【医療ニュースPickUp 2017年5月17日】医療事故件数 累計601件 うち6割は院内調査が完了
2017年5月11日、医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター 以下、センター)は、「医療事故調査制度の現況報告(」を公表した。
2017年4月中に、全国の医療機関からセンターに報告された医療事故は33件。2015年10月に、医療事故調査制度がスタートしてから、累計で600件を超えた。このうち院内調査が完了したのは24件(累計 354件)で、全体の約6割が調査結果報告を提出していることになる。一方、センターへ調査の依頼件数は3件(累計31件)であった。
医療事故調査・支援センターは、医事法の改正により、医療事故調査制度がスタートすると同時に発足した。この制度は、医療機関において事故が発生した場合、自主的に医療事故の報告と院内調査を行い、さらに調査結果の報告と家族への説明を行うことを医療機関に義務づけている。医療事故に関する調査・分析を行うのは、医療機関における責任追及が目的ではなく、原因を究明して事例を集積し、同様の事故の再発防止につなげるためだ。
4月の報告の内訳は、病院から30件、診療所から3件。診療科別に見ると、多い順に外科8件、消化器科・整形外科・脳神経外科が各3件など。地域別では関東信越が9件で近畿が7件、北海道が5件と続く。医療機関からの相談は、「医療事故に該当するか否かの判断」は18件にとどまり、制度の周知や運用の改善が進んできたと言える。
センターには、院内報告や医療機関の対応に疑問を持つ遺族や、自力で院内調査が困難な診療所などが調査を依頼できる制度も備えており、内訳としては、「医療事故に該当するか否かの判断」が70%と圧倒的多数を占めた。中には、制度開始前の事例や、制度の対象外である生存事例に関する相談も含まれており、国民の間での周知はまだまだ進んでいない現状がうかがえる。
参考資料
日経メディカル 特集◎医師こそ働き方改革を《動き出す労基署》
一般社団法人 日本医療安全調査機構
プレスリリース医療事故調査制度の現況報告(4 月)
https://www.medsafe.or.jp/uploads/uploads/files/houdoushiryo20170511.pdf
厚生労働省 医療事故調査制度について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061201.html
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
「医療事故」という言葉は、医療者側としても、患者さんおよびその家族側としても、極力聞きたくない言葉ですよね。国の制度として「医療事故調査制度」がスタートしてから、1年半が経過しましたが、その間の累積報告件数が600件超というのは、多いのでしょうか、少ないのでしょうか。
厚生労働省では、この「医療事故調査制度」に関するも公開しています。これを見ると、制度そのものに関するQ&Aがありますが、私が個人的に気になったのは「複数の医療機関にまたがって医療を提供した結果の死亡であった場合、どの医療機関の管理者が報告するのでしょうか?」という質問です。
その回答としては、まずは当該患者の死亡が発生した医療機関から、搬送元となった医療機関に対して情報提供し、医療事故に該当するかどうかについて、両者で連携して判断することが必要なようです。
その後、原則として当該死亡の要因となった医療を提供した医療機関から、報告することになります。
つまり、Aクリニック、B病院、C病院など複数の医療機関に関係した患者さんが、最終的にC病院で死亡が確認された時、その前に診療を行った医療機関の間で、「なぜ死亡したのか」を調査する必要があります。死亡に直結した原因がB病院にあるようだ、となった場合は、B病院から報告することになりますね。
国は現在、地域包括ケアシステムの構築、地域医療の連携強化を推進していますので、今後はこういったケースも増えてくるかもしれません。確かに、「医療事故調査制度」は「誰の責任だったのか」を追及するものでは無いのだと思いますが、責任のなすりつけ合いにならなければ良いなと、個人的には考えます。
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