【医療ニュースPickUp 2015年11月25日】日本でも「フォーミュラリ」が浸透するか 後発薬推進の動き
2015年11月20日、厚生労働省は、第91回社会保障審議会医療保険部会を開催し、生活習慣病治療薬などの費用対効果について、国内外の「フォーミュラリ」とよばれる薬剤のリストを提示した。
フォーミュラリとは
「フォーミュラリ」とは、「疾患の診断、予防、治療や健康増進に対して、医師を始めとする薬剤師・他の医療従事者による臨床的な判断を表すために必要な、継続的にアップデートされる薬のリストと関連情報」と定義される。
つまり、さまざまな疾患などに対するガイドラインの内容を踏まえた上で、さらに経済性などを加味することで、薬剤の採用基準や推奨度を明確化した「薬剤のリスト」をさす。
アメリカやイギリスなどでは、後発医薬品も含め、薬剤の質や安全性の観点から推奨度を明記し、適正使用することが進められている。
日本では、聖マリアンナ医科大学において、有効性・費用対効果などを考慮し、薬剤部がフォーミュラリを作成している。
この日の会議で示された資料では、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、スタチン、糖尿病治療薬、降圧薬、骨粗鬆症治療薬など、特に生活習慣病の削減効果が例示された。
今回提示された資料では、アメリカ、イギリスの状況のほか、聖マリアンナ医科大学の例が示された。聖マリアンナ医科大学では、同種同効薬の場合、経済性を考慮して2剤までを採用するという、院内の使用推奨基準を設けている。
既存の同種同効薬については、原則的に後発医薬品などを優先し、有効性や安全性に明らかな差がない場合は採用を認めないという方針になっている。
例えばHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)は、アトルバスタチン錠、ピタバスタチン錠の「後発医薬品を第一選択薬」とし、「新規導入には後発品を優先する」ことも明記されている。
参考資料
厚生労働省 第91回社会保障審議会医療保険部会 平成28年度診療報酬改定の基本方針(骨子案)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000104771.pdf
同上 第90回医療保険部会で依頼のあった資料(OTC類似薬、生活習慣病治療薬)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000104774.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
今回公表されている「平成28年度診療報酬改定の基本方針(骨子案)」をみると、「地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点」や、「患者にとって安心・安全で納得できる効率的で質が高い医療を実現する 視点」など、患者にとってより良い医療を提供する、という主旨が伺えます。
一方で、国の財政を考えると、やはりお金を使うことだけではなく、「効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高める視点」というのも、重要な課題のようです。この中の1つが、今回ピックアップした「後発薬の推進」にあたります。
ここ数年、調剤薬局にいくと「ジェネリックにしますか?」と聞かれることが多くなりました。
調剤薬局でも、後発薬に切り替えを推奨すること、というお触れが出ているのだと思いますが、実際の調剤薬局の売り上げって、どうなのでしょうか。安価な薬剤を販売すれば、それだけ売り上げも下がってしまうように思うのですが、仕入れも安くなるから良い、ということなのでしょうか。
薄利多売な商いになってしまいますね。
ジェネリックでも、有効性が一緒なら良いのだとは思います。国全体で「お金が無い」という状況にあれば、みんなが協力して、安価な薬剤を使いましょう、というのも頷けます。
しかし、調剤薬局には、薬剤を患者さんへ販売することの他にも、昨今はさまざまな機能を求められているわけですから、薬剤師さんたちのモチベーションが維持できる方針であってほしいと思います。
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