【医療ニュースPickUp】2015年1月23日
医療にまつわる気になるニュースを当研究所独自の目線で掘り下げて記事にしている「医療ニュースPickUp】。このコーナーでは、まだ大手マスメディアが報道していない医療ニュースや、これから報道が始まるだろう時事的医療ニューストピックを、どこよりも半歩素早く取材・記事化していくコーナーです。
生活習慣に関する疾患により、年間1,600万人が早死している-WHO報告より
世界保健機構(WHO)は2015年1月19日、生活習慣がその要因となる糖尿病や癌などにより、全世界で年間1,600万人が早死にしているとした報告書、Global Status report on noncommunicable diseases 2014(非感染性疾患に関するグローバルレポート 2014)を公表した。
この報告書では、生活習慣病などの非感染性疾患(以下、NCD)が、70歳以前に死亡している原因となっているとしている。
2012年の統計を元に試算すると、NCDによる死亡3,800万例のうち、1,600万例(およそ42%)はいわゆる早死であり、2000年の1460万例よりも増加していることが分かった。
その要因としては、喫煙、アルコール、不健康な食生活と運動不足にあるとしている。この傾向は低・中所得国で高くなり、1,600万例のうちおよそ82%は、低・中所得国で発生しているとされている。
WHO局長であるマーガレット・チャン博士は「年間一人当たり1~3US$を投資すればその国では劇的に非感染性疾患による死亡を減らすことができる。
2015年にはすべての国で何らかの国家目標を掲げ、費用対効果の高いアクションを実行する必要性がある。そうでなければ数百万人の命が、あまりにも早く失われるであろう」と述べている。
この報告書では母乳育児を推奨することと、“ベストバイ”としてタバコの広告騎禁止やアルコール広告の禁止、心疾患や脳卒中予防など、費用対効果やインパクトのある介入が効果的であるとしている。
成功例としては、
●トルコはタバコ禁止に向けた“ベストバイ”の施策を実施した最初の国であった。2012年に国は、各タバコ製品の全表面積の65%をカバーするよう、健康警告ラベルのサイズを増加させた。たばこ税は現在、総小売価格の80%を占めており、現在でも全国のタバコ広告、販売促進、スポンサー活動を禁止している。これらの施策により、国内での喫煙率は2008年から2012年の間に13.4%減少した。
●ハンガリーは、砂糖・塩・カフェインなどの健康へのリスクが高い食品に対し課税を行った。1年後には食品メーカーの40%が課税対象成分を減らす努力をし、売上高は25%減少したものの、消費者は25~35%これらの成分が低くなった食品を消費している。
●アルゼンチン、ブラジル、チリ、カナダ、メキシコ、アメリカは、パッケージ化された食品やパンの減塩を推進しており、アルゼンチンではすでにパンの塩分含有量を25%削減することに成功している。
WHOではさらに「NCDは貧困の緩和と国際的な開発目標を妨げる存在である。
人は病気になると死亡するまでの生産性が低下し、個人だけではなく国の医療制度に対しても、疾患の治療コストが大きくかかってくることとなる。
2011年から2025年の間に、低・中市所得国でのNCDへの累積経済損失はおよそ7兆US$になる」と述べている。
ではここで、WHOが公表している日本のデータを見てみよう。
2000年から2012年までの統計データを見ると、NCDによる死亡者数のうち、癌や心血管疾患による死亡者数は、わずかずつではあるが減少傾向にある。しかし慢性呼吸器疾患や糖尿病は横ばいであり、特に慢性呼吸器疾患で死亡する男性は、女性の3倍以上となっている。
2012年に30~70歳で死亡した全死亡者数はおよそ119万人であり、そのうち、癌は30%、心血管疾患は29%、慢性呼吸器疾患は7%であり、NCDによる死亡者数は、全死亡者数のおよそ80%を占めていると推計されている。いずれの疾患においても、女性より男性の方が圧倒的に多い。
成人のリスク因子としては、喫煙(男性:34%、女性:11%、全体:22%)、アルコール摂取(男性:10.4%、女性:4.2%、全体:7.2%)、血圧の上昇(男性:30.5%、女性:23.2%、全体:26.7%)、肥満(男性:5.8%、女性:4.4%、全体:5.0%)となっている。
日本は全世界でみれば、比較的NCDにより早死となる死亡者は少ない方かもしれない。
しかし高齢化の影響もあってか、癌の罹患数・死亡者数は未だ減少傾向にはない。高齢者糖尿病患者も今後は増加傾向となることが予測されており、NCDによる死亡を抑制するためには、各国における“ベストバイ”施策に見習うべき点が、大いにあるのではないだろうか。
参考資料
AFP BB NEWS 生活習慣病で年間1600万人が早死に、WHO報告
http://www.afpbb.com/articles/-/3037035
WHO Noncommunicable diseases prematurely take 16 million lives annually, WHO urges more action
http://www.who.int/mediacentre/news/releases/2015/noncommunicable-diseases/en/
NCD 国別プロファイル 日本
http://www.who.int/nmh/countries/jpn_en.pdf
がん情報サービス 最新がん統計
http://ganjoho.jp/public/statistics/pub/statistics01.html
この記事をかいた人
医師キャリア研究のプロが先生のお悩み・質問にお答えします
ツイート