週刊新潮2015年2月5日号より
2014年3月7日号の週刊新潮(新潮社)では寝たきりを招く「サルコペニア」にならない最新ガイドをテーマに記事が掲載されていました。以下は記事内容の要約ですので、記事を見落とした方などはチェックしてみてください。
※画像は「週刊新潮」ウェブサイトより http://www.shinchosha.co.jp/shukanshincho/
Overview
今回の週刊新潮では、寝たきりにつながるという「サルコペニア症状」にならないための予防法について、医療ジャーナリストの蒲谷茂氏による記事が掲載されています。
大きな病気にならなくとも、加齢にともなって筋肉が減少する「サルコペニア症状」とはどういったものなのか?蒲谷氏は、「日光浴」「速歩ウォーキング」「蜂蜜」をキーワードに上げ、丁寧な予防法記事を仕上げています。
脳卒中にかかっていないのに寝たきりになる
寝たきりといえば「脳卒中の後遺症」だったが、脳卒中とは無関係に寝たきりになる現象が医学会で注目を浴びているという。加齢によって起きる「サルコペニア」という症状で、加齢性筋肉減少症と訳される。多くの場合、男性で27.3%、女性で22.0%未満に前身の筋肉が現象すれば、サルコペニアであると診断される。
近年、日本整形外科学会の提唱でよく聞かれるようになった「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」への第一歩が「サルコペニア」であると、蒲谷氏は言う。「ロコモ」は筋肉のみならず、骨、関節、靭帯など運動器全般の障害によって寝たきりリスクが高まる状態のことだ。
2014年の日本骨粗しょう症学会による研究報告
注目を浴びた研究報告がある。寝たきり患者のうち、どのくらいの割合の人がサルコペニアを罹患しているかという、2014年骨粗しょう症学会において、名古屋大学医学部整形外科の飛田哲郎医師が研究にあたった内容だ。
それによると、ある入寮介護施設に入居している寝たきり老人のうち、実に93%の人がサルコペニアに該当することがわかったというのだ。しかも、サルコペニア患者のうち、骨粗しょう症にも罹患している方は96%にも登るという。サルコペニアによって筋肉が弱まり、骨も弱くなって骨折をした結果、寝たきりになってしまうという連鎖仮説が成り立つわけだ。
横断歩道、きちんと渡れてますか?
信州大学大学院医学研究科の能勢博教授(疾患予防医科学スポーツ医学講座)によると、人間の筋力は30代以降、10年毎に5~10%ずつ衰えていくという。
サルコペニアの厄介な点は、高血圧、糖尿病、肥満、心臓病、脳卒中、癌にも関連する点だ。
サルコペニア症状を未然に察知する方法
記事によると、健康診断などで行われる握力測定によって、男性25キロ、女性20キロ未満の結果が出てしまうと、要注意であるという。また、歩く速度が1秒間に1メートル以上の早さ(80歳以上の場合)ならば問題がない。
横断歩道というものは概ね1秒間に1メートル歩いて渡るように設計されているという。信号が変わるのと同時に歩き始め他にもかかわらず、中途で信号が点滅してしまう(程遅いスピードでしか歩けない)場合、サルコペニアが始まっている可能性があるのだそうだ。
また、片足立ちをして、そのままの姿勢で靴下が履けるかどうかを試してみることを記事では奨めている。バランスを崩したりしてしまい、片足立ち動作がうまくできない場合、サルコペニアの進行が疑われるそうだ。
速足、牛乳、そして、蜂蜜
前述の能勢教授によると、ウォーキングだけでサルコペニアは防げないという。1万歩いても、筋肉の増強にはつながらないからだ。
記事内で能勢教授が代わりに奨めるのは、1日15分の全体力7割を使った運動。息が切れるような、ややきつめな運動が該当するという。例えば「速歩ウォーキング」だ。15分がきつければ、朝昼晩それぞれ5分ずつ行うだけでもいい。通勤や買い物時に、速歩ウォーキングをできるだけ実践してみるのはどうだろう。
更に、スクワットなどの筋力負荷を取り入れた「レジスタンストレーニング」が効果的だと能勢教授は言う。
運動と栄養その関係
能勢教授曰く、「速歩ウォーキングを行った後、牛乳(乳タンパク質)と蜂蜜やヨーグルト(糖分)を摂取すること。それも1時間以内に。それで、運動で傷んだ筋肉組織が補修され、筋力が増強します」とのこと。
タンパク質をつくるアミノ酸は多数あれど、特に「ロイシン」と呼べる物質は筋肉を修復、増強される働きをしている。ロイシンを多く含むのが、乳製品に多く含まれているといわれる「カゼイン」なのだ。
日光浴でビタミンDを
タンパク質以外にも、ビタミンDは骨粗しょう症予防に欠かせない、と前出の飛田医師は指摘する。高齢者施設の79.3%の女性が、ビタミンD不足に陥っているそうだ。
ビタミンDを多く含む食品は、きくらげ、鰹の塩辛、あんこうの肝など。それに加え、日光浴をすることで、体内でビタミンDが合成されるのだという。特に、冬場はしっかりと積極的に日光にあたることを、記事では薦めている。
更に、ビタミンB6を摂取することで、アミノ酸を創りだして筋肉も増強されるそうだ(ビタミンB6は、にんにく、マグロ、牛レバーなどに多く含まれている)。
まずは体を動かすことが大事
このように、速歩ウォーキングをしながら栄養に留意することで、サルコペニアの予防が可能になるそうだ。もし、あなたの体調が悪く、外出が難しいような場合でも、家の中でも構わないので、ゆっくり10メートル程度でも毎日歩き続けることで、1週間もすれば筋肉がつきはじめる。補助を受けてのプール内運動も効果的ですよ、と能勢教授。
サルコペニア症状に恐怖するだけでなく、まずは自ら体を動かし、加齢で衰えていく筋肉を意識的に増強することに務めることが大事なのだろう。
より詳しい情報については、週刊新潮本誌を実際にお買い求めになった上でご確認下さい。
週刊新潮2015年2月5日号「寝たきりを招く「サルコペニア」にならない最新ガイド」より引用および要約
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