【医療ニュースPickUp 2015年7月26日】 外国人向け医療支援がスタート 民間と学生ボランティアの立場から
2015年7月29日、ジェイ・アイ・ジー・エイチ(以下、JIGH 本社: 東京都港区)は、 外国人向けの医療サポートを開始すると公表した。このサービスはこれまで、医療機関向けにのみ提供していた電話医療通訳サービス mediPhone for Hospitals(メディフォン・フォ・ホスピタルズ)の対象を拡大したもので、在住外国人や訪日外国人が、個人で利用できる電話医療サポートサービス( mediPhone:メディフォン)となる。
外国人患者に代わって問診票を作成
会員登録制のサービスで、電話などを利用し、無料で医療機関の紹介を受けたり、医療制度の解説を聴くことができる。医療関連の通訳なども、有料で提供する。
当初は英語だけだが、今年9月をめどに中国語にも対象を広げる予定。
医療機関の紹介を受けることができるのは、平日10時~13時、14時~17時。診察時の通訳は1分360円で一般的な通訳は1分180円。初年度に1万人の登録を見込み、売上高1500万円をめざす。
一方、医療系の学生の間でも、外国人患者への医療サービスを手助けする動きがある。
2015年7月24日、外国人患者に英語で医療支援をするボランティア団体「Team Medics(チーム・メディックス)」が設立され、前日の23日にキックオフイベントが開催された。この団体の中心となっているのは、日本大学、慶応義塾大学、東京大学、順天堂大学など医療系学生。関東圏の大学医学部生を中心に、およそ90人で結成された。
活動内容としては「具合の悪くなった外国人に英語で症状を聞き、日本語で問診票を書いて渡し、近隣の医療機関を紹介する」ことであり、当面は、大規模なスポーツ大会や文化イベントに参加するとしている。目標は2020年の東京オリンピック・パラリンピックで、会場などでの医療支援を可能にしたいとしている。
現在のところの活動予定は
●2020年までのイベントカレンダー作り
●英語での医療面接と日本語問診票作成のトレーニングワークショップ開催
●東京の医療機関に関する英語マップの作成準備
●2015年9月のブラインドサッカーアジア選手権での英語医療ボランィア
などがあがっている。
Team Medicsのメンバーは学生であり、医師資格が無いため医療行為はできないが、日本語の読み書きが出来ない外国人患者に代わって問診票を作成することで、医療機関への受診がスムーズになると期待されている。日本大学医学部の押味貴之助教と、慶大医学部のジェームズ・トーマス特任助教がアドバイザーとして就任、継続的な団体にする。
参考資料
日刊工業新聞 ニュースイッチ 医療系学生、東京五輪に向け決起!
http://newswitch.jp/p/1497
ジェイ・アイ・ジー・エイチ
mediPhone】急増する外国人に対応 外国人向け医療サポートサービス mediPhone(メディフォン)を提供開始
http://jigh.org/news/jigh/2372
ボランティア団体 Team Medics
http://team-medics.org/
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
まったく同時期に、民間(とはいえシンクタンクですが)と学生の間で、似た様なサービスが提供される、というのも面白いですよね。いずれも、現役医師あるいは未来の医師。医師として患者さんのことを考えた時に、必要なサービスはこの形にたどり着くのでしょうか。
私自身、20年ほど前には日本赤十字の病院に居たことがあるため、外国人の患者さん(外国人の医師も)は、そこそこ見てきたとは思います。しかしその頃と比べると、現在は外国人患者さんの数も、かなり多くなってきているようです。診察を行う医師は、簡単な英語での会話は成り立つようですが、例えば病状の説明を行うような場合は、日本語の分かる家族などを呼んでほしい、ということもありました。現在はどうなのでしょうか。
数年前、通訳をしている知人から、英語が通じるクリニック(生殖医療)を知らないか、日本語がほとんど話せない在日外国人を、そのクリニックに紹介して欲しい、といわれたことがありました。しかし私自身は生殖医療のクリニックに明るくなく、その道で有名な医師は知っていても、英語が堪能かどうかまでは分からず…。
知人(通訳)が問い合わせた結果、日本語でのレクチャーを受けないとダメ、と断られてしまったようです。その時に今回のようなサービスやボランティアが居れば、もしかすると1人の女性の人生が変わったかもしれません…。
2020年のオリンピックでは、特に学生ボランティア団体の活動に、期待したいと思います。
この記事をかいた人
正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在は当研究所所属ライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。