【医療ニュースPickUp】2015年3月12日
医療にまつわる気になるニュースを当研究所独自の目線で掘り下げて記事にしている「医療ニュースPickUp】。このコーナーでは、まだ大手マスメディアが報道していない医療ニュースや、これから報道が始まるだろう時事的医療ニューストピックを、どこよりも半歩素早く取材・記事化していくコーナーです。
痒み改善薬の適応拡大を申請
2015年3月10日、国立がん研究センター(以下、国がん)は、産学連携全国がんゲノムスクリーニング「SCRUM-Japan」がスタートしたと公表した。この事業は、国立がん研究センターと全国の医療機関、さらに10社の製薬企業との連携による遺伝子スクリーニングプロジェクトである。
これまで、2013年には肺癌(LC-SCRUM-Japan)、2014年には大腸癌(GI-SCREEN-Japan)と、対象癌により個別に実施されてきた。いずれも、全国規模でのゲノム(遺伝子)ネットワークが構築されており、今回はこれらを統合し、2017年3月31を目途に、肺癌・消化器癌(大腸・胃・食道・小腸・虫垂・肛門管・消化管原発神経内分泌癌)で4,500例の症例登録を目指す。
これまで、LC-SCRUM-Japanを通じて登録された症例数は、累計1,438名(2015年1月末現在)。参加医療機関は、スタート時の2013年の27都道府県58施設から、およそ2年間で47都道府県192施設が参加しており(2015年3月6日現在)、ほぼ全国レベルとなっている。
元々は、進行肺癌に対する薬物療法の選択において、遺伝子異常の状況に応じた薬剤を選択するという「個別化治療の発展」を目標としてスタートした。
今回スタートするSCRUM-Japanでは、複数の遺伝子情報を同時に解析できる「マルチプレックス遺伝子診断薬の臨床応用」の実現も目指しており、より迅速な検査・診断による治療開始までの時間が短縮されるのではと期待されている。
使用されるのは、アメリカ国立がん研究所(NCI)は2015年5月開始予定のNCI-MATCH試験で採用予定の遺伝子診断薬であり、微小な癌細胞から遺伝子異常(変異・増幅・癒合)を検出できる。
もちろん、厳密に品質管理された検査機関での実際となるが、ホルマリン固定組織の提出からおよそ2週間で、遺伝子変異データベースとの照合を終えたレポートが作成される。
さらに、特定の遺伝子異常が見つかった患者は、対応する可能性が高い治療薬の臨床試験へ参加できる可能性があり、新たな治療の機会を得ることも可能になるという。
患者の担当医師は、患者背景やこれまでの治療情報を登録する必要があるが、作成されたレポートを元に、患者の希望も確認しながら、承認薬・新薬の治験など、治療の選択肢を増やすことができるようになるという。
これが実現されれば、これまで治療法が限定されていた症例でも、治療可能になるかもしれない。今後の動向に期待したい。
参考資料
国立がん研究センター 産学連携全国がんゲノムスクリーニング 「SCRUM-Japan」始動
http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20150310.html
同上 産学連携全国がんゲノムスクリーニング (SCRUM-Japan) の概要
http://www.ncc.go.jp/jp/information/pdf/press_release_20150310_shiryo_01.pdf
同上 GI-SCREEN-Japanの紹介
http://www.ncc.go.jp/jp/information/pdf/press_release_20150310_shiryo_02.pdf
同上 LC-SCRUM-JapanとSCRUM-Japanの紹介
http://www.ncc.go.jp/jp/information/pdf/press_release_20150310_shiryo_03.pdf
同上 SCRUM臨床ゲノムデータベース
http://www.ncc.go.jp/jp/information/pdf/press_release_20150310_shiryo_04.pdf
EPOC 早期・探索臨床研究センター LC-SCRUM-Japan 参加施設
http://epoc.ncc.go.jp/clinicaltrial/scrum_institutions.php
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
すでに2つのネットワークの運用がスタートしていることは、今回初めて知りました。
私自身、癌患者さんと接したのは手術室内のみでしたし、術後の患者さんがどういった経過をたどるのかは基本的に分からないため、患者さんを看取った経験はありませんが、「治療の術が無くなって死に向かうだけの患者」の心境を考えると、癌患者さんにとって治療の選択肢が増えるのは、非常に喜ばしいことだと思います。
今回のSCRUM-Japanで対象とするのは、肺癌と消化管癌のみですが、いずれは乳癌や肝臓癌、子宮や卵巣癌なども対象になると良いなと、個人的には思います。
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