【医療ニュースPickUp】2015年6月25日
医療にまつわる気になるニュースを当研究所独自の目線で掘り下げて記事にしている「医療ニュースPickUp】。このコーナーでは、まだ大手マスメディアが報道していない医療ニュースや、これから報道が始まるだろう時事的医療ニューストピックを、どこよりも半歩素早く取材・記事化していくコーナーです。
医療機器の輸出入がよりスムーズになる可能性
2015年6月23日、厚生労働省は、「Medical Device Single Audit Program Pilot(医療機器単一監査プログラム 以下、MDSAP)に正式参加する」と公表した。
MDSAPとは、医療機器を輸出するときに必要な審査手続きに関するシステムで、現在、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ブラジルが、このシステムに参加している。MDSAPに参加すると、開発国外へ医療機器を輸出する際の審査が一本化される。
厚生労働省は、MDSAPについて以下のように説明している。
- 参加国の規制当局全体で、医療機器の製造管理及び品質管理に関する基準(QMS)への適合性を確認する調査(以下「 QMS調査」という)を実施する民間機関(以下「 QMS 調査機関」という)を評価する。
- QMS調査機関は、QMS調査において、参加各国の基準への適合性確認を一括して実施する。
- QMS調査機関が実施したQMS調査結果を、参加各国の規制当局が活用する。
- 調査期間中は、カナダで認められている調査機関(12機関)がQMS調査機関の候補となる。
また、日本がMDSAPに参加するメリットとしては、
- 参加国の規制当局にとって、従来、各国独自で実施している QMS 調査機関に対する評価業務を協働して実施し、その評価結果を共有できる。
- 医療機器メーカーにとって、その都度対応していた各国ごとの実地による QMS 調査が QMS 調査機関により一括して 1 回で実施されることにより、負荷を軽減できる。
としている。
現行制度では、医療機器メーカーが輸出をする際には、相手国の審査と承認を得る必要があるが、輸出先の当局による、提出書類に基づいた日本国内の工場への立ち入り調査、を行い、承認している。
この期間は準備も含めるとおよそ1カ月半。輸出先の国ごとに同様の審査を受ける必要があり、メーカーにとっては大きな負担となっていた。
日本がMDSAPに参加すると、日本国内の医療機器メーカーは、特にMDSAP参加国に対する輸出業務をしやすくなる。その一方で、日本への輸入もハードルが低くなるため、日本の市場に参入しやすくなり、医療機関では器械の輸入を行いやすくなるというメリットも考えられている。
参考資料
厚生労働省 Medical Device Single Audit Program Pilotに正式参加します~国際協力の下、医療機器の品質確保を推進~
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000089446.html
FDA Medical Device Single Audit Program (MDSAP) Pilot
http://www.fda.gov/medicaldevices/internationalprograms/mdsappilot/default.htm
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
日本で使用されている医療機器には、アメリカ製やドイツ・イギリス・フランス製など、海外製品が数多く存在します。日本の医療機器メーカーが開発したものもたくさんありますが、特に先進医療とか、最先端とか言われるものの中には、やはり海外で開発されたものが多いのでは?という印象があります。
日本が今回、MDSAPに参加することで、日本の医療機器メーカーは“バンザイ”なのでしょうか。確かに、海外への輸出を考えているのであれば、輸出がしやすくなることは喜ばしいことですよね。
でもその一方で、輸入しやすくなるという局面も持ち合わせています。
価格競争などはまた別の話なのかもしれませんが、例えば同じ用途に使うもので、価格がよりやすい海外製品があれば、医療費削減のためにはそちらを使うことが推奨されるかもしれません。逆に、日本製品に対する「もっと安くなれば使うんだけどね」という、無言プレッシャーも気になります。
とはいえ、これから新しい医療機器を開発したいと考えるメーカーや、先日のニュースでも取り上げた「医師考案による医療機器開発」が盛り上がってくるのであれば、最初から「海外での使用も視野に入れた医療機器」の開発も、今後は必要になってくるかもしれませんね。
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