【医療ニュースPickUp 2017年8月21日】O157による食中毒、全国で感染報告が急増中
2017年8月21日、埼玉県食品安全課は、熊谷市内にあるスーパーマーケットで販売された、ポテトサラダが原因と思われる、腸管出血性大腸菌O157による食中毒が起きたことを発表した。
この店舗以外にも、埼玉県や群馬県にある同じ系列の店舗にて、同月7~8日に加工・販売された食品を食べた客のうち、14人が腹痛を訴え、そのうち10人からO157が検出されたという。
さらに、群馬県前橋市内の系列店舗でも、11日に販売された食品を食べた客から、新たにO157が検出されたこともわかった。
この食品は、高崎市内の食品工場で5日から7日の間に製造され、各店舗に配送されたという。群馬県高崎市の保健所は、同月21日に工場の立ち入り検査を行い、10人が食べたものと同じ日のサンプルで検査を行ったが、O157は検出されなかった。
保健所は再度立ち入り調査を行い、工場での製造過程や店舗での加工の課程で菌が混入した可能性についても、引き続き調べていくという。
また、同月24日には、神奈川県横浜市内の焼き肉店でも、別のグループの男女2名が食中毒様の症状を発症し、横浜市保健所がO157を検出したと発表した。
横浜市健康福祉局がまとめた感染症発生状況によると、腸管出血性大腸菌感染症と報告された症例は、2017年第32週(8月7日~8月13日)まではひと桁台だったが、第33週(8月14日~8月20日)に入って22件と急増。
国立感染症研究所のデータでも、腸管出血性大腸菌感染症は8月に入って感染報告が急増しており、全国のO157を含む腸管出血性大腸菌感染症報告数は、第30週ころから毎週200例を超えている。
腸管出血性大腸菌は、温度が上がると増えやすく、気温が高くなることで、さらに食中毒の増加が懸念される。原因とされる食品は、肉類や生野菜、漬物などさまざま。菌が付着した食品を食べることで感染し、腹痛や下痢を引き起こす。まれに重症化して腎臓や脳に障害が出ることもあり、死に至る危険もある。
厚生労働省は、食中毒予防の3原則として「(病原菌を)付けない・増やさない・やっつける」を呼び掛けているが、飲食店や食品小売店は、調理場の衛生環境をあらためて徹底チェックする必要がありそうだ。
参考資料
NHK ニュースWeb ポテトサラダ食中毒 工場のサンプルからO157検出されず
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170823/k10011108531000.html
朝日新聞 横浜焼き肉店でもO157 男女2人が下痢、腹痛
http://www.asahi.com/articles/ASK8S237YK8SUBQU001.html?iref=com_apitop
横浜市 健康福祉局 横浜市感染症発生状況(平成29年 第29週~第33週)
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/pdf/2017nen/zensu17.pdf
感染症情報センター 週別腸管出血性大腸菌感染症報告数 2017年第1~32週
https://www0.niid.go.jp/niid/idsc/idwr/diseases/ehec/ehec2017/32w2017EHEC.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
毎年この時期になると、報道される「O157による食中毒」。これまでは、「しっかり焼いていない肉類」が原因だったことが多いように思いますが、今回の埼玉県、群馬県の例は、ポテトサラダでした。
21日の時点では、ポテトサラダを製造している工場からは、O157 は検出されていないようですが、実はこの食材、各店舗でもうひと手間加える食品のようです。
各店舗では、リンゴやハムなど1つ以上の食材を追加し、商品として陳列しているのだそうです。
実際に販売するときは、購入を希望する客が自らの手(もちろん専用の道具はあると思いますが)で容器に取り分けているため、穿った見方をすれば「店員の目が届かない可能性」も否定できません。
結局のところ、今(2017年8月24日17時)の段階では、O157 の混入経路が分かっていないのですが、大きく3つが考えられるでしょう。1.工場での製造時、2.店舗での「もうひと手間加える」タイミング、そして3.陳列されてから販売されるまでの間です。
1.の場合は今後の工場内の立ち入り検査で、
2.の場合も店舗内への立ち入り検査などが行われれば、明確になると思われます。
問題は、3.の可能性が高まった時です。
この場合、どの客の手指にO157 が付着していたのか、調べる術はほぼありません。
今回の店舗以外でも、「客が自分で取り分けて販売する」システムは、多くのスーパーマーケットや食品小売業、バイキング形式で料理を提供する外食産業など、多くの店舗で行われています。もし今回のケースの原因が3.であったならば、こういった店舗でも食中毒が発生する可能性は、否定できなくなります。
今後、さらなる調査でどのような結果が出るのか、注目していきたいと思います。
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