週刊現代2015年10月31日号より
2015年10月31日号の週刊現代(講談社)では本当に手術がうまいのは誰か、肩書ではわからない 医者の「階級」と「実力」の関係をテーマに記事が掲載されていました。以下は記事内容の要約ですので、記事を見落とした方などはチェックしてみてください。
※画像は「週刊現代」ウェブサイトより http://wgen.kodansha.ne.jp/
Overview
今回の週刊現代では、医師選びや病院選びに悩んでいる患者向け記事として、主に大学病院勤務医師の階級(肩書)と実際の手技レベルとの相関関係を取材しています。
雑誌媒体ターゲット層が50代以上である一般誌としては、大学医局の構造をわかりやすく解説をするという割とよく見る手法ですが、東京大学附属病院の医師と院内ヒエラルキーを実名で図解公表している点が新しいですね。今後の(東大への)取材に影響はないのでしょうか?随分と思い切ったものです。
教授が自身の手術力量に自信を持っていない
50代外科医ベテラン教授の手技力は・・・
関西の国立大学付属病院に勤める麻酔科医師によると、ベテラン外科教授による開腹手術立会の際、明らかに教授が自身の手術に自信を持っていないことを感じ取ったという。
この手術は患者側から教授を指名して執刀を迎えたそうだが、元々この外科教授は研究畑中心で臨床を得意としていないし、当然、執刀数も多くなかった。今回は病院の評判を気にしてのオペであり、実際は、その手術の殆どを別の若い医師に行わせて、殆ど横で見ているだったという。
病院事情に患者は、医者の階級=実力と考えがちであり、大学病院ではこのようなケースは珍しいことではない。特に、ブランド病院(東大病院、慶應病院など)に惹かれる患者にその傾向があるという。
教授の肩書が付いている医師に診てもらうことが、賢い受診の仕方かどうかは別問題、と先述の麻酔科医師は言う。
大学病院の3つの役割、そして重要度
大学病院には「1.診療」「2.研究」「3.教育」という3つの役割があるが、大学病院では「2.研究」に重きが置かれがち。大学病院で出世を目指す医師は、(患者にとって重要な「1.診療」ではなく)、「2.研究」において成果を出すことにしのぎを削って生き残っていく。
作家で医師の久坂部羊氏は、大学病院のこうした矛盾について
「(前略)医学の進歩によって研究にも治療にも膨大な知識が要求されるようになり、研究に専念すれば治療がおろそかにならざるをえず、逆もまた然りの状態になりました。大学病院で出世するには、明らかに医学者(研究者)のほうが有利ですから、階級が高い医師の中には臨床が苦手な人も多いのです」
と指摘している。
(誌面ではここで大学病院で働く医師のキャリアを図解入りで紹介)。
「大学医局入局を許されるのは、その大学の出身者ばかりでなく、他の大学の卒業生も受け入れられます。医局員の数は医局の勢力とみなされるからです(後略)」
と久坂氏。
誌面では医局のヒエラルキー最底辺が研修医である点、メジャーな診療科(内科・外科)では20名以上も研修医を抱える所帯もあり、助教は15名位、30代後半で講師となる医師は1~3名ほどである点などを解説している。
医局で出世するには?
誌面では医局内出世で必須となる医師の能力について触れている。
臨床技術と出世可能性は相関が薄い
40代前半で准教授(1つの医局に1人が原則)になるのが規定ルートだが、権力皆無で教授との権力格差が大きい。教授は一国一城の主として科に君臨する絶対権力者であり、病院長でも科内人事等に口出しはできない。また、病院経営の重要事項はすべて教授会で決められるため、教授会こそ病院の最重要意思決定機関と言える。
新しい教授を選ぶのも教授会であり、立候補者としての准教授は根回しを行う政治力も求められる。教授選では研究結果や臨床の実力ではなく、事実上の政治力が重要となる。(一昔前のように金銭実弾が飛び交う派手な話は少なくなったそうだ)。
教授が定年を迎えると、関連病院の院長職などの名誉職が用意されるため、教授になれるかなれないかは、医師の出世において大きな分岐点となりうる。
このように、医局ではポストが上に成ればなるほどその椅子は減少していく。研究で結果を出し、絶対権力者である教授の覚えを良くする政治力を持つことが、大学病院で生き続ける手段である。
したがって、医師が偉くなるほど実力と肩書は比例しなくなる、と誌面では述べられている。実際の臨床技術のレベルは出世には結びつきづらいからだ。
大学病院に残れない医師たちは…
上記枠組みから外れ、大学病院に残れない医師達は、関連病院に派遣されるケースが多い(東大病院の場合は、帝京大学病院、虎の門病院、三井記念病院など)。所謂「お礼奉公」として、辺鄙な地方病院に派遣されるケースも多い。
ただし、このように関連病院には県されたほうが、医師としての稼ぎがずっと上だ。一般病院の勤務医ならば、大学病院の倍以上の給与が保証される。一般病院では臨床重視であり、出世する医師=患者にとっていい医師となる可能性が、大学病院よりも高いと指摘されている。
更に医局を出て開業医になるというルートもある。
地方病院にお礼奉公しながら開業資金を貯め、ローンも組んで30代後半から40代前半に開業する場合が多い。リスクもあるが開業医の年収平均は3000万円弱であり、最も経済的には美味しいキャリアである。開業後は医局との繋がりは弱まり、関連団体である日本医師会に所属する。
経済的には一般病院勤務や改行が得だが、大学病院に残り医局で出世することがエリート医師の王道であるとの考えは強い。米国での研究生活から帰国したある心臓外科医は、
「正直、割に合わない仕事だと思うこともありますよ。心臓外科は出世レースが激しい科なので、どうしても勤務時間が長くなりがちで、朝7時から夜の11時まで働くためセブン-イレブンといわれています。それでも医局に残ることにこだわるのは、自分のやりたい研究があるからです。研究費を取ってきて、好きな研究をするためには出世しなければならない。手術に関しても、一番手にならないと大事な難しい手術はさせてもらえませんしね」
と語る。
この心臓外科医の家族は「早く開業して欲しい」と急かすそうだが、本人はまだまだ研究を諦めないそうだ。
誌面では「日本の医療界はラクをすればするほど金が儲かるという変な構造にある」と指摘している。ただし、あえて医師として苦難の道を選ぶエリートが、患者が望む治療をしてくれるとは限らないと、再度、釘をさしている。
白い巨塔・東大病院の権力ピラミッド
この後誌面では、日本の大学病院のトップに君臨する東京大学附属病院(東京都文京区本郷)の権力ピラミッドを図解入りで紹介。病院長以下を実名で紹介しているが、詳しくは誌面(週刊現代2015年10月31日号)を購入の上、詳細を確かめていただきたい。
また、同じく記事後半にて、「医師と製薬会社の関係性」、本特集のテーマである「いい医師をみつけるためには具体的にどうすればよいか?」についても詳細取材がされているので、一読の価値はあるだろう。
週刊現代2015年10月31日号「医者の「階級」と「実力」の関係」より引用および要約
この記事を書いた人
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