安心2016年4月号より
2016年4月号の安心(マキノ出版)ではめまい メニエール病は自分で治せる 名医4人が伝授!最強療法をテーマに記事が掲載されていました。以下は記事内容の要約ですので、記事を見落とした方などはチェックしてみてください。
※画像は「安心」ウェブサイトより http://www.makino-g.jp/anshin/
Overview
地面がフワフワする、立っていられない…生活できないほどつらいのに、なかなかその苦しみは理解されないと多くのかたが悩んでいる「めまい」について、今回の「安心」では特集しています。
「自宅でできる」めまい対策を総力特集しているとのこと。効果は抜群、ぜひお試しくださいとしているが、果たして…?
安心なめまいと、危険なめまい
ぐらぐら回る「回転性」のめまいか、ふわふわする「浮動性」のめまいか…?
めまいの原因は、耳や脳、心臓の病気、頚椎(首の骨)の変化、動脈硬化など全身にわたる。
また、ストレス、寝不足、毛染め、化学物質など、現代人の生活環境の中に、めまいの引き金となる要因もあるようだ。その多くは、大きな心配はいらないものだが、「なかには脳出血や脳梗塞など、生命に関わる重篤な病気が隠れている、危険なめまいもあります」と話すのは、埼玉県立小児医療センター耳鼻咽喉科副部長、目白大学教授を経て現在は川越耳科学研究所クリニック院長を務める坂田英明氏。
危険なめまいなのかどうかは、めまいの現われ方である程度推し量ることができるとのこと。
まず、めまいのタイプは大きく分けて二つのタイプがあると坂田院長は続ける。
ひとつは「回転性のめまい」。自分や周囲のものがぐるぐると激しく回っているように見えるめまい。激しい症状のため、立つ、歩くなどの動作が困難になったり、吐き気や耳鳴りが起こったりする。
しかし、回転性のめまいのほとんどは、内耳に原因があって起こるもので、生命の危険はない、安心なめまいのようだ。
ふたつめは「浮動性のめまい」。
体がふわふわし足元がふらふらして雲の上を歩いているように感じられるめまい。これは内耳の異常のほか、脳の病気でも起こるようだ。
めまいに加え、激しい頭痛、手足のしびれやマヒ、ろれつが回らないなどの病状を伴う場合、脳の病気が疑われる。生命に関わる危険なめまいなので、脳神経外科や神経内科を至急受診してくださいと坂田院長は促している。
前述のようにめまいは耳からくるものと脳からくるものがある。圧倒的に多いのは耳からくるもので、耳の奥にある内耳には、蝸牛、前庭、耳石器、三半規管があるが、これら内耳の器官のどこかに障害が起きると、平衡感覚が乱されめまいが起こる。
代表的なものに、回転性のめまいが起こるメニエール病、良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎などがあるとしている。
原因は耳や脳の異常だけでなく、スマホ使用からくる「ストレートネック」にも?
首からくるめまいも見逃せないようだ。
「いま、スマートフォンなどを長時間見るなどして、うつむき姿勢が続き、頚椎のカーブが失われた『ストレートネック』になっている人が増えています」と坂田院長は指摘。
すると、頚椎内部の椎骨動脈が圧迫され、平衡感覚を保っている脳幹や小脳への血流が減少し、椎骨脳底動脈循環不全と呼ばれる、フワフワするめまいが起こる。
加齢などにより椎骨動脈の動脈硬化が進行した場合も、同様のめまいを引き起こすようだ。
このスマートフォンの長時間使用のように、めまいの発症には生活習慣病やストレス、睡眠不足なども密接に関わっている。そのため、生活習慣や食事を見直し、リスクファクターを減らしてめまいを改善することが大切としている。
急にめまいが起こったら…?坂田院長が教える対処法はこの5つ。
- めまいがしない姿勢をとる
- 衣服をゆるめる
- 目は閉じないで一点を見る
- 治療中の人は、吐き気止めなどの頓服を服用する
- 風通しのいいところで休む。
念のため検査、治療を受ける場合にはまず総合病院へ。症状から適切な診療科がわかる。脳などに異常がないならば、耳鼻咽喉科を受診することになるが、、めまいの専門家がいる「めまい外来」か、日本めまい平衡医学会が認定した「めまい相談医」を受診すると良い、としている。
めまいは自力で治せる!小脳を鍛える「めまいリハビリ」
誌面では、横浜市立みなと赤十字病院・耳鼻咽喉科、新井基洋部長の勧める「めまいリハビリ」について特集している。
自身も日本めまい平衡医学会専門会員である新井部長は、薬物治療に限界を感じ、めまいのリハビリに力を入れることに。以降、20年間で、入院治療では9,000人、外来では20万人を超える患者がめまいリハビリでめまいを克服したと説明する。
リハビリでめまいを治す4つの簡単な方法
4つの方法によるめまいリハビリが図で紹介されている。どれも、自分でできる、簡単な運動だ。
左手の人差し指を顎に当て頭を動かさないようにし、右腕を肩の高さで前方に伸ばし親指を立て、左右にゆっくり動かし、目で追いながら10往復行う「ゆっくり横」。
右腕を正面に伸ばし親指を立て、目線は親指に固定したまま振り返るように頭を左右に10往復回す「振り返る」。
両手を肩の高さで正面に伸ばし、目を開けたまま50回足踏みし、次に目を閉じて同様に50回足踏みする「足踏み」。
テーブルやイスなどに片手をつき、目を開けたまま片方の足を床から10センチほど30秒間上げることを左右ともに行う「片足立ち」。
「めまいに悩む患者さんは安静を心がけがちですが、めまいは寝ていては治りません」と語る新井部長。ではなぜ、リハビリがめまいの改善に有効なのか?その答は「小脳」が握っているようだ。
平衡感覚は、目(視覚)、足の裏(深部感覚刺激)、耳(前庭器)の3ヶ所から集まるバランスに関する情報を、小脳が集約し、それを大脳が統括して全身に指令を出すことで保たれている。めまいの原因で多いのが、耳の奥の内耳にある前庭器の障害。
この危機的な状況に対応するのが小脳。このメカニズムを、新井部長は双発プロペラ機に例えているから面白い。
「めまいは片方のプロペラが故障し、バランスが崩れて迷走している状態です。
このようなアクシデントに見舞われても、日々訓練を重ねているパイロットなら、機体を調整し、バランスを取り戻すことができます。このパイロットが小脳です」
パイロットが毎日訓練をして操縦技術を高めるように、毎日めまいリハビリを行うことで、小脳は片側の前庭器の障害をリカバーできるようになる、と説明している。
良性発作性頭位めまい症は寝返り運動で治す
続いて、めまいの約半数にあたる良性発作性頭位めまい症を、自分である程度改善できるとする、聖マリアンヌ医科大学・肥塚泉教授の記事を誌面では紹介している。
良性発作性頭位めまい症とは
周囲がぐるぐる回っている回転性、もしくは頭や体がグラグラする動揺性のめまいが特徴的な良性発作性頭位めまい症。女性に多く見られ、患者数は男性の4〜5倍とのデータもあるようだ。
サッカー元日本代表の澤穂希さんがかかった病気として記憶している人も多いはず。頭部に衝撃を受けやすいスポーツで発症する例もあるが、運動不足にも多い病気であるという。
内耳の耳石器には、耳石と呼ばれる小さな石がある。
その耳石は、老化や頭部への衝撃ではがれ落ちることがある。このはがれ落ちた石が、三半規管に入り込むのが良性発作性頭位めまい症の原因だと説明する。
「良性発作性頭位めまい症が中高年女性に多いのは、骨粗しょう症と同様、ホルモンのバランスの乱れによって耳石がもろく、はがれやすくなるためでしょう。ただ、耳石が三半規管に入り込んでも、体(頭)を動かしていれば自然と砕け散り、リンパ液の流れを大きく乱すことはありません。しかし、運動不足では、耳石が砕ける機会がありません。砕けた耳石が一箇所に集まり、大きな塊になってしまいます」
なるほど、それで、前述の良性発作性頭位めまい症になる人の傾向の理由がわかる。
頭を動かし物理的に耳石を取り除く
良性発作性頭位めまい症に有効なのは「エブレイ法」だと肥塚教授は続ける。
エブレイ法とは、めまいのときに生じる眼振(意思とは無関係に起こる眼球の揺れ)を確認しながら、医師が患者の頭を動かすことで、三半規管に入った耳石を物理的に取り除く方法だという。
ただ、エブレイ法は医師の手で頭を動かすため、患者ひとりでは行うことができない。
「そこでお勧めしたいのが、私どもが考案した寝返り運動です」と肥塚教授は語る。
首に痛みがない人は、仰向けに寝て天井を見て10秒数え、頭を左側に傾け10秒数える。再び仰向けに寝て天井を見て10秒数え、今度は頭を右側に傾け10秒数える。
首に痛みのある人は、前述とほぼ同じだが、頭を傾けるのではなく、体ごと傾ける。
いずれも、1回につき10往復行う。1日2回、起床時と就寝時に行うとよいとしている。
今回のめまいに関する特集では、自分でもできる改善法、を主眼に、その傾向、原因と対策について紹介されていた。特に、症例の多い中高年女性には嬉しい特集となっている。
自律神経の乱れからくるメニエール病…呼吸法で改善
この後誌面では、メニエール病の患者は呼吸が浅く、腹式呼吸を心がけることでめいまいが抑えられる、とするJCHO東京新宿メディカルセンター・石井正則耳鼻咽喉科診療部長の記事を掲載している。詳しくは誌面(「安心」2016年4月号)を購入の上、詳細を確かめていただきたい。
雑誌「安心」(マキノ出版)2016年4月号「めまい メニエール病は自分で治せる 名医4人が伝授!最強療法」より引用および要約
この記事を書いた人
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