【医療ニュースPickUp 2015年11月3日】 ノロウイルス集団感染発生 今シーズンは遺伝子型の変化に注意喚起
ノロウイルスによるとみられる集団感染が相次いでいる。
12月中旬ごろが感染のピーク
長崎県では、大村市内の小学校で10月30日、児童など77人が、発熱や下痢などの「感染性胃腸炎」の症状を訴えた。検便した結果、5人中4人からノロウイルスが検出されたという。
11月2日にも25人が症状を訴えて欠席していたが、入院まで至った児童はおらず、全員が快方に向かっている。県などによると、10月26日から、腹痛や発熱により欠席する児童が現れ、30日になって学校から県央保健所に連絡があった。感染経路はまだ分かってはいないが、感染した児童からの二次感染で拡大した可能性が高いという。
岐阜県では、多治見市内の保育園で、149人の園児中26人と、保育士や調理師など33人の職員中9人が、下痢や嘔吐のために、11月2日に欠席し、調理員1人と入院した園児(1)からノロウイルスが見つかったと発表した。現在、感染症と食中毒の両面で調査しているが、感染経路はまだ特定されていない。
11月1日には、園児や保育士らが嘔吐や下痢で開業医の診察を受けており、同2日に欠席した園児や職員にも、下痢や嘔吐の症状が現れた。東濃保健所は2日午前に、同園への立ち入り調査を実施し、検便や、10月30日の給食について調べているほか、市は4日を臨時休園とし、保育園の消毒を行う。
ノロウイルスは例年、12月中旬ごろに感染のピークとなることが多いため、これからの時期は特に注意が必要な感染症の1つである。厚生労働省の発表によると、2014/2015シーズンから、それまでは検出数の少なかった遺伝子型(GⅡ.17)の検出が急増しており、2015年9月30日付けの厚生労働省医薬食品局食品安全部 監視安全課長通知「ノロウイルスによる食中毒の予防について」においても、注意喚起がなされていた。
国立感染症研究所の発表では、2014/2015シーズンのウイルス検出状況は、Noro GⅠ514例、Noro NT(6例)に対し、Noro GⅡ(2497例)と、GⅡの検出数が多かった。また、この秋以降発生している集団感染事例については、検出されているノロウイルスのほとんどが GⅡ.17であり、今シーズンのノロウイルス感染は GⅡ.17 が主流となる見通しとし、流行が拡大する可能性を指摘している。
これに加え、これまでの流行の主体であったノロウイルスGⅡ.4と比較し、今シーズンの主体となりえるGⅡ.17については、現在一般的に使用されているノロウイルス迅速診断 検査キット(ICキット)による検出感度が低いことが報告されている。これらのことから、国立感染症研究所では、同診断キットを用いた場合、ノロウイルス感染とは診断されず、感染予防対策の遅れにつながる恐れがあるとしている。
参考資料
西日本新聞 大村市の児童77人、ノロウイルス症状 [長崎県]
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/nagasaki/article/204943
朝日新聞 ノロウイルスか、園児ら71人欠席 多治見の保育園
http://apital.asahi.com/article/news/2015110400003.html
厚生労働省
感染性胃腸炎の流行に伴うノロウイルスの感染予防対策の啓発について
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/dl/151023-01.pdf
同上 厚生労働省医薬食品局食品安全部 監視安全課長通知「ノロウイルスによる食中毒の予防について」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/dl/150930-01.pdf
国立感染症研究所
都道府県別ノロウイルス、サポウイルス、ロタウイルス検出報告状況、2015/16&2014/15シーズン
http://www.nih.go.jp/niid/images/iasr/rapid/noro/150805/noro2_151027.gif
同上 ノロウイルスGII.17型の流行とその特徴について-三重県
http://www.nih.go.jp/niid/ja/id/1023-disease-based/na/noroviru
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
いよいよノロウイルスのシーズンが来ましたね。インフルエンザも心配ですが、特に何も飲んだり食べたりが出来なくなる胃腸炎は、子どもを持つ親としては心配です。今のところ自己防衛しかありませんが、給食による集団感染は、家庭でいくら気を付けても、どうにもならないものだと思います。
今の時期、小学校や中学校、高校などでも、子ども向けのお祭りや学園祭が行われていますよね。私の子どもが通う小学校でも、今週末にフェスタと称するイベントがありますが、食べ物を扱う模擬店を出店するため、感染予防には特に気を使うように!という、保健所からのお達しがありました。
やきそば、ポップコーン、綿あめなどですが、各ブースを担当する方は、手洗いの励行や手指消毒、手袋の装着、使用する器具の使い分けなど、かなり気を使っているようです。学校のイベントで集団感染…という事態は、避けなくてはいけませんよね。
ノロウイルスの消毒にはピューラックスが医療機関としては一般的ですが、家庭なら塩素系漂白剤でも代用可能ですので、とりあえず常備しておこうとは思っています。
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