【医療ニュースPickUp 2016年5月12日】病院の1施設あたりの医療費、さらに拡大傾向へ 厚生労働省調査より
2016年5月11日、厚生労働省は2014年度版の「施設単位でみる医療費等の分布の状況~医科病院、医科診療所、歯科診療所、保険薬局~」を公表した。
厚生労働省では、毎月の「医療費の動向」(MEDIAS)の中で、医療機関1施設当たりの医療費データを公表しているが、今回公表されたものは、2014年度の1年間の統計から調査・分析を行ったもの。医療機関の規模や状況を鑑み、今回は医療機関の規模(1施設当たりの医療費階級別)別に、医療費の状況を分析している。
1施設当たり医療費の伸び率をグラフ化すると…
この中で、医科病院に注目すると、以下のような状況になっている。
- 2014年度の医療機関数は、8,371施設であり、年々減少傾向が続く
- 2014年度の1施設当たり医療費は、平均で25億2200万円
- 2011年度からの変化を見ると、平均医療費は増加傾向にあるものの、ばらつき(標準偏差)が拡大している
- 11年度:平均医療費=23億4900万円、標準偏差=37億3900万円
- 12年度:平均医療費=24億1600万円、標準偏差=39億900万円
- 13年度:平均医療費=24億6400万円、標準偏差=40億600万円
- 14年度:平均医療費=25億2200万円、標準偏差=40億9800万円
また、「1施設当たり医療費の伸び率」について、1施設当たりの医療費階級別に表したグラフをみると、
- 収入の高い病院群では、2013年度からの伸び率が小さい
- 収入の低い病院群では、2013年度からの伸び率に幅がある
という傾向も明らかとなった。
さらに、「入院」と「入院外」に分けると、この傾向は「入院」の方が強いことが分かった。2013年度と比較すると、入院医療費1億円未満となる小規模病院の「入院」では、上位25%が14%程度の伸び率をみせている一方、下位25%ではマイナス7%と、開きが大きくなっている。
入院医療費1億円以上の病院では、上位25%の「入院」は、4~6%の伸び率にとどまっている。
入院外についても同様の傾向がみられ、入院外医療費が2000万円未満の小規模病院では、前年度から12%の減少となっているところもあった。
参考資料
厚生労働省
「施設単位でみる医療費等の分布の状況~医科病院、医科診療所、歯科診療所、保険薬局~」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/dl/h28_0511_01.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
病院収入のばらつきが大きくなる原因を考えてみると、「病院によって集患力に違いがある」ことはもちろんですが、「地域によって競争が激しくなっている」こともあるかもしれません。
今回公表された資料をさらに詳しくみると、診療所についても同様の傾向があります。診療所では、さらに収入の幅が拡大しているようです。0.05億円未満(1施設あたりの医療費が500万円というのも驚きですが)の場合、上位25%では4%以上の伸び率となりましたが、下位25%ではマイナス16.7%です。前年度に比べて、2割近く収入が減っているところもある、ということです。
医療機関の数そのものは減少傾向、病床数も減少傾向が続き、これは今後もさらに強くなるといわれています。国の方針として「病院から在宅へ」が推進されている以上、これは仕方のないことでしょう。
その一方で医学部の新設など、医療者を増やす傾向は続いていますよね。医師不足、看護師不足の解消に努める一方で、働く場所は減っていく傾向にある、ということです。
今後の日本の情勢として、働き手そのものが減少傾向にあるわけですから、これも仕方のないことなのだとは思いますが、いずれ「医師過剰」とか「看護師過剰」とかに、ならないのでしょうか。特にこの先、新規開業を考えている医師にとっては、事前に十分な経営戦略を練らないと、あっというまに閉院に追い込まれる可能性も、否定はできません。
病院の場合、医療者が増えたのであれば、その分を医療者の負担軽減と、患者さんへの「ホスピタリティ」に充てることが出来れば良いのですが。
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