医工連携に必要なのは「医の発想」か「工の発想」か
■ 記事作成日 2017/12/4 ■ 最終更新日 2017/12/5
元看護師のライター、紅花子です。
医療とものづくり+ITを絡めたこのコラム。
7回目の今回は、11月20日~22日に開催されたイベントにおいて、私自身が興味をもった「医工連携から生まれた製品」についてお伝えしたいと思います。
秋に行われる展示会 HOSPEX
先日、知人から入場券を譲って頂いたので、「HOSPEX Japan2017」へ行ってきました。
HOSPEXは年に1回開催される、「病院/福祉設備・医療機器が一堂に集う専門展示会」というイベントです。
こ数年は秋に開催されており、会期は11月20日(月)から22日(水)までの3日間でした。
実はもう一つ、毎年春ごろに開催されているイベントがあります。
こちらはMEDTECという名称のイベントで、「医療機器の製造・開発に関する【アジア最大級】の展示会」と称されています。
いずれも、「新しい医療機器を開発したい」あるいは「何か新しい器機や用品はないか」と考える医療者に向けた一面を持つイベントです。敢えて「一面」とするのは、実際に来場する人たちの中には、医療機器メーカーやディーラーの方も多く含まれているためです。
今回のHOSPEXで「面白い」と感じた製品たち
私自身がHOSPEXへ行くのは5回目くらいになりますが、今回も一通り見学して、「面白い」と感じた製品をご紹介します。あくまでも宣伝ではなく、「これはこの先どうなるかが気になる製品」ということで読んで頂ければと思います。
今回のHOSPEXでは、時代の流れなのか、「IoT」に関する製品や、センサー技術を「どうやって医療機器に役立てていくか」を提案しているブースが多かったように思います。その中でも、私自身が「これがいずれ商品化されたら世の中の役に立つのではないか」と感じたモノを、ピックアップしてみました。
センサー技術に関する製品
【ナースコールと連動した“見守り”システム】
世の中には“見守りシステム”と称される製品はかなり多くの種類がありますが、こちらはナースステーションに通じている「ナースコール」と連動させるシステムです。
複数のタイプのセンサー技術との連動が可能とのことで、病院側の運用に適したシステムを構築できるそうです。
ナースコールは、看護師にとって常に身近にあるもの。
これに様々なセンサーが連動できれば、少なくとも看護師にとっては、利用しやすいシステムになりそうです。
【心電図・呼吸運動・体位変化まで測定できるシート型センサー】
こちらは寝具のシーツの下に敷く「シート型センサー」で、そのベッドに寝ている人の体動の有無、体位だけではなく、生体情報も取得できるセンサーのようです。
これまで、私自身が見たことのある「シート型センサー」は圧センサーを応用したものが多かったのですが、これはセンシングの技術が全く違うのだとか。
まだ開発途中とのことでしたが、どこまで正確な「生体情報」が取得できるようになるかなど、今後どのように発展していくのか、興味があります。
【キャスターにセンサー&発電機能】
こちらはキャスターメーカーの展示だったようですが、例えば車いすやストレッチャーなど、病院内で使用する様々なキャスターに、発電機能とセンシング機能、通信技術を組み込んだもののようです。
現在のところは、「医療分野でどのような利用ができるか」はまだ模索中とのことでしたが、位置情報や走行距離を伝える以外にも、応用できるところはありそうです。
リハビリや在宅医療に通じる製品
【変形性膝関節症の方の歩行をアシストする装具】
こちらは、変形性膝関節症が進行し、O脚やX脚になったことで「膝の痛み」が強く、歩行しにくい方が利用する「装具」でした。
もちろん、アシスト用の装具なので、これを使用したからといって、即「治療」につながるわけでは無いと思いますが、効果のメカニズムを聞いてみると、「疼痛の軽減」につながるのではないかと感じました。
【2誘導心電図が計測できる腰ベルト】
こちらはセンサー技術もさることながら、それを「腰ベルト」に仕立てたのが「モノづくり企業の技術力」なのではないかと思います。
実際に表示される心電図は、時々波形が消えてしまうことや、心拍数が上下することもあるのですが、在宅療養中の方の波形や心拍数を簡易的に測定するには、便利なのではないでしょうか。
今後、データの有効性が証明されれば、利用されることも増えるのではないかと思います。
まとめ - 医と工、どちらの発想が生きているか
※上記は過去開催時の様子(引用:http://j-tenjikai.com/medical_welfare/278)
今回、私自身が「面白い」と思った製品を製造している方にお話しを伺ったところ
- 医療者のニーズを元に開発した
- 医療分野で自社の技術を応用する方法を考えて開発した(つまり、自社開発)
これらのお話しが半々だったように思います。
開発費用としては、前者なら自治体など「公的機関」からの助成金を受けられる場合があります。後者の場合、自社で費用負担するケースが多いかもしれませんが、一部に助成金を利用できることもあるでしょう。
医療者のニーズを元に開発された製品の中には、「それは全国的なニーズがあるかどうか」という点でやや疑問が残るものがありましたが、今回ピックアップした製品は、いずれ「商品化」が望めそうな気がします。
もちろん、最初の発想は「一人の医師の考え」だったかもしれませんが、元看護師という立場の私が見ても「役に立ちそう」と思うわけですから、今後さらに開発が進めば、新しい医療/福祉機器として、世に出てくる可能性があります。
ただし、いずれの製品でも感じたのは、やはり医療分野は「データが命」ということです。
発案者の医師が「これは良い!」と感じたとしても、それを全国的なニーズに結び付けていくためには、やはりエビデンスが必要です。
「これを使用したら何がどうなったか」「その結果、患者さんにとってどのような効果が得られるのか」これが明確になれば、「医の発想」や「工の発想」に捉われることなく、新しい商品開発につながっていくのではないでしょうか。
参考資料
HOSPEX Japan 2017
http://www.jma.or.jp/hospex/
MEDTEC Japan online
http://www.medtecjapan.com/
首相官邸 健康・医療戦略推進本部 医療分野の研究開発に関する専門調査会
医療分野の研究開発に関する総合戦略(専門調査会報告書)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/tyousakai/pdf/houkoku.pdf
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