【医療ニュースPickUp 2016年9月30日】2014年がん登録全国集計を報告 国立がん研究センター
2016年9月26日、国立がん研究センターは、がん診療連携拠点病院等421施設および都道府県に推薦された病院306施設と小児がん拠点病院15施設において、2014年の1年間にがんと診断された症例に関する報告書を公表した。
詳細は「がん情報サービス」にて公開中
今回公表された報告書によると、がん登録上位10部位については、順位の変動がなく、大腸、胃、肺、乳房、前立腺が上位5位を占めた。
2013 年に、子宮頸部が初めて肝臓を抜き6位となったが、2014年も子宮頸部が肝臓よりも多い結果となった。膵臓と膀胱が9 位、上位 10 位までで、登録数の 7割以上を占める結果となった。
ただし、報告書には「日本の標準的な院内がん登録では、同一部位に発生した新たな腫瘍をどこまで登録対象とするかの判定基準が統一されていない点に留意する必要がある」と明記されている。
施設によって登録を行う基準が異なるため、登録数=患者数に近い場合と、登録数=述べ患者数に近い場合が混在しているという。
都道府県別に5大がんの登録割合をみると、全国平均では50.2%であり2013年と同等、もっとも多かったのは岩手県の55.4%、もっとも少なかったのは沖縄県の37.3%であった。九州地方、 長野県、山梨県、兵庫県等で、5大がんの登録割合が少ない、という傾向がみられている。
さらに、2014 年登録患者の平均年齢をみると、都道府県別では67.7歳 、 施設別では68.3 歳と、若干ではあるが高齢化の傾向があった。20 歳未満の登録は、1例もなかった施設が90施設であり、昨年とほぼ同程度であった。75歳以上の登録患者の割合は、徐々に増加傾 向にある。
今回の集計では、これまでの胃、大腸、乳房、肝臓、肺の主要5部位に加え、食道、子宮頸部、子宮内膜、膀胱、甲状腺、膵臓、前立腺の7部位についても集計を行っている。主要5部位以外の部位については、登録精度を担保するため、国立がん研究センターが認定を行う「院内がん登録実務中級認定者」が在席する、323施設を集計対象とした。
詳しい内容は、国立がん研究センターがん対策情報センターが運営している「がん情報サービス」にて公開されている。
参考資料
国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター
がん診療連携拠点病院等 院内がん登録 2014年全国集計 報告書
http://ganjoho.jp/data/reg_stat/statistics/brochure/2014_report.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
今年も、全国における「がん登録」に関する報告書が公表されたわけですが、これは1回の集計にそれなりの時間を要するため、数年前の情報、ということになります。実際に報告書を見ると分かりますが、非常に細かな部分までの集計がなされています。全国から集まるデータを、詳細に集計・分析を行う手間は、非常に大きなものであることが分かります。
当たり前のことですが、がんの登録患者数がもっとも多いのは、東京都でおよそ7万5千人。全国ではおよそ64万人ですから、およそ11.6%が東京都に集中していることになります。元々の人口が多いことと、専門の病院が集中していることがその理由なのかなと思います。
また、「診断時の居住地」と「登録されている拠点病院の所在地」が同じ都道府県にあるかどうかを比較すると、全体では同一都道府県の拠点病院で登録された患者の平均登録 割合は 92.2%、一方で20歳未満だけでみるとおよそ82%、となったそうです。
20歳未満には小児がん患者さんが多くを占めるわけですから、それだけ「小児がん」に対応できる医療機関が、他のがんに対応できる医療機関よりも少ない、ということでしょうか。
仮に居住地と同じ都道府県に、例えば「小児医療センター」などがあったとしても、実際に住んでいるところから遠ければ(通いにくければ)、隣の都道府県の小児医療センターに行くこともあるでしょう。登録年別で比較すると、2011年以降くらいはその傾向が、若干ですが強くなるようです。
国がんによるこの統計、200ページ近くありますし、内容的には専門的なことも多々記載されているため、報告書をすべて読み解くのは大変ですが、がんについて色々なことが分かる報告書だと思います。この報告書は今のところ、1年に1回、新しいものが公表されていますので、じっくりと読んでみることをお勧めします。
この記事をかいた人
医師キャリア研究のプロが先生のお悩み・質問にお答えします
ツイート