【医療ニュースPickUp 2016年3月11日】「カテゴリー」で大量な情報を判断する脳の働きを解明 東北大学
2016年3月8日、東北大学は、同大学の東北大学大学院生命科学研究科 筒井健一郎准教授・細川貴之助教らの研究グループが、「カテゴリー化により大量の情報を瞬時に処理する脳のはたらきを解明した」と公表した。この研究成果は、脳神経科学誌Journal of Neuroscienceに掲載される(3月9日発行)。
抽象的概念の形成やそれを使った論理的思考にかかわる神経メカニズムの解明が大きく進む
今回の研究は、ニホンザルに対し一定の訓練を行った後、前頭連合野から神経活動を記録するというもの。その結果、前頭連合野の一部の神経細胞が、概念の一種である「カテゴリー」や、それを使って予測した結果の情報を、保持していることを見出したという。
研究グループはまず、被験者となるニホンザルに対し、ジュースまたは食塩水が与えられる予告として、複数の抽象図形を見せ、予測的な行動ができるような訓練を行った。するとニホンザルは、ジュースと考えた場合はチューブを舐めながら待ち、食塩水と考えた場合は口を閉じて待つようになった。
時々、図形をすべて入れ替えることを繰り返し訓練したところ、ニホンザルは多くの図形の中で一つの図形の意味が変化しただけで、他の図形も意味が変わることを予測するようになったという。つまりこのニホンザルは、一つの図形から結び付く結果をカテゴリー化して記憶し、カテゴリーの変化に対して予測的に行動していることになる。
さらに、この課題を行っている間、ニホンザルの前頭連合野からの神経活動を記録したところ、前頭連合野の神経細胞の一部が、特定のカテゴリーの図形をサルに見せた時だけ興奮したことから、ニホンザルは見せられた図形からカテゴリーを想起しており、その情報を保持していることが分かった。
また、カテゴリーを使って予測した結果(ジュースか食塩水か)の情報を保持している神経細胞が存在していることも明らかになったという。
東北大学では、「この成果により、抽象的概念の形成やそれを使った論理的思考にかかわる神経メカニズムの解明が大きく進むことが期待される。
また、抽象的な思考が不得意だとさ れる『アスペルガー症候群』などの発達障害の病態の理解や、新たな治療法の開発にもつながることが期待される。」としている。
参考資料
東北大学 2016年プレスリリース
カテゴリー化により大量の情報を瞬時に処理する脳のはたらきを解明
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2016/03/press20160308-01.html
同上 プレスリリース
カテゴリー化により大量の情報を瞬時に処理する脳のはたらきを解明
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20160308_01web.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
今回は東北大学の研究結果からです。
ヒトであれば、かなり多くの情報を瞬時に判断するために、無意識に「カテゴリー化」しているのかもしれません。でも、訓練すればサルでも出来る、というのは少し驚きました。
このプレスリリースの中には、実際の訓練のやり方とその結果も書かれていますが、●とか△のような単純な図形ではなく、もっと複雑な、抽象的な図形を使用したようです。被験者となったサルは、図形がまるっきり入れ替わった最初の1回だけは間違えましたが、その後からは、「ジュースだと思う」「食塩水だと思う」という判断を、間違いなく行っていたようです。これも結構、スゴイことだと思います。
ニホンザルの知能って、人間でいれば何歳くらいなのでしょうか。うちには3歳の息子がいますが、同じことをやってみても、すべて正解する気がしません。性格的なものもあるのかもしれませんが、これだけ複雑な図形とそれが意味する結果が、カテゴリーで考えられるかどうかといわれると、出来るとは言い切れないかなと思います。
数の概念とかは少しずつ分かってきているようですが。
この研究結果は何に役立つのだろう?と思いながら読んでいたら、「アスペルガー症候群」とあったので、なるほど!と思いました。
この記事を書いた人
医師キャリア研究のプロが先生のお悩み・質問にお答えします
ツイート