MedTec Japan 2018に足を運びました
■作成日 2017/5/8 ■更新日 2018/5/8
元看護師のライター、紅花子です。
医療とものづくり+ITを絡めたこのコラム。11回目の今回は、4月の18日~20日に開催されたれたイベントにて、私自身が興味をもった「医工連携によって生まれた製品」や「医療機器開発に役立つであろう技術」についてお伝えしたいと思います。
春に行われるアジア最大級の展示会「Medtec」
今回、ちょっとした縁があり、「MedTec Japan 2018」へ行ってきました。
Medtecは、秋に開催されるHOSPEXと並び、医療機器関連技術や製品に関する全国規模の展示会です。今回の会期は、4月18(水)から20日(金)の3日間でした。
ちょうど、今から半年ほど前にHOSPEXについてもお伝えしましたが、この2つの大きな展示会は、その開催主旨などに若干の違いがあります。
ものすごく大ざっぱな捉え方をするならば、HOSPEXは上市前・上市後を含む「医療機器、福祉機器の展示会」で、Medtecは「医療機器や福祉機器を開発するための技術展示」という違いがあります。
主催者、協賛団体、後援団体も違いますし、同時期に同じ東京ビッグサイトの向い側、東1・2・3ホールで開催されている展示会の内容も違います。
とはいえ、展示会に足を運ぶ医療者や、新しい医療機器の開発や販売を目指している企業からみると、「どちらの展示会にも出展している企業や製品」があることに気づくかと思います。
Medtecは「技術展示会」なのですが、技術の概要だけが展示されているのではなく、「その技術を応用すると、このような製品を作ることができる」という、見本ともいうべき製品が展示されているためかと思われます。
HOSPEXの方も、「この製品を開発・製造するにはこのような技術を使っている」という部分も展示されていますし、出展者(説明員)の中には実際に「開発」をされている方もいますので、技術面での交渉なども行われることがあります。
ただし、出展側の企業や団体としては、HOSPEXは「この製品を売りたい」展示会ですし、MedTecは「この技術をアピールしたい」展示会ではありますので、見学される際は、その違いを少しだけ頭の片隅に置かれると、良いのかもしれません。
今回のMedtec、気になる技術と製品は?
ここからは、あくまでも私の独断と偏見で、いくつかの製品や技術をご紹介したいと思います。
ヘルスケア分野での技術競争が熱い?健康管理システム
そのままズバリ「医療」ではありませんが、今回のMedtecで複数の企業が展示していたのが、健康管理システムです。
細かくみていけば一括りにしてしまうのが憚られる部分もありますが、「個人の持つIT端末からのデータを集約し、ユーザーのその時点での健康状態を把握する」という意味では、似通った部分もある製品たちです。
大枠の仕組みとしては、センシング技術により収集したデータ+個人からの入力データを集約し、さまざまな視点からの「健康に関するデータ」を分析し、現状を推測、ユーザー本人に伝える、というものです。
今回展示されていた製品や技術の中では、個人での健康管理に利用するもの、企業が自社の社員の健康管理に利用するものなど、いくつかのパターンがありました。
Medtecは技術展示ということもあってか、「将来的にこのような利用方法も想定できる」という範囲で、健康に関する施設等(店舗やスポーツジムなど)でも、データの収集や過去データの閲覧ができ、それを今後のトレーニングプログラムへ活かす、というのもありました。
また。企業による社員の健康管理として、特定健診・特定保健指導に利用する例や、目標通りに健康管理を行えたらインセンティブを与える、というものもありました。
手術室にも新しい技術を 患者さんと医師のために
今回のMedtecでは、過去に(恐らく現在も)手術機器や骨接合用のプレート、特定の術式で使用する機器などを開発した企業の出展もありました。
実際にどこまでが「保険適応」の機器や治療器具なのかは分かりませんでしたが、中には医療機器としての届出済の製品もあり、今後の発展が期待できそうな機器もありました。
ところで、数年前に(現在も引き続き)話題になった「スマート治療室」をご存知でしょうか。
ここでは手術室用のロボットとして、術者の「腕」を支える機器が、ロボットとして開発されていました。術者の腕を支えることで、腕の動きを捉えてフィードバックすることで、手術の成功率を向上させるというロボットです。
そして今回、Medtecで見かけたのは、術者の「足」を支えるというモノ。ある意味、アナログな製品なのかもしれませんが、医師のちょっとした「こんなモノがあれば良いのに」を形にした、という事例なのかもしれません。
ちょっとした工夫で、熟練した技術が新しいモノづくりへ
例えば手術で使用する鋼製小物には、製造メーカーの名前や機器のサイズなどが刻印されているものがあります。
現在製造されているモノは、その多くが黒いマーキングですが、数十年以上前から愛用されているモノの中には、正に「刻印」されているモノもあります。穿刺用の針などには深度メモリが刻印されているモノもあります。
金属製の医療機器にマーキングを行う事自体は新しい技術ではなく、すでに一般的な技術といえます。
しかしここ数年、そのマーキングの内容を少し工夫することで、新しい使い方が検討されるようになっています。その一つの方法が、二次元バーコードを始めとする、機器の「識別」を行うマーキングです。今回のMedtecでも、機器の使用履歴を把握するための二次元バーコードに関する展示がありました。
この発想自体は素晴らしいと思いますし、機器の仕様履歴や、修理に出した履歴などが分かれば、機器を管理する側にとっては、作業がよりスムーズで確実になるのではないかと思われます。
しかし、これを医療機関に導入する際に壁となるのが「何のデータを誰がどうやって管理するか」という点です。
この辺りの、いわゆる「運用」までアピール出来、さらに導入した効果として、機器管理の方法や、実際に「人件費がこれだけ減った」という例が提案できれば、こうした製品の導入は広がるのではないかと、個人的には思います。
まとめ - センシング技術の進化はどこまで?
今回のMedtecでは全体的に、何かしらのデータをモノ(あるいは生体)から読み取るセンシング技術が、さまざまなシーンでの応用を検討されていることが分かりました。
まさにIoT革命の一端なのかもしれません。医療者が思いつくセンシング技術は、その多くがすでに実用化できる段階にあり、あとは「医療者がそれをどう使うのか」を考え、実際の開発に活かしていくことが必要なのです。
先日も、海外からでしたが「歯に貼りつけたセンサーで、飲食の内容を把握することが可能なデバイスの開発に成功した」というニュースがありました。
これも技術として非常に素晴らしいのですが、では実際の日本の臨床現場でどう生かせるのか、今後はその部分を明確にしていけば、市場は大きく広がるのだと、個人的には思います。
しかし、世の中にはまだまだ、「特定の何かのセンシング技術」が開発されていないものもあります。
例えば、呼気から呼吸器疾患のスクリーニングが可能となる技術や、皮膚の上から血液成分を測定できる技術は、医療者からのニーズが高い技術ではないでしょうか。
今後は、このような新しいセンシング技術の発展もありそうですので、医療機器開発に興味のある医師の方には、こういった情報にもアンテナを張ることをお勧めします。
参考資料
HOSPEX Japan 2017 結果報告書
https://www.jma.or.jp/hospex/img/common/pdf-report2017_ja.pdf
Medtec Japan Online 展示会概要
http://www.medtecjapan.com/exhibition_abstruct_ja
同上 新技術
http://www.medtecjapan.com/ja/new_tech
Advanced materials (Deerfield Beach, Fla.). 2018 Mar 23;e1703257. doi: 10.1002/adma.201703257.
https://pmc.carenet.com/?pmid=29572979
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