉」と出るとは限りません。もしも凶と出てしまった場合、ドクターとしてのキャリアに大きなダメージを受ける結果は免れないでしょう。
ドクターのキャリアにとって大きな岐路…飛躍にも失墜にもつながる転職において、大吉をひくにはどうしたら良いのでしょうか?ここでは、転職医師たちのキャリア事情を、建前でなく本音ベースで見てみましょう。
◆退局→転職によるキャリア事情~マイナス編~
一昔前にくらべて医局の力は小さくなってきたとは言え、いわゆる「医局人事」は根強く残っており、地域医療業界において、今なお医局が大きな影響力を持っているのは言うまでもありません。そう、正に小説・ドラマ「白い巨塔」の世界です。
…希望の領域に従事できないもどかしさ…
…有無を言わさず敢行される、突然の転院…
…複雑で陰湿かつパワハラ的な人間関係…
…医業と関係のない雑務の多さ…
ドクターが医局に嫌気がさし、新しい道を選ぶ理由はどれも、同業医師や医師転職支援コンサルタントの多くに共感・同情を得られる切実なものでしょう。
しかし、ここに落とし穴があります。
とにかく「医局が嫌だ」「医局を辞めたら状況が良くなる」という安易な考えにひっぱられ、大失敗するケースが続出しているのです。
◆ある若手外科医は…
いわゆる医局人事に振り回された結果、二年間で四度もの転院を余儀なくされ…環境の変化や人間関係の軋轢に疲れ果て、転職エージェントに進められるままに転職を選んでしまいました。
「医局さえ辞めれば落ち着いて働ける」と思っていた彼でしたが…ふと我に返ると、博士号取得の道はほぼ閉ざされ、外科医としてのスペシャリティを確立しようにも導いてくれる人はおらず、当直だらけの同じような臨床を繰り返す日々と将来に、半ば絶望しているそうです。
「まだ一人前ではなかった自分」に初めて気づき、キャリア形成における医局の重要性を痛感しているそうです。
◆ある中堅内科医は…
これ以上医局にいても、教授の考え方とは異なる「自らが理想とする医療」は実現できないと考え退局。
転職エージェントに夢を語り、夢を実現するステージとして、理事長と意見が合致した病院に転職した彼でしたが…自らの理想の体現のためには、制度や慣例の改革が必要で、そのためには医療業界への力が不可欠。そしてその力は、結局「医局」が持っている…と気付いたそうです。
◆ある熟練眼科医は…
いわゆるライバルとのポジション争いに負けてしまい、医局を去る事を決意。知人を頼って隣県の私立病院に転職しました。そこはかつての医局の息が直接かかっていないとはいえ、教授や部長たちと懇意にあったドクターも。
入職前から既に悪い噂が囁かれてしまい、信頼を得るのは困難の極みでしかなかったそうです。その上、学会などでかつての医局の面々に会っても挨拶さえしてもらえず、発言や発表においても、頭から否定的な態度で対峙され、孤立無援の状態に、八方塞がりとなっているそうです。
医局退局からの転職で、順風満帆なキャリアアップの道が閉ざされてしまったドクターたちには、転職の目的が「医局を辞めたい」という事だったという共通点があります。
転職し、病院という受け皿だけが変わっても、ドクター本人が目的を明解に仕事に対峙していなければ、結局は何の解決にも繋がらないばかりか、長いキャリアを鑑みた上でマイナス要因になってしまう事もあるのです。
上述のドクターたちは、完全にキャリアプランニングを誤りました。医局の辞め方も、辞め時も、辞める理由も、もっと別のアイディアやプランを元に遂行すれば、「こんな筈じゃなかった」という窮地に陥る事は無かったハズなのです。
◆退局→転職によるキャリア事情~プラス編~
一方で、医局を辞めるという一大イベントが「キャリアの餞」となる医師たちもいます。退局後も医局との人間関係は良好で、必要性が生じれば、相互に相談し合えるネットワークを保てているドクターたちです。
殆どの場合、医師に辞めてもらったら困る医局側と、辞職を希望する医師の間では、利害関係が対立してしまいます。あの手この手の強引な引き留め工作に遭い、恫喝・泣き脅し・脅迫めいたパワハラなどで、あらゆるレイヤーの医局員から慰留の働きかけが起きるでしょう。
しかし成功ドクターたちは…転職の理由が至極前向きであり、「医師としての成長」あるいは「医療業界全体の問題解決」に不可欠だと考えられるような客観的合理性を持たせる事で、教授と直属の上司のメンツを保つ…という大技をやってのけているのです。
◆ある若手男性医師の場合…
退職するXデーを一年後と長期で定めた彼は、綿密に計画を練り、とにかく日常で伏線を引いて行きました。「父親の体の調子が悪い」…「そろそろ結婚を考えている」…「自分は長男なのでいずれは地元に帰ろうと考えている」…「当医局が専門とする先進分野は、自分の地元には無く、実に渇望されている。」…などと、あらゆる医局員やステークホルダーに、何かにつけて語って行ったのです。
彼は転職エージェントを通じ、地元の隣県にある都市に、条件の良い転職先を見つけると、「実家に何かあった時に、夜中でも車で帰れる所にいなければならない。」「医局で学んだ先進医療を、もっと地域に活かすべき時代が来た。」…と、複数の柱で立体的な退局理由を掲げたため、大きな反対も慰留工作も無く、すんなりと円満医局が認められたそうです。
◆ある中堅男性医師の場合…
彼は医局に在籍する事で、医学博士号といくつかの専門医の資格とった今、医局にしがみ付く必要性がないと考え、退局を希望しました。その際、専門医として名高い、同じ学会にも所属する医師が勤務・経営する病院をいくつか挙げ、転職エージェントに逆指名を依頼し、求人ニーズを探ってもらったのです。
教授や直属の上司に納得してもらうだけのネームバリューがあり、現職とマーケットが全く被らない土地という二つのポイントに気を遣った結果、彼の転職は、医局でも容認されるものとなったばかりか、彼の転職が、教授と相手先を繋ぐパイプにもなったそうです。
◆ある熟練男性医師の場合…
ある熟練医師は、同県内の他市エリアで新しく建設される、東京から進出してくる新病院の、副院長候補としてヘッドハンティングを受けました。
それは、彼が医局内での出世の頭打ちを感じていたタイミングと合致したため、彼はそのオファーを受ける事にしました。そして教授や同僚や部下に転職の意志を語る際、彼はこう言ったのです。
「他市エリアとは言え、あの大病院の本県進出は、わが医局の県内での影響力に陰りを及ぼす可能性があります。ならば、この医局に半端な貢献しかできない私がここに居続けるよりも、新たな大病院内に要職として身を置いた方が、医局の発展に寄与するはずだ…」と。
彼は医局の犬にでもなると言わんばかりの勢いで、そう告げたのです。転職後の彼は、その言葉通りに医局の医師を受け容れたり、共同研究を進めるパイプ役として機能しています。
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円満な退局を実現し、医師のキャリアにダメージを与えないばかりか、可能な限りプラスに転換させるための方法は、詰まる所、たった二つしかありません。
それは、自身の病気や親の介護や出産や家業継承などの「不可抗力な事態による退局」…あるいは、「医局と利害関係が一致する理由による退局」…の何れかです。
これら二つの理由が実際の転職に付帯しているケースは少ないとは思いますが、これら二つの理由を匂わせ、納得させる演出をする事は、どんなケースに於いても充分に可能です。
医師転職の成功の掟は、「どんな敵をも作らない事」です。
あなたのドクターとしてのキャリアが、転職によってよりよき道に進んでいくよう、ぜひ、様々な医師のケーススタディを、ご参考にされて下さい。
転職医師たちの「お金」事情、本音の話
医師が転職を考える際の理由トップ3と言えは…
1:「年収に不満…収入アップを図りたい。」
2:「忙しすぎる職場に不満…時間が欲しい。」
3:「現職医業に不満…もっと遣り甲斐が欲しい。」
どの調査を見ても、概ねこの3つが上位に挙がってきます。
ドクターの転職における「お金事情」は、最大の関心事項と言っても過言ではなく、転職はお金の不満を解決する、一番手っ取り早い方法でもあるでしょう。
日経メディカルが実施した「医師の年収・転職調査2013」によると、勤務医の総計平均年収は1,477万円。これは、アルバイトを含む年収で、主たる勤務先からの平均年収は1,293万円という指標でした。
また、同調査による満足度と年収との関係を見てみると、1,400万~1,500万円付近に、満足・不満足の境界線が見え隠れしており、平均年収以上の収入を得ている医師の過半数は、「現状に満足している」と答えているようです。
あらゆる転職エージェントが「エグゼクティブ求人」などという名の下に、「高収入」の求人を並べ立て、それをエサに医師のコンタクトを待っているのには、そんな背景があります。
しかし、勤務場所を変えただけで、全ての条件が整って「驚きの高収入」かつ「楽な勤務」で「遣り甲斐がある医療」に従事できると言う、ミラクルな職場がある方が不思議です。
質の悪い転職エージェントは、そんな不思議なミラクルを、さも当たり前に、「転職マジック」として吹聴しますが、そんな医療ビジネスモデルがあるならば、どの病院も同じ事をやっている筈です。うま過ぎる話は鵜呑みにせずに、裏取りをした方が賢明です。
ドクターXの年収
「私、失敗しないので。」
…というキメ台詞が印象的な、米倉涼子が演じた『ドクターX~外科医・大門未知子~』の主人公…大門未知子は、医局に属さないフリーの敏腕外科医です。
患者さんの為にならない事は一切しない!しがらみは無視!定時で帰る!…そんな彼女の年収は、8~17時勤務で1,200万円という設定だそうです。
圧倒的な手術スキルを持つ女医の、ドラマという虚構世界での設定でさえ(当直も残業もしない彼女だからか)、医師の平均年収は下回っています。転職によって、今の職場より高い年収を得る事も出来るでしょうが、それは「転職マジック」でも何でもなく、それ相応の理由があって然るべきなのです。
それでは、質の悪い転職エージェントの口車に乗せられ、転職先の裏取りをせずに、状況を把握していない段階で転職してしまった医師たちの失敗談を見てみましょう。
◆クリニック院長募集!年収3,000万+出来高!
ある中堅ドクターの年収は、1,500万円でした。可もなく不可もなくといった現状を打破し、「勝ち組」になりたいと考えた彼は、転職を決意し、一気にセレブ医師へと駆け上がろうと考えたのです。転職エージェントに伝えたのは、「とにかく年収が高い所」「しっかりと休みがとれるところ」という2点でした。
一般家庭出身で、自らの向学が実って国立医学部に合格した彼は、医師になった今でも「セレブへの憧れや嫉妬心」を克服できていなかったのです。フェラーリやランボルギーニを所有し、ゴルフやヨットやワインに興じながら、芸能人やスポーツ選手や社長などの友人を持つ、きらびやかなセレブ医師の枠に、自分も入ってみたかったのです。
一介の一般医師が、一夜にして年収を倍に!そんな夢のような話に飛び付いた彼は、辛酸を舐める結果になりました。
彼が転職したのは、医療法人ではなく株式会社…エステ業を手広く広げる企業が、美容外科分野に進出する際の「顏」として、関係当局などに届出や申請をするために医師免許が必要だった…というのがその実でした。
彼の年収はアップしたものの、雇われ院長という名の下で、様々な責任を知らず知らずに負わされてしまっています。クリニックに集まったお金は、コンサルティングフィーという面目で、母体の株式会社に上納されています。再転職をしようにも、どうにも身動きの取れない状態で…
彼は今、「こんな仕事の為に、医者になった訳ではない。」…と、大きな後悔をしているそうです。
◆当直なし!年収1,800万!
ある若手ドクターの年収は、900万円でした。
都心で働く彼は、休みが少ない激務の毎日に別れを告げ、プライベートを充実させたいと思っていました。
若手医師という市場価値があるうちに、転職と婚活を一気に片づけてしまおうと考えたのです。医師として高給な年収を得る事は、より良い伴侶を得る必須条件だとも考えました。
そこで彼は、高給募集のあった、地方の政令指令都市の病院に転職をしたのです。年収は一気に倍の1,800万円!しかも当直なし!新しい土地で婚活三昧!…のはずでしたが…
勤務後数か月が経った頃に院長に呼び出され、「君のレベルでは、そんな高給は支払えない。今の収入を維持したいならば、当直や残業を増やしてくれないと困る。」と言い放たれたそうです。
そのドクターは、院長の言葉に従うしかなかったそうです。なぜなら、彼が一番自分自身をわかっていたからです。
「確かに自分の医業スキルは、まだまだ低く、半人前だ。」
「相場よりかなり高い給料をもらっている。」
「地方といっても大きな政令指定都市、医師というだけで有難がってくれるような市場ではない。」
…彼は今、転職前よりもハードワークな日々を送っており、「睡眠がとれたらラッキー。」というような状況だそうです。
今思えば、この病院は、最初からハードワークを強いるつもりではなかったのか?そのために、体の好い半人前の人間を雇ったのではないか?…そうとしか思えない…と、嘆いています。
◆部長職!年収2,200万!
ある中堅医師の年収は、1,200万円でした。
年収が高額で、勤務内容も比較的楽な条件(病棟管理のみ・当直は月1~2回・残業なし)だったので、他の人にこのポストを取られてはなるまいと思い、われ先に応募をし、率先して面接を受け、内定を勝ち取ったそうです。
入職後最初の2か月ほどは、提示条件のままの勤務ができていたそうですが、日が経つにつれて業務内容が膨らみ続け、今では外来診療も病棟管理も目いっぱいにやらされ、数日に一度は当直までしているそうです。
患者さんの事を考えると、全く機能していない現場を投げ出す訳にはいかないし、きちんと回っていないのは、部長職の彼自身に問題があると言われても仕方ない…と、思っているそうです。
彼らのように、高給につられた転職で失敗した例は、いくらでも聞こえてきます。転職は、年収アップのための大きな起爆剤になる事は間違いないのですが、高給には高給なりの理由があるのです。
- 高スキル人員募集のための高給提示。
- 特殊スキル人員募集のために高給提示。
- 欠員による急募のための高給提示。
- 新病棟開設による急募のために高給提示。
- 管理職募集のために高給提示。
- 離島や過疎地などでの医師確保のための高給提示。
- …etc.
しもこれらの理由以外で高給募集があった場合は、何らかの意図があると疑いにかかってみた方が無難でしょう。
ビジネスとして医業をとらえ、お金を稼ぐために必要な医師免許獲得という目的だけで、「高給募集」をしている求人はいくらでもあります。もしもそんな求人にひっかかってしまったら…
- 名義貸しに近いような状況に陥ったり…
- ひたすら処方箋を作るような業務をやらされたり…
- 後々に激務を強要するための手段であったり…
- …etc.
悪質とも言える策略にはまり、転職が失敗に終わったというだけでは済まされず、ドクターとしてのキャリアに泥が塗られる危険性も高いのです。
高給求人の全てが悪質な訳ではありませんが、医師自身が自分のスキルを鑑み、市場を鑑みた場合に、【宝くじの当たりくじが自分の所に回ってきた】…という様なラッキーは、まず無いと考えた方が良いでしょう。
全く同じスキルの医師が、ほぼ同じ責任で同じ働き方をする場合、働く病医院によって条件アップができる妥当な範囲は、現在の年収の2~3割を限度だと思った方が賢明です。
今の年収から一気に倍になる!…というような求人には、必ず裏があります。その裏が、正当な理由から来るものであれば良いのですが、過半数においてはブラックな匂いのするものだと肝に銘じ、どうしてもその高給求人に興味がある場合は、必ずしっかりと裏取り・下調べを行う事が重要です。
すべてのドクターのパートナーとなった転職エージェントが、優良かつ優秀であれば何の問題もないのですが、残念ながら、悪徳と形容されるブラック企業も少なくありません。
医師の転職は、転職エージェントに大金が入る大きなビジネスと成ります。業界には、最初から半ば騙すつもりで「高給求人」をチラつかせる輩がいるのも事実です。
「良い転職活動は、転職エージェント選択時に決まっている」…と言っても過言ではありません。全ての医師が優良エージェントと手を組み、良い転職活動ができる事を、強く願っています。
転職医師たちの「恋愛」事情、本音の話
今時の医師たちにとって、QOML(Quality of My Life/Medical staffs‘ Lifeの略語)はとても重要視されるポイントです。
医療従事者、研究者らは、こぞって自らの待遇や労働環境を含めた人生の質や、生活の質を問題にしています。
医師の転職活動においてもQOMLの確保が命題となる事が多く、「恋愛」を目的に転職を希望する医師も数多です。
「彼女になかなか会えない。」
「激務でデートの約束もできない。」
「マンネリ恋愛に蹴りをつけるために異動したい。」
「病院と家の往復だけで出逢いが無い。」
「環境を変えて、恋愛デビューしたい。」
「結婚につながる恋愛をしたい。」
一般的に、社会的地位が高く高給取りの医師は、恋愛偏差値が高いと思われがちですが…学生時代は勉学一本で、医師免許取得後は研究と激務に追われ、実際には、恋愛をするチャンスが無かったドクターは少なくありません。
恋愛チャンス獲得や恋愛成就のために転職を考えるほど、恋愛は切実な悩みの一つになっているのです。
マツコ・デラックスに「顔が性器」と評されたセクシー俳優、齊藤工が主演したドラマ…『医師たちの恋愛事情』のキャッチコピーは、「命を救う人間が、恋に落ちてはいけませんか?」…というものでした。
「このキャッチコピーは何だ?」…と思ったドクターも多いでしょう。当然ながら医師も、年齢に相応しい恋愛をして、豊かな人生を作りゆきたいと思って然るべきですし、むしろ医師はその社会的ポジション故に、恋愛を重要視している人も比較的多いと言えます。
恋愛社会学的に、ある人間が恋愛対象として注目され、思考されるチャンスは、「新しい環境に入っていった時」だと考えられています。つまり「転職」は、恋愛チャンスが最大化している時だと言っても過言ではありません。
ここでは、転職を機にした医師たちの恋愛事情、あれこれを見てみましょう。
◆転職でモテ期到来かと思ったら…
ある32歳の男性医師は、自分のスキルに一定の経験と自信を持てた事から、キャリアアップ転職を試み、成功する事ができました。
実は彼、その転職による環境の変化をフックに「恋愛がしたい」という目的もあり、入職前には髪型やファッションを変え、審美歯科にも通い、「イケメンの出来る医師」になったつもりでいたのです。
しかしそんな彼も、別に病院内で率先して恋愛をするつもりは無かったのですが、女性看護師や女性薬剤師らにやたらと笑顔で話しかけられる日々。就業後の食事の誘いや、休日のレジャーの誘いなどが舞い込み、今まで経験した事のない「モテ期が到来した」と思ったそうです。「努力してイケメンになれたからかな~。」と。
しかしそれは、その病院で密かに慣例となっている「リトマス紙」と呼ばれる適性テストだったそうで、安易に女性…しかも同僚の誘いに乗り、その上軽々しく口説いてくるような男ならば、今後重要なポストには就けないという、恐ろしいものだったそう。
幸いにも、同じく転職で入職した先輩医師にそんな噂を聞く事ができ、「あー、勘違いしないで良かったー」…と、胸をなでおろしたそうです。
◆恋愛・結婚相談所は繋がっている?
恋愛市場において、独身医師の価値は非常に高いものです。医師専用の恋愛相談所も多くあり、モデルやCAや良家の子女など、医師が望むステイタス性のある恋愛・結婚相手を紹介してくれると言うフレコミで、高額な入会料を設定しているセレブ紹介所も多数あります。
ある43歳の男性医師は、転職を機に、新たな街で新たな恋愛を見つけ、結婚へと成就させたいと、本気で考えていました。
前職の街ではどんなパーティーに出かけても、既に会った事のある女性しかいないし…恋愛・結婚相談所に行っても、一通りの美しいサクラに会わせてもらった後は、更新料でも払わない限り、あまり良い女性を紹介してもらえなくなるという事は、学習済みでした。
人生すべてを心機一転するつもりで、縁の無かった地方都市の病院に転職した彼は、新しい恋愛・結婚相談所にも入会しました。「今度こそ真面目で地に足の着いた恋愛をしたい」と思った彼は、その際、今までの相談所での経験を洗いざらい話し、「ただ美しい女性にボーっとなる年齢ではない。
サクラさんにはもううんざり。本気で結婚を考えているので、しっかりした女性を紹介して欲しい。」とお願いしたそうです。
その相談所は、二つ返事で彼の気持ちに寄り添ってくれたのですが、数か月後、彼に規約違反を言い渡し、無返金での退会を言い渡してきたそうです。
その相談所が主張する規約違反とは、彼が紹介所で紹介してもらった女性を騙して肉体関係を持って弄び、相談所に何の報告もせず、誠実な恋愛や結婚のための義務履行を怠ったとのいうものだそう。退会で済むだけでも穏便処置で、法的手段に訴える事もできると言ってきたそうです。
実は…彼が肉体関係を持った女性は、以前の街での様々な華やかなパーティー(友人の誕生パーティーや、有名ブランドのチャリティパーティー、ホテルのオープニングパーティーなど)で、何度か顔を合わせるうちにデートをし、肉体関係を持ったこともある女性だったのです。
事前に確認した彼女のプロフィールでは、彼の知っている名前とは苗字が違っていたし、髪型も違っていたから、「好みの女性だ」と思っただけで、その知人女性だとは思わなかったそう。
知らない土地の紹介所で知った顏を紹介されて「がっくり」と来た彼でしたが、初対面を装いその場を濁し、その足でノリで飲みに行き、さらにノリで肉体関係を持ったそうです。
新しい土地で入会した紹介所は、大手の系列店ではありませんでした。(本質的なセレブ向けのサービスは、ネットにバナーが出てくるようなサービスではなく、チェーン展開されていない事が多いのです。)しかしどう考えても、前の紹介所から、何らかの情報を得て、仕組まれた様な気がしてならないそうです。
これ以上大きなトラブルに巻き込まれたり、医師としての自分に悪い噂が立つ事を恐れた彼は、自分にも一定の落度がある事を認め、事の追求を諦めたそうです。
恋愛・結婚相談所…特にセレブ向けと自称している高額なサービスは、意外と業界内で横のつながりが強固にあり、ブラックリスト的なものがあるという噂も聞こえてきます。
もしもあなたが恋愛・結婚相談所などを利用するならば、転職で新しい土地に来たからと言って羽を伸ばさずに、業界に精通しているような経験を語る事もせず、蛇足は蛇足で置いておき、「誠実な恋愛・結婚をしたい」…という、本来の目的だけを語った方が無難でしょう。
医師と言う職業は、社会一般の多様な市場でステイタスがあるものです。プライベートでの下らない躓きが、医師や病院のあらぬ噂に繋がる事もよくある事ですから。
転職医師たちの「結婚」事情、本音の話
医師の結婚は、自身のプライベートな幸せだけでなく、医業における信用や出世に、大きく関わる場合もあります。
ドラマ「白い巨塔」では…唐沢寿明が演じた財前五郎の妻は華やかで社交的で野心家、江口洋介が演じた里見脩二の妻は、良妻賢母で芯が強く控えめ…という設定で描かれていました。
この設定を見ただけで、その医師が人生で何を大切にしているのか?どんな医師として生きてきていこうとしているのか?…なんとなく分かってくるのではないでしょうか?
例えば財前五郎の妻は、大学病院の妻たちの集まりにおいて抜群の社交力を発揮し、政治的とも言える立ち振る舞いで、夫の社会的地位を押し上げる事に成功しました。
例えば里見脩二の妻は、夫が研究や臨床に没頭できるように、家事や育児や雑務を一手に引き受け、帰って来ない夫に文句の一つも言わずに、ただ黙って内助の功を捧げて来ました。
ドラマの世界は極端な例だとしても、結婚がその後の医師のキャリアにも影響が及ぶ事は言うまでもありません。
妻は医師本人の鑑でもあり、その後の仕事における社交にも重要な役割を担います。
そして結婚においては、「転職」がターニングポイントになるケースも多い事を、頭に入れておいた方が良さそうです。
ここでは、転職によって左右される、医師たちの結婚事情あれこれについて、見ていきましょう。
◆ある30代独身医師の場合…
彼には、20代の頃から七年間付き合った同い年の彼女がいました。もちろん彼女に魅力があって恋に落ち、独身同士の恋愛を楽しんで来た訳ですが、彼にとって彼女は理想の恋愛相手であり、理想の結婚相手とは違っていたのです。
彼は正直、「結婚するならば、もっとメリットのある女性としたい。」と思っていました。
年齢的な事もあってか何かと結婚を迫ってくる彼女を疎ましく思った彼は、先輩医師から舞い込んできた新病院での勤務話に乗り、別の土地への転職を決めました。その仕事が、医師としてのキャリア形成に有用であったのはもちろんですが、彼女との恋愛の清算も意識しての決断でした。
実は彼、「遠距離恋愛になって、フェイドアウトをしよう」…というのが、本音だったそうです。彼の気持ちを酷いとなじる人もいるでしょうが、「どうしても別れを切り出せない」「悪者になりたくない」「でも結婚はしたくない」…という心情だったそうです。
しかしこの転職が、彼の人生を、思わぬ方向へと動かす事に…
彼女に転職を告げると、「私は絶対に付いて行く。」と言い張りました。彼女は自分の両親に「彼が転職する事になったから、一緒に行く事になる。近々結婚する事になるだろう。」と報告したらしく、すぐに彼女の家に食事に呼ばれたそうです。
学生時代から含めて七年も付き合った間柄でしたから、彼は彼女の実家に遊びに行った事も、彼女の両親に会った事もありました。彼自身は「転職と転居のご挨拶」のつもりでお邪魔したつもりだったのですが、彼女の父親に「で、結婚はいつするのか?」…と、問われた時、思わず…「はい、まだ決めていませんが、できるだけ早めに…」と、答えてしまったそうです。
自分の両親に相談する際も、「彼女とは結婚したくない」「もっと別の結婚を探したい」…という本音がどうしても言えず、「しっかり男としてケジメをつけなさい。」と言われる始末の彼。
そうして彼は、7年越しの彼女と、転職を機に結婚しました。
もともと「優柔不断」かつ「いい人でいたい性分」だった彼は、自ら決めた転職によって外堀から埋められ、結婚せざるを得ない状況になってしまったそう。
彼には彼女との結婚が、実は一番ピッタリとくる運命だったのかもしれません。しかし医師として脂が乗ってきた時期に、何の恩恵も受けない結婚をしてしまった事を、今でも残念に思う事があるそうです。
◆ある40代既婚医師の場合…
彼は都心の大病院に勤める内科医でした。結婚十七年目の妻との間に二人の子供がおり、誰が見ても幸せに見える、安定した人生を送っていました。
妻の実家は都心の人気産婦人科病院の開業医で、田舎から出てきた彼を、彼女の実家は本当に良く面倒を見てくれ、今一家が住んでいる家も、妻の実家の所有地に建てたものだそうです。
ゆくゆくは妻の兄がその産婦人科病院を継ぐ事が決まっていた事もあり、専科の違う彼は、妻の実家の後継にはアテにもされていないと考えていました。
そんな彼に、転機が訪れます。
彼の田舎の山麓では、高齢化と医師不足が深刻で、医療難民や独居老人の孤独死が問題となっている事を知ったのです。
彼は医師を志した中学生時代を思い出しました。奨学金を得られるように尽力してくれた地元の方々の顔を思い出すと、自分の進むべき場所が分かってきたそうです。町役場の斡旋もあり、彼は地元に帰り、「訪問診療」をする事を決めました。
もちろん、妻や子供の事は気になりましたが、過疎の田舎に連れて行こうとも、着いて来てくれるとも思っておらず、最初から単身赴任の覚悟で転職の話を切り出しました。
「単身赴任の提案ならば、妻も自分の決心を分かってくれる」…と、信じていたそうですが、返ってきた答えは「何言っているのよ?行くなら離婚するわよ?」…というものでした。
しかし本当に離婚されるとは、1ミリも思わなかった彼は、予定通りに田舎に帰り、山麓で巡回車に乗り、過疎地医療に尽力をしていました。たまに都会の自宅に戻った時も、当り前のように家で過ごす事が出来、妻も子供もごく普通の対応でした。
そんな日々が一年ほど過ぎた時、突然、弁護士から内容証明書が届きました。妻はもう彼との結婚生活を続ける気はなく、弁護士を通じた離婚協議をしたい…というものでした。
もちろんそんな提案を易々と受け容れられるはずもなく、一通りのもがき苦しみながら、妻と面会の上での話し合いの場も持ちました…が、三年後、協議離婚は成立しました。
妻や妻の実家にしてみれば、家族として手厚く迎え入れた彼が、家族を捨てて出て行ったという風にしか、映らなかったそうです。ゆくゆくは妻の兄と協力して、実家の産婦人科病院を運営して欲しかったとも思っていたらしいのです。
医師の正義と使命感で選んだ転職が、社会的には賞賛に値するとしても、家族にとっては迷惑な裏切り行為にしか思えない事もよくある話です。特に男性医師の場合、自分が清廉な気持ちで選択した事に対し、家族も同じように応援してくれると考えがちです。
既婚者の転職には、家族全員の人生が重く乗ってかかっています。既婚者は転職を考える際、その事を、もっと強く肝に銘じるべきでしょう。
そしてあらゆる配慮を怠らず、キャリアや家庭生活やお金の事など、全方位におけるシミュレーションを徹底し、自身の転職が、誰にどのような影響を及ぼすのか?…と、賢く検討するのです。
医師としての使命感や出世欲にかられたような場合、人…特に男性は、一つの道しか見えなくなってしまいがちです。医師としての仕事はもちろん大切ですが、自身の幸せを、家族あってのキャリアだと考えるのであれば…幸せな結婚生活を当然のものと考えず、もっと大きな目で人生を捉えてみても、良いかもしれません。
転職交差点は、人生の分かれ道である。
「転職医師たちの〇〇事情、本音の話」と題した今回のコラムでは、転職を人生そのものと捉え、キャリア・お金・恋愛・結婚に関する、様々なケーススタディを見て来ました。
転職は、キャリア形成やお金のためでもありますが、働く場所や住む場所が変われば、医師のプライベートにも大きな影響を与えるもの…つまり、プライベートな生活のためのものでもあります。
QOMLが叫ばれ、忙しすぎない職場が人気となる現代において、転職と関わるプライベートな環境にも、大きな注目が集まってきています。
私、野村龍一が、医師転職コンサルタントの使命として常日頃から言い続けている事があります。
それは…
「良い転職活動は、転職エージェント選択時に決まっている」…と言う事実です。
医師の皆さんの多くは「転職エージェントに相談すべき内容は、キャリアやお金についての事だけ」であると思っているようですが、優良な転職エージェントは、転職に関わる医師の人生全てについて相談に乗ってくれます。恋愛・結婚・子供の学校の事など、心配な事は何でも話して良いのです。
皆さんが良い転職エージェントをパートナーに選び、「キャリア・お金・恋愛や結婚」の全てにおいて、幸せな転職を実現できる事を、心から願っています。
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