【医療ニュースPickUp 2018年3月19日】地域医療に専門医の認定制度を新設。医師の地域偏在を解消へ
2018年3月13日、政府は医師の地域偏在を解消することを目的にした医師法と医療法の改正案を国会に提出した。医師の少ない地域に一定期間勤務した医師を厚生労働省が評価・認定し、その認定を受けた医師を地域病院の管理者として評価する仕組みを創設する。
都道府県の保健医療計画においても、実効性のある医師確保計画の策定や、大学や医師会などが連携する「地域医療対策協議会」の機能強化などをはかる。
今回の改正案では、各都道府県の医師確保に関する権限も強化される。各都道府県知事は、大学における地域枠・地元出身入学者枠の設定・拡充を要請する権限のほか、臨床研修病院の設定や研修医の募集定員の設定に関しても権限を持つことになる。
都道府県はこうした権限のもと、PDCAサイクル(管理業務を円滑に進める手法。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の4段階を繰り返し、業務を継続的に改善すること)に基づいて、地域の実情に合わせた医師確保対策を進めるための「医師確保計画」を策定。
大学や医師会と連携して、効果的な医師の配置のために地域医療支援事務の見直しを行う。
認定制度では、厚労省が定めた医師偏在の指標をもとに、各都道府県が「医師少数区域」「医師多数区域」を設定する。少数区域に一定期間努めた医師は、地域医療に精通した医師として評価され、認定を受ける。
認定を受けた医師は、開業の際に認定医として看板などに明記できるほか、認定が地域支援病院の管理者となる際の要件のひとつとなる。
これまで都市部から遠い地域で医師の配置が進まなかったのは、学会出席や研修といったスキルの研鑽を積みにくいなど、キャリア形成が難しいことも要因のひとつだった。
今回の改正案では、地域医療を医師のキャリアパスのひとつに位置づけたことで、地方勤務を希望する医師を増やす考えだ。
医師の地域医療へのモチベーションを高め、都道府県が地域の病院や医師会と共に、現状に即した医師確保策を進めることができるか注目される。
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【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
これまで、当サイトの「保健医療計画」に関するコラムでも「地域における医師の偏在」について、大きな課題となっていることを述べてきましたので、やっと国も「医師の偏在解消」に本腰を入れたか、という印象です。
医療法と医師法の改正のポイントとしては、大きく4つ(5つ)あります。
- 医師少数区域等で勤務した医師を評価する制度の創設【医療法】
- 都道府県における医師確保対策の実施体制の強化【医療法】
- 医師養成過程を通じた医師確保対策の充実【医師法、医療法】
- 地域の外来医療機能の偏在・不足等への対応【医療法】
この他に「その他」として、「医療機関の開設や増床に係る都道府県知事の権限の追加」があります。
この中で、個人的に大きなポイントとなっていると感じるのは、3の「医師養成過程を通じた医師確保対策の充実」と、1の「医師少数区域等で勤務した医師を評価する制度の創設」です。
3についてですが、都道府県知事の権限としては、これまでにも「保健医療計画の策定」や、地域の医療機関数ならびにそれぞれの医療機関担う医療機能、病床数の設定などがありました。
病床数の設定については、一定のルールがあるとはいえ、地域の実情に合わせたものとなっていました。
今回の改正案の中では、「都道府県知事から大学に対する地域枠・地元出身入学者枠の設定」という権限が追加されることになっていますので、ここにきてさらに、「医師の養成」についても、権限が追加されることになります。
仮に「地域枠」が出来たとしても、入試が楽になるわけでは無いと思いますが、「地域に根差した医師」を、医学部入試の時点で養成していくことになります。これは大きな変化なのではないでしょうか。
もう1つの1ですが、これはすでに医師として働いている方には、朗報なのだと思います。
これまでも「地域医療に関わる医師の募集」は、さまざまな地域から出ていたと思いますが、そこにさらに「評価」が加わるわけです。少しでも地域医療に興味がある医師の方は、自分の今後の生き方も含め、転職活動に役立てられるのではないでしょうか。
いずれにしても、今回改正された法が施行されるのは、2019年4月。もうすぐ2018年度がスタートし、保健医療計画も第7次がスタートします。
そこに、今回の法改正がどこまで反映されるのか、注目していきたいと思います。
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