その転職、収入アップに繋がりますか?
■ 記事作成日 2015/8/21 ■ 最終更新日 2017/12/5
あらゆる医師転職市場調査で、必ずや「転職理由ベスト3」に入り、トップ1に輝く事も少なくない至上の目的…それは…「収入アップ」です。
収入アップは、ドクター本人や家族にとって死活問題となる目的だけに、多くの転職エージェントのWebサイトでは、「高額求人」が大々的にクローズアップされています。目を見張るような大幅年収アップ例がケーススタディに並べられ、転職を検討しているドクターの背中を押している事でしょう。「こんなに年収が高い職場なら、転職した方が良さそうだ。」…と。
しかし、安易な転職はいけません。目先の収入アップを優先させたが為に、将来的に得られる収入を反故にしてしまうケースも多々発生しているのです。
収入面における本当の転職成功とは…
「どこで何歳位まで働くのか?」
「何歳時点でどのくらいのお金が要るのか?」…という条件を洗い出し、その総てに適合し、最も有利な職場を得る事です。
「大きくなったらお医者さんになりたい。」…と望み、
「大きくなったらお医者さんになりなさい。」…と周囲に言われてきたドクターの多くは、医業の収入が一般的に高水準で、職業として安定している事も、志望した理由の一つのはず。
…ならば、ドクターという夢や目標だった職業を得た今、お金ときちんと向き合い、可能な限り利があり、少なくとも損だけはしない転職を実現しようではありませんか?
「医術は仁術」であるのは言うまでもありません。しかし、それを体現するには、医師自身が充足している必要もあるのです。
医師転職における「収入アップ」の落とし穴
「私は転職で、年収が何百万円もアップしました!!!」
転職エージェントのサイトでは、光り輝く勲章のように、こんな言葉が躍っています。
しかしその転職は、本当に成功だったのでしょうか?冷静になって振り返る事が必要なケースもあります。
・確かに月収はアップしたけれど、年収はダウンした。
・確かに月給はアップしたけれど、月収はダウンした。
・確かに年収はアップしたけれど、退職金制度が無かった。
・確かに年収はアップしたけれど、昇給制度が無かった。
転職の成功には、収入以外にも様々な観点があるでしょう。
キャリア形成・スキルアップ・時間的余裕・良好な職場環境など、大切にするものは人それぞれで、一口に「成功」と言っても様々な意味があります。それらは個々人が主観的に納得すれば良い話で、他者のモノサシは全く無関係です。しかしながら、収入面は唯一、他者のモノサシでも概ね図れる指標です。前の収入を維持できるか?前の収入より上がったかどうか?
他の目的のために「年収ダウンも厭わない」…という特殊な例を除き、ほぼ全てのドクターは、「年収アップ」を転職の目的の一つに据えます。
しかしながら、年収アップの落とし穴は、色々な所に潜んでいます。ドクターが転職でその穴に落ちてしまわぬよう、代表的な失敗例を見てみる事にしましょう。
月収はアップしたけれど、年収はダウンした
A医師は、医局人事の転院で公立病院に勤める34歳の内科医でした。そんな彼の日常は、医師の使命とは簡単に言い捨てられない激務。残業に当直にオンコールの嵐…仕事の大切さは充分に理解していましたが、同世代の医師の年収差が出てくるこの頃、隣の芝生が青く見えて来たそうです。
「自分はやっと一人前になった若手医師。忙しく働く事は構わないけれど、同じ働くならば、条件の良い所で働きたい。」…そんな動機で転職エージェントの門戸を叩きました。
長く医局にいても、医局人事で転院する度に退職金はリセットされ、定年退職時にまとまった退職金がもらえないらしいという事は、周囲から漏れ聞こえてきましたから、20代の頃からぼんやりと、「何れは私立病院に勤務しよう。」…と考えていた事も、アクションを起こした理由の一つだったそうです。
転職エージェントのコンサルタントは、A医師の現在の月収を聞き、毎月手取りで5万円ほど収入アップする私立病院の求人を紹介してくれました。A医師の居住区では有名な病院であった事や、職場の雰囲気が良かった事(A医師は、コンサルタントの勧めで、入職前に当該私立病院のスポットアルバイトにも入っていました)、A医師とは違う医局系列の敏腕医師がいた事などから、総て納得した形で転職を決めました。
「以前と同じ程度の激務はある程度予想されるものの、収入は増えるし、将来の不安も無くなるはずだ。」…A医師はこの転職に満足していました。
しかし…入職から半年ほど後、「そういえば、冬のボーナスっていつ支給されるの?」…と、同僚に尋ねてみると…
「えっ?うちは年棒制だから、ボーナスは出ないよ。」…という、意外な答えが返ってきたのです。
ボーナスが出なければ、年収は微減するではないか?驚愕したA医師、転職エージェントに尋ねてみると、「ボーナスは無いという事は確認済だ。」という返答が。確かに書類を見ると、賞与という項目は無い。しかし、「ボーナスって普通、当り前に出る物ではないのか?」…住宅ローンのボーナス払いを抱えるA医師は、途方に暮れたという事です。
~落とし穴のポイント考~
医師が公立病院(町立・私立・県立・国立などの病院)に勤務している場合の身分は、独立行政法人などに属す、特別職の公務員になるケースが多いようです。
公務員の場合、年棒という契約はなく、月額の給与+賞与という形となります。そのためか、公立病院に勤務する医師は、給料は月給で換算した方が分かり易い方が多い傾向にあり、転職エージェントのコンサルタントにも、「で、月給の手取りはどれくらいですか?」…と、質問される方が多くボーナスや諸手当を含めた年間換算の収入確認には疎いようです。
収入は月収だけでなく、賞与や諸手当含めた年収でどれくらいなのか?いついくら支給されるのか?…を、しっかりと事前に確認しなければ、大変な事になります。
月給はアップしたけれど、月収はダウンした。
B医師は、転職経験のある39歳の整形外科医です。5年前の転職で地方の私立病院に勤務し、大幅に年収アップが出来た経験から、「転職は確実な収入アップ手法」…と認識していていました。そんなB医師、娘の中学受験を機に教育環境を考え、都会の病院にUターンにて再転職する事にしました。
転職エージェントとのやりとりも慣れたもの。月給も賞与もしっかりと確認し、望み通りの転職をしたと思っていたのですが…いざ一ケ月目の給料日翌日…妻から「なぜか振込額が以前より大分少ないんだけど。」…と、指摘が。以前より月給は増えているのだから、税金や各種保険等を天引きされても、手取り額は増えているはずだと疑問に思い、翌日、総務部長に確認してみたそうです。
…すると、天引きされていた額は、昨年の収入に対するものですから、以前の病院と変わらないものでした。何が違うかと言うと…諸手当だったのです。以前の病院は、地方の医師不足という事情を背景に、家族手当・住宅手当・地方手当という名目で、基本給に7万円ほどの諸手当が上乗せされていた事を、B医師は把握していなかったのです。
自分の基本給は把握していても、諸手当がいくらあって、税金や保険が何を基準に天引きされていて、結果として手取りがいくらなのか?…という明細事項を知らない転職希望者が、実に多いのです。B医師は、家賃の高い都会で、以前より5万円ほど少ない手取り額での生活を強いられ、娘の教育費がかさむ中、妻から避難される事態に陥っているそうです。
~落とし穴のポイント考~
医師本人が、自分の給与の明細を知らない事はよくある話です。それは妻にも言える事で、月額手取りでいくらだったか?月額手取りでいくら欲しいのか?…という事しか把握していない人が圧倒的に多いのです。
転職エージェントのコンサルタントに、給与明細を見せても良いと考えるならば、きちんとその明細を元に、転職プランを考えた方が無難です。給与明細を見せないにしても、ドクター自身が自分の給与の明細を知る事は大切です。現在の収入の実態を知らなければ、何の未来像も描けないのですから。
また一般的に、都会の病院の方が、田舎の病院よりも給与が良いと考えがちですが、医師不足の田舎町では、その対策として都会より給与を厚遇するケースも非常に目立ちます。その際、基本給に上乗せすると、他の勤務医との兼ね合いがとれなくなる事から、諸手当という形で支給されるケースが多いのです。
地方の田舎から都会への転職、また、その逆の場合など、環境が大きく変わる転職をする場合、収入明細について、より細かい注意を払う事が重要になってきます。
年収はアップしたけれど、退職金制度が無かった。
C医師は、地方都市の私立病院に勤める消化器系の内科医でした。46歳でバツイチとなった彼は、もともと元妻の地元だからという理由で勤務していた地方都市の病院を辞め、心機一転、都内の病院に転職する事にしたそうです。
妻への慰謝料と財産分与で、貯蓄の7割と、購入していたマンションは渡しました。(離婚の原因は、C医師の浮気だそうです。)
まだまだ、住宅ローンは残っています。一男一女の養育費だって必要です。C医師は、とにかくお金が必要だったのです。そこで彼は、収入アップを目的に転職活動を進め、転職エージェントの仲介で、250万円もの年収アップに成功しました。
都内の病院で忙しく働くC医師でしたが、転職から何年も後、これからの人生設計のために、退職金がどのくらい出るのか?…を、調べてみる事にしたそうです。すると…「うちは、退職金制度はありませんよ。欧米の法人のように、退職金積み立て分の費用を、毎月の給与に割り当てているんですよ。」…という、総務部長からの回答が。
「えっ?退職金ってないの?」…C医師は真っ青になりました。退職金をアテにして、財産分与や慰謝料も元妻の言い分を呑み、離婚後も比較的派手にお金を使っていて、現預金は殆ど無かったからです。
毎月の収入は、住宅ローンや養育費、自身が暮らすマンションの家賃、趣味の車などの費用で、殆ど残りません。都会の一人暮らしは何かとお金を使い、節約や貯蓄のクセもついていないC医師は、生活習慣を変えざる得なくなりました。
C医師がもう少し若ければ、再転職の上で退職金をライフマネープランに組み込む方が得策でしょう。しかし、C医師は、この時既に50歳を過ぎています。定年まで働くつもりだった病院を転職しても、充分な退職金がもらえる程の勤続はできないかもしれません。そもそも50歳を過ぎた今、現職より厚遇での転職自体、一般的に簡単な事ではないのです。
~落とし穴のポイント考~
退職金制度とは、労働基準法で定められたものではありません。退職金制度がある場合には、就業規則に明記する事が定められているだけで、退職金の支払い義務が、雇用側にある訳ではないのです。最近では年棒制をとる病院も増え、都会の私立病院では、むしろこちらのケースの方が多くなっています。年棒制を導入している法人は、退職金制度が無い所も比較的多く、「退職金が出るか否か?それはどれ程なのか?」…は、入職前に個別にしっかりと確認をしないといけないポイントなのです。
転職エージェントのコンサルタントさえ、退職金の話はスルーしてしまうケースもあります。コンサルタントも忘れがちな確認ポイントである上、契約獲得のために話を進めたいコンサルタントが、意図的にスルーする悪質なケースもあるようです。
転職する時は、退職金制度も踏まえて「その転職先で、何年働きたいか?」…を、ライフマネープランと共にしっかり考えなければ、収入アップに繋がるかどうか、結論が出せないものなのです。
年収はアップしたけれど、昇給制度が無かった。
D医師は、チェーン展開しているコンタクトショップに併設された眼科の医院長をしています。コミュニケーション能力が高く、ルックスも良い、31歳の女性医師である彼女は、多数のライバルとの転職競争を勝ち抜き、人気の職を得る事ができました。
勤務時間が短く固定化していて、都心の美しいビルに入居し、おまけに収入面も良いという三拍子揃った職は、転職エージェントのコンサルタントさえ、「競争率が高い求人ですから、D医師の面接対応次第ですね。」…と、言われた程のものでした。
転職前のD医師は、公立病院に勤務していました。眼科医の当直免除がなく、オペもあるという職場環境の激務と重圧に耐えかねた彼女は、妙齢で婚活をしたかった事情も手伝い、転職を決意したそうです。
眼科医に人気のポストを得たD医師は、婚活をしながら数年間そこで働いていましたが、35歳時点でも未婚でした。そうすると、「もしかして一生独身かも?私はこれから先、いくら稼げるのか?」…と、将来の人生設計に“お一人様コース”もシミュレーションせざるを得なくなり、昇給制度について、総務部門に尋ねてみました。
すると…「同じ仕事内容ですので、勤続による昇給はありません。」…という、予想もしなかった回答が。確かに毎日同じ仕事の繰り返しです。大変な事など、何もありません。でも、もしも定年まで働くとなった場合、このままの収入だと張り合いがありません。
転職エージェントに尋ねてみると、「このような職種は昇給が無いケースも多い。」…との回答が。コンタクトはファッション性も問われる商売なので、若く美しくコミュニケーション能力の高い人間を雇い、その人間が年を取ったら、別の適任者にシフトしたいというのが、多くのコンタクト併設眼科の本音なのだとか。「そんな事、最初に言ってよ~。」と、コンサルタントに詰め寄ったところ、「D医師は、結婚するまでの数年しか働くつもりがないので、婚活に適した職場を探したいと言っていましたよ。」…と、ヒアリングシートを元に返答されました。
確かに…数年前のD医師は、婚活のために転職するつもりで、長く勤めるつもりは無かったのです。「とにかく、勤務時間が固定していて、仕事が楽で、街にあって、年収が高めなところ。」…という、オーダーをした覚えがあります。自身の都合で事情が変わったとは言え、もっと詳しく勤務条件を確認すべきだった…と、後悔しているD医師。しかし残念ながら、後の祭りではあります。
~落とし穴のポイント考~
よりよい人材を得るために高給設定していて、昇給制度が無い所もあります。クリニックの医院長職などは、その傾向が顕著です。D医師の場合、事前に条件を納得した上での入職だったようですが、ドクター自身のプライベートの状況が変わる事もあり得ます。収入の良し悪しや、転職の成功・失敗は、ドクター自身のライフプランとマネープランを突合しなければ、語れないものなのです。
医師は消費傾向が高い職業!?
医師は果たして本当に高給取りなのか?
世間一般の常識では、「医師は高給取り」だと思われています。確かに、一般サラリーマンの平均年収よりは、倍以上の平均年収を誇る医業ですが、果たして高給取りか?…と言われると、疑問を呈する医師も多いと思います。
マスコミやIT業界のエグゼクティブなどは、医師より高給取りのケースが目立ちますし、起業してある程度の小さな成功を収めているオーナー社長ならば、業種を問わず、一般の医師の何倍もの収入を得ています。
さらに勤務医の場合、当直や残業やオンコール、救急対応やら何やらで、一般のサラリーマンでは考えられない激務を強いられています。しかも、医師になるために難関の医学部を突破し、高額な学費を費やして6年間必死で勉強し続け、医師免許取得後は、これまた激務に耐えながらの研修医生活を経て、それから何年も医療現場で酷使されながら、やっと一人前になった訳です。ドクターが費やしてきた時間とお金と労力を考えると、決して高給取りとは言えないケースが多いと考えられます。
しかしながら、世間の目では「高給取り」というイメージがつきまといます。車のショールームに出かけても、マンションのモデルルームに出かけても、担当営業からは「上客扱い」を受ける事が多いでしょう。
ドクター自身も、「高い収入を得るために、医者になった。」…という人や、「高い収入を得られるから、医者になりなさい。」…と、両親や先生に勧められた経験のある人も多いはずです。そんなドクターにとっては、実は、「お金が貯まりにくい傾向」にある職業なのです。
医師は消費傾向が非常に高い人が多い職業
正直言って、1,000万円~2,000万円程度の年収ならば、医師でなくとももっと楽をして就業する方法は、いくらでもあるでしょう。このコラムを読んでいただいている医師の殆どは勤務医でしょうから、相当のエグゼクティブ医師や、親が開業医の医師でもない限り、それほどセレブな生活が出来る訳ではないハズです。
しかし、世間は医師を高給取りだと思う。
そして、医師自身も、医師としての体裁を整えたいと思う。
そんな考え方が一般化し、医師は非常に消費傾向の高い職業となっているのです。(医師のみならず、弁護士などの知的ゴールドライセンシー職の人々は、どんな調査でも消費傾向の強い結果が見られています。)ドクター自身も、医者になる夢の先=高給取りという夢を体現しようとし、「高給取りに見える体裁」に、知力と財力を尽くしてしまうのです。
高級外国車の保有率も、子息令嬢の私立学校進学率も、医師の家庭はダントツに高くなっています。
億万長者レベルの本当のお金持ちが好んでエコカーを選択している時代でも、医師はベンツやBMWはもちろん、フェラーリやランボルギーニなどを所有しようとする、高級車志向が非常に強いのです。
ゴルフ場の会員権も、別荘地の分譲も、タワーマンションのペントハウスも、販売ターゲットの上位には医師層が上がり、実際のオーナー内訳も、医師がダントツ一位となっているのはよくある話。
「お金持ちと、お金持ちに見える人は、似て非なり。」…という言葉通り、それなりに多めの収入を得ている医師でも、それほど多くのの財産を持っている人は少ないのです。医師で億万長者になろうとするならば、開業して成功するか、タレント活動などをして成功するなど、一般の医業とは別の、経営能力やタレント性を開花できたケースしか、現実的ではないでしょう。
しかし、小金持ちにも関わらず、お金持ちに見えてしまう医師。そのイメージを保とうと、お金持ちに見られたいと願い、お金持ち風の消費をしてしまうという訳です。
もしもドクターが、高い専門性を誇ったり、開業や執筆やタレント業などで成功したスペシャル医師でない限り…ライフマネープランを考える際は、この「お金持ちに見える医師」という世間体と、どうつきあっていくか?…という結論を、自ら出しておく事が必須前提項目になります。
消費傾向を自覚したライフマネープランの重要性
多くのドクターは、「医師の消費傾向」という問題と対峙し、ライフマネープランの方向性をすんなりと決められないでいるでしょう。
「エコカーに乗るのが一番カッコイイ!」…と、素直に言えるタイプのドクターは良いのですが、一般的にそんな人は、経済的コンプレックスの全くない家庭に育った人か、高額消費をし尽くした人か、ナチュラリストを自称するライフスタイルの人ぐらいです。
医者だって人の子です。徹底した努力を積み重ね、晴れてドクターになった今…「いい車に乗りたい」「いい家に住みたい」「華やかな友達が欲しい」「一流ワインのための本格ワインセラーを誂えたい」「ヨットを所有したい」「別荘を所有したい」「とにかく異性にモテたい!」…etc.どんなに人に揶揄されようと、消費に走ってもいいのです。
しかし、問題はその先です。
「結婚をするのか?」「子供を持つのか?」「家を持つのか?」「子供にどんな教育を施したいのか?」「趣味や夢はあるのか?」
そんなライフプランによって、ワークプランが変わります。
「勤務医になるのか?」「開業医になるのか?」「フリーランス医になるのか?」「どこで何歳まで働くのか?」「月給制なのか?」「年棒制なのか?」「諸手当はあるのか?」「退職金はあるのか?」「税金対策はどうするのか?」「何歳まで医業を続けるのか?」
そんなワークプランによって、マネープランが変わってきます。
そしてその時々に、ドクター自身の消費欲や消費傾向と折り合いをつけられるだけの準備が必要なのです。
お金持ちになりたいのか?
お金持ちに見える小金持ちになりたいのか?
スーパーリッチ層として名を馳せたいのか?
この難題は、ドクターのライフマネープランにとって、究極の選択かもしれません。また、この選択により、ドクター自身の仕事の流儀が、大幅に変わると言っても過言ではありません。
~まとめ~
・一般医師は、無条件にお金持ちとは言い切れない。
・医師は消費傾向が非常に高い職業である。
・高い消費傾向と折り合いをつけるライフマネープランが重要。
・スーパーリッチ層になるには、医業以外のスキルも必要。
転職活動の際は、目先の月収や年収だけでなく、人生という長い時間軸を鑑みた、ライフマネープランの実行が重要なのです。
ライフマネープラン上最大の出費…「教育費」
家・車・趣味…etc.医師の一般的な収入があれば、自分自身の暮らしをある程度充足させる事ができるでしょう。ある程度華やかな人付き合いも可能でしょうし、小さな贅沢ならばいくらでもできます。
しかし、扶養家族がいる場合はどうでしょうか?妻や子供…特に子供の教育費という観点は、大きな負担となるものです。
ある調査では、医師は自分の子供に、高学歴を望む傾向が強いという結果が出ています。ドクター自身の周りを見ても、有名幼稚園から有名小学校に通う子供が多いのではないでしょうか?そして医師の多くは(特に開業医の家庭では)、子供に医師になって欲しいと望む傾向が強いと言えます。
国公立大の医学部に進学させた場合は、6年間で400万円程度の授業料で済みますが、私大の場合は5,000万円程度必要な場合もあります。それらに加え、下宿先の家賃や光熱費、生活費に教材費は必須です。私大に行った場合は特に、周囲は裕福な子息令嬢ばかりですから、サークルや車などに、それ相応のお金を使ってやらなければいけないかもしれません。
医学部に進学させた親の負担は、6年間平均で3,300万円程度(自宅外生)だと言われており、授業料が高額な私大に進学した場合、1億円以上費やしてしまう事もあるようです。
もちろん、難関医学部に進学させるには、それ相応の教育を幼少期から絶え間なく続ける必要があります。私学の場合の授業料はもちろん、塾や家庭教師の費用、バレエや水泳などの習い事の費用などは、一子当たり、毎年数百万円に上る事でしょう。
子供の教育費を年齢と共に計画しておく必要性
子供のいる医師、特に医学部に進学させようと願う医師ならば、勤務医の収入の中から、あるいは開業当初から、子供の年齢に合わせた貯蓄目標金額を立て、コツコツと教育費を蓄え続けなければなりません。
子供が複数人いる場合、末っ子が一人前になるまでの膨大な教育費を、何十年に渡って安定供給できる経済力を持つ必要があります。そういったライフマネープランを綿密に立てようとすると、自ずとドクター自身の理想的な働き方が見えてきます。
勤務医がいいのか?開業医がいいのか?どのタイミングで、どんなキャリアチェンジをしていき、どの程度の収入を見込む事ができるのか?…「教育費」という必然性があれば、転職を契機としたマネープランにも、至極真剣に取り組めるはずです。
前述の失敗例のような事態を避け、諸手当や昇給制度、退職金制度などについてもしっかりと確認し、ドクター自身に利のある契約ができるよう、自ら働きかける事ができるでしょう。
子供の教育のために「転職する」という医師
医師が「子供の教育」を目的に転職するという話は珍しくありません。特に子供を医師にさせたい方や、高学歴を望む方は、非常に真剣に、人生の至上問題のように、教育問題を捉えます。
そんな時ポイントになるのは、「良い学校や進学塾がある都市」である事と、やはり「収入アップ」です。子供を医師にさせるためには、ドクター自身にも相当な覚悟が必要。それはもちろん、簡単な事ではありません。費用面だけではなく、時間的・労力的な負担も大きなものです。学校や塾や習い事などへの送り迎えはもちろん、朝晩の自宅学習に付き合ったり、指導する事もあるでしょう。
子供に一流の教育を施そうと思うならば…居住環境・教育資金・時間的ゆとりの三拍子が揃わなければなりません。教育熱心な医師家庭の場合、転職は、夢の三拍子を叶えるための、大切な手段となっているようです。
保険を活用するライフマネープラン
多くの医師には、末っ子が一人前になるまで、一家の大黒柱としての責任が付きまといます。教育資金まで考慮した死亡保障額は、億単位の資金を生命保険等も駆使して準備しておく必要があります。その保険の一部を終身保険のような貯蓄性のある保険でまかない、子供が成長し、死亡保障額が少なくなってきた時期に取り崩して教育資金に充てるなど、保険を活用した教育資金の作り方もあるでしょう。
自分のためのライフマネープラン…「老後資金」
教育資金と共に大きな支出が予想され、綿密なライフマネープランが必要になるのが、「老後資金」です。
医師の場合、心身共に健康ならば、比較的長く就業し続ける事はできます。定年後に健診などのアルバイトに従事する医師も多いでしょう。開業医の場合、自分で定年タイミングを選択できますので、その気になれば80歳でも収入を得る事ができます。
サラリーマンなどと比べ、比較的長期に渡って収入を得る事ができる医師ですが、一つだけ、若いうちから充分に注意しなければならないポイントがあります。それは「退職金」についてです。
特に勤務医には、若いうちからきちんと認識していて欲しいポイントです。退職金の有無や制度について、働く医師本人がきちんと把握していなければ、ライフマネープランを語る事はできません。
退職金…医局に属する勤務医は、特に注意!
退職金の計算式は、【退職時の基本給】×【勤続年数】×【所定の給付係数】となります。ご存知の通り、医局に属する医師は、医局人事で転院する度に、退職金がリセットされます。医局の指示で転院したとしても、医療法人や独立行政法人などにその都度入職をしている形ですから、【勤続年数】というポイントが、加算されていかないという訳です。
しかも驚く事に、敢えて「ご存知の通り」と前置きした前述は、「ご存知の通りでない」事も、非常に多いのです。ずっと医局付きの医師が、中年を過ぎた時点で退職金の有無を知らない事も多いようなのです。
退職金を目的とした転職
一人前になった30代半ば以降の医師が、退職金を受け取る事を目的に、転職を図るケースも多々あります。医局付きの平医師が退職する年齢になっても、まとまった退職金は期待できません。また、一般的な医療法人では、退職金制度を設けていないところも多々あります。「老後の資金」に退職金を充てたいドクターは、退職金をもらえる職場へ早いうちに転職した方が得策なのです。
まとまった退職金を受け取るには、最低でも10年の勤続は必要ですし、できれば20年以上、可能であれば給付率の係数が天井近くになる25年以上の勤続年数が理想的です。退職金を目的としたライフマネープランで転職する場合、定年退職年齢から逆算すると、どうしても30代半ば~40代前半頃までの転職が望ましいと言えるでしょう。
退職金を目的とした転職でなくとも、退職金の有無や、退職金制度について、入職前に細かくチェックする事は必須事項です。しかし、転職エージェントが隆盛し、転職が比較的簡単になった今、退職金制度について確認無きまま、目先の収入アップだけで転職する医師が非常に多いのが現状です。
ライフマネープランを立て、納得した上で期間を定め、退職金制度のない高給求人の職を得る事は良い事です。しかし、長く就業し、定年まで働こうとしている職に、退職金制度が無かった事を後から知ったならば…それは、悲劇としか言いようがありません。
どのような場合でも、転職活動の際は、必ず入職前に退職金制度を確認して下さい。それは、長期に渡るライフマネープランの締めくくりのようなものです。退職金を目的とした転職の場合は、必ずその旨を転職エージェントに伝え、結果的に長期的に得する職場をじっくり探してもらいましょう。
前項でも触れましたが、退職金制度は、労働基準法で決められたものではありません。年棒制などが増えてきた今、退職金を定めていない医療法人なども少なくありません。まとまった退職金を受け取らないならば、相当の自助努力による老後資金の調達が不可欠となるでしょう。
医師は、自助努力による老後資金調達が不可欠
公立病院の勤務医なら「共済年金」、医療法人の勤務医ならば「厚生年金」に加入していますが、医師には、大企業のような「企業年金」はありません。
つまり、三階建ての年金は、はなから期待できません。勤務医は、老後資金に対する自助努力が非常に必要な職業です。退職金を確認したり、保険を活用するなどし、若いうちから自助努力を怠らない事が、ゆとりある幸せな老後の必須条件となります。
開業医の場合「国民年金」に加入する訳ですが、国が中小企業向けの退職金制度として用意した「小規模企業共済」にも加入でき、月額7万円まで掛ける事ができます。また、「国民年金基金」に加入する事で、さらに月額7万円程度を掛ける事もできます。これらの掛け金は、税務上所得控除され、節税にも繋がります。
また、医療法人を設けている医師の場合、たとえ一人医師医療法人だとしても、税引き後に内部留保していた資金を、給与よりもはるかに低い税率で、役員退職金として個人に移転する事ができます。
しかしこれらの方策も、ライフマネープランを立てた上で、自ら契約を遂行しなければ、老後資金形成には繋がりません。開業医は老後資金調達方法が多様にあるものの、その資金を得るための潤沢な経営や、必要な契約を怠らないという、自助努力が必須となります。
医師は就業形態が複雑なうえ、医局人事で何度も転院したり、転職エージェントを通じた転職が日常的であったり、勤務医から開業医になったりと、様々な就業形態を渡り歩くケースが多い職業です。そのため、常にライフマネープランを頭に置き、老後資金の有り方をしっかりと考え、自助努力を続けなければなりません。
医師とは、手放しで老後資金が何とかなる職業ではありません。それを常に意識し、勤務医であっても、開業医であっても、フリーランス医であっても、老後資金までを見据えたライフマネープランが非常に重要なのです。
医師のライフマネープランの重要性
医師という職業は、一般のサラリーマンや公務員などに比べ、非常に綿密なライフマネープランが望まれる立場にあると言えるでしょう。
一人前になるのに時間とお金を要する職業ですし、「医師」というだけで、世間からの「金持ちバイアス」がかかります。その体裁とどう付き合うか?…という、マインド的な問題に加え、医局制度・転職回数・退職金制度・開業するか否か?など、ライフマネープランを考えなければならない局面が非常に多いのです。
転職は、ライフマネープランを考える良いきっかけですが、そのプランが甘いまま、安易に目先の収入アップに気を取られ、後に大変な事態に陥る医師転職事案が多発しています。
早急な転職の場合でも、収入アップを目指した転職の場合でも、本来ならば転職エージェントのコンサルタントが、全方位的に契約条件チェックをする必要がありますが、実際はそれほど綿密に行われているとは言い切れません。
私、野村龍一が、医師転職コンサルタントの立場から、口を酸っぱくして言っている事があります。それは…良い転職は、転職エージェント選択時に決まっている…という事実です。
ドクターがより良い転職を実現できるよう、当研究所がお勧めする優良なエージェントへのコンタクトを、心からお勧めします。
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