【医療ニュースPickUp 2017年7月21日】医療機器の安全な再利用、厚労省が基準を策定へ
厚生労働省は、単回使用後に廃棄するべき使い捨ての医療機器(SUD:単回医療機器)の再利用を認める新制度について、厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会にて検討を進めている。早ければ、7月下旬からスタートする見込みだ。
SUDは本来、1回使用したら廃棄されることとなっているが、これらの中には1本約20万円前後する高額なカテーテルなども含まれている。1回の手術でこうしたカテーテルを複数本使用することもあり、医療機関によっては安全性に問題ないと自己判断したうえで、院内や外部委託によって洗浄・滅菌を行い、独自に再利用することもあるという。
こうした実情を踏まえて厚生労働省は、不完全な洗浄・滅菌をなくし、取り扱いを明確化するため、SUDの再利用を国で制度化する方針。SUDの品質や安全性に関する審査基準を設けて安全性を確保すると同時に、医療費の削減も期待できるという。
こうした医療機器の再製造は、すでにアメリカでは2000年から、ドイツでは2002年から行われており、EUやイギリスでも、これらをモデルにして再製造を制度化している。
今回の基準では、許可を得た製造業者が、使用済みの機器を回収。分解・洗浄・滅菌後に再度組み立てを行い(再製造)、医療機関へ出荷する。
再製造の対象となる機器は、すでに欧米で実績があり、複数回使用できると考えられる、耐久性のあるSUD。国内の医療機関で使われたものに限定し、脳や脊髄などへの接触がなく、感染症患者の治療に使用していないなど、一定の条件をクリアすることが条件となる。
再製造されるSUDは、オリジナル品と同等の性能や安全性を持つよう設計・製造するが、オリジナル品と区別するため、別の名称をつける。SUDの製造番号を明示し、いつ、どの医療機関で使用された機器をどのメーカーが再製造したのか、追跡できる仕組みとし、安全性や制度の透明性を確保する。
また、再製造したSUDには「再製造」の文字と再製造業者名を記載するのを義務づけ、再製造品についての法的責任は、再製造を行った医療機器製造販売業者が負うことになるという。
参考資料
厚生労働省 第2回 厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会 資料
単回使用医療機器の再製造について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/iyakuinniryoukikiseidobukai21-2.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
使い捨ての医療機器(SUD:単回医療機器)の再利用、ついに制度化されるのか、という印象です。
私自身、手術室勤務経験がありますが、確かに手術に使用するSUDには、非常に高価なものがあります。まだ使える(と思う)のにもったいない、と思うことは多々ありました。
さすがに中に血液等が流れるものはどうかと思いますが、例えば、開けても数針しか使用しない「皮膚縫合に使用するステープラー」や、この針を抜くリムーバー、あるいはドレーピングキットに入っているプラスチック製の薬杯(未使用、他でも使えそうなシーンはある)などは、血液の付着がごくわずかで、感染症が無い患者さんに使用したものならば、再滅菌できないものかと考えたことがあります。
あとは「滅菌パックから出したけど使わなかった滅菌手袋」なども、未滅菌の状態で再利用はしていましたが(機械洗浄を行う時など)通常の未滅菌手袋よりもずっと高価ですから、もったいないと思いつつ、使用していた記憶があります。
今回、公開されている資料を見ると、例として挙がっているのは内視鏡手術で使用する鉗子類でしょうか。内視鏡手術で使用する鉗子類には、SUDでは無いタイプもありますが、分解洗浄は結構な手間がかかります。再度組み立てるのも同様。SUDタイプはそもそも分解できない形状のものが多かったように思います。
これが制度化されたら、実際の形状などが変わってくるかもしれません。ただし、公開されている資料でもほんの少し触れていますが「何回使用したものか」は、明確にしてほしいと思います。回数が増えるほど不具合率が高くなるためです。こういったところもシステム化されると良いのかなと思います。
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