【医療ニュースPickUp】2015年6月4日
医療にまつわる気になるニュースを当研究所独自の目線で掘り下げて記事にしている「医療ニュースPickUp】。このコーナーでは、まだ大手マスメディアが報道していない医療ニュースや、これから報道が始まるだろう時事的医療ニューストピックを、どこよりも半歩素早く取材・記事化していくコーナーです。
MERS 韓国内での感染が拡大中
2015年6月3日、韓国政府は、中等呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス感染症の拡大と、それに伴い幼稚園や小中高校などで計209校が休校措置を取っていることを明らかにした。この時点で、感染者は計30人に達し、うち4人は「三次感染者」だった。
MERSは、2012年9月頃に発見された感染症で、最初の患者は、カタールよりイギリスへ搬送された49歳男性患者だった。その2か月ほど前に、サウジアラビアで急性肺炎および腎不全により亡くなった60歳の男性患者がいた。
この患者と、イギリスで確認された患者から分離されたコロナウイルスの遺伝子が、ほぼ一致していたことから、この2例が最初の発生例とされている。
その後、中東地域を中心に、患者の報告が相次いでいる。ヨーロッパ、アフリカ、アジア、北米大陸からも患者の報告はあるが、すべて中東地域(アラブ首長国連邦、イエメン、イラン、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、ヨルダン、レバノン)からの輸入症例、あるいは輸入症例との接触により感染したとされている。
WHOは、2015年6月2日時点で、感染者数1,154人、死亡者431人の報告を受けているという。
韓国政府は感染疑いあるいは感染者との接触があったおよそ750人に対し、自宅や医療機関での隔離措置を取っている。このうちおよそ700人は自宅での隔離だが、よそ50人は慢性疾患を抱えていることなどから、医療機関での隔離となった。
今回、韓国で感染が拡大した理由は未だ分かっていないが、これまでの感染が全て医療機関内で拡大していることから、感染が確認された病院や病棟自体を隔離する方針。
日本では、今年1月から二類感染症に指定されているが、2015年6月2日時点では、未だ感染例の報告はない。しかし検疫所などでは中東からの入国に対しては厳しく対処すると予測されるが、韓国内で三次感染が起こっていることから、韓国からの入国についても同様の対処となることが予測される。
実際、今年5月30日に韓国内で報告された患者の家族が、その数日前に一定の症状を発症しているにも関わらず中国へ入国していたことが分かっている。
この患者は中国国内で政府により発見され、ただちに隔離設備の整った医療機関へ搬送されており、MERS-CoV陽性との判定を受けている。
参考資料
NHK 韓国 MERS感染者に接触の750人隔離
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150602/k10010100711000.html
国立感染症研究所 IASR 2012年新型コロナウイルス(HCoV-EMC)重症肺炎の発生について
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/alphabet/mers/2192-idsc/iasr-in/2915-pr3935.html
厚生労働省検疫所 2015年06月02日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新27)
http://www.forth.go.jp/topics/2015/06020950.html
同上 2015年06月02日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新25)
http://www.forth.go.jp/topics/2015/06020911.html
厚生労働省 中東呼吸器症候群(MERS)について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/mers.html
同上 中東呼吸器症候群における検疫対応について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dl/20140724_01.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
お隣韓国では、かなり感染が拡大しているようですね。それも医療機関内での拡大が確認されているというのは、かなり衝撃でした。韓国の病院、大丈夫なのか?
日本人の場合、中東諸国からの輸入症例よりも、韓国からの輸入症例を心配した方が良いのでしょうか。単純に、人の交流は、その方が多そうな気がします。
一般の人からみると、「マーズ?サーズと違うの?」という感想かもしれません。2003年頃に急激に感染が拡大したSARSとは、同じコロナウイルスでもずいぶん違います。SARSはコウモリ+ハクビシンからの感染、今回はラクダからの感染のようです。両感染症は似て非なるものはありますが、一般の人はそこまで深くは分かりませんので、「何だかまた新しい感染症?ふーん」という印象かもしれません。
厚生労働省も世界的な感染拡大を受け、検疫所などを通じて、日本への入国阻止を図っているようですが、検疫所向けの情報の中には「中東への渡航歴」に要注意であることは書かれているものの、「韓国への渡航歴」は未だ注意の範疇に入っていないようです。
個人的には、毎日のように「韓国での感染者数が増えた」というニュースが目につきますし、日本ではこのルートからの感染が先に起こるのではないかと懸念しています。
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