【医療ニュースPickUp 2015年12月20日】サイバーダイン社 医療ロボットベンチャーの海外支援をスタート
2015年12月17日、日刊工業新聞が「サイバーダイン社が、医療ロボットベンチャーの海外展開支援を始める」と報じた。
同紙によると、2016年度に、川崎市に新設予定の「医療産業イノベーション拠点」に、臨床開発や医療経済効果評価、医療ビッグデータ解析などの支援機能を設けることでベンチャー企業の呼び込みを行い、これと同時に、2019年度に予定されていた「サイバニクス・エクセレンス・ジャパン(CEJ)」の設立を、2017年度に前倒しするという。
患者の重症化予防、介護費用軽減、医療費削減に寄与
サイバーダイン社は、2004年に茨城県つくば市に設立されたベンチャー企業であり、筑波大学大学院システム情報工学研究科・サイバニクス研究センターセンター長 山海嘉之教授が社長を務めている。
世界初となる機能改善治療用ロボットスーツ「HAL」を開発、ドイツではすでに医療機関向けに普及させたノウハウを持つ。「HAL」を使った医療費は高額になるが、患者の重症化を予防し、介護費用の軽減や、医療費の削減に寄与することが期待されている。2015年には、日本でも医療用としての認可を取得した。
また、ロボット医療機器関連としては世界で初めてISO 13485(医療機器)認証を取得している。さらに2015年12月15日には、サイバーダイン社による「JIS B 8446」シリーズの規格案が、日本工業標準調査会 標準第一部会 第 5 回産業機械 技術専門委員会で審議されて、承認されたことが公表されている。
山海社長は、内閣府の「革新的研究開発推進プログラム」のプログラムマネージャーを務めており、このプログラムで育成した人材やベンチャーの受け皿として、CEJの発足が計画された。今後は、新設される医療産業イノベーション拠点に、臨床開発機能とスーパーコンピュータ、データセンターなどを設置し、医療ビッグデータの解析ノウハウを提供する。
参考資料
日刊工業新聞 サイバーダイン、医療ロボ海外展開を支援−臨床開発・解析機能をベンチャーに提供
http://www.nikkan.co.jp/articles/view/00368458
サイバーダイン社 ニュースリリース
生活支援ロボットの日本工業規格(JIS)の制定を部会が承認— 国際安全規格に続き、国内規格の策定を主導 —
http://www.cyberdyne.jp/wp_uploads/2015/12/151215_JIS%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9.pdf
同上 HAL医療用下肢タイプ、厚生労働省より医療機器として製造販売承認を取得
http://www.cyberdyne.jp/company/PressReleases_detail.html?id=3733
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
時々、様々な方面で話題に上るサイバーダイン社や「HAL」ですが、今度は国家戦略特区に進出、だそうです。どこまで大きくなるのか!?
この医療産業イノベーション拠点は、川崎市が公開している資料によると、「羽田空港の対岸に位置する「KING SKYFRONT」(約40ha)を 中核として革新的医薬品・医療機器の開発・製造と健康関連産業の創出をめざす」というエリアだそうです。「ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)」とか「国立医薬品食品衛生研究所」とか、いくつかの企業や団体の施設ができるようですね。
川崎市の中でも、東京都との境にある多摩川沿いの地域ですので、川向いには大田区の羽田空港が見えます。大田区は昔から、ものづくり企業が集約した地域であり、2015年12月現在放映中の「下町ロケット」の舞台となっている土地です。多摩川を挟んだ川崎市も同様、日本のものづくりを支えてきた地域なのではないでしょうか。
安倍首相の政策の1つに「医工連携」があります。これまでもなかなか進まなかった、医療分野と工業分野との連携が、少しずつ、進んでくるかもしれません。本来、これをどんどん進めたいという政策なのですが、やはりそこには大きな壁がありますから、少しずつ進んでいくものだと思います。
そんな時代に急成長するHAL、もう少し安価で利用できるようになれば「自分の足で歩ける」喜びをえられる人が、さらに増えてくるのではないでしょうか。今後の成長にも、大きな期待を寄せています(個人的に)。
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