【医療ニュースPickUp 2017年7月13日】AIで内視鏡検査の大腸がん発見率98%に。国立がん研とNECが開発
2017年7月10日、大腸内視鏡検査で見逃しやすい大腸がんやポリープをAI(人工知能)によって自動で発見し、診断をサポートする技術を開発したことを、国立がん研究センターとNECの研究グループが発表した。
これは「内視鏡映像に大腸がんやポリープなどの異常画像を見つけると、警告音を発して画面上にその場所を示す」というもの。
これまでは、臨床現場においてリアルタイムで医師に画像情報をフィードバックするには、高度な画像処理と高速な演算処理が必要だったが、これを1台のPCで上実現した。
研究グループはNECの最先端AIに、早期がんや、がんになる可能性のあるポリープが写った約5,000例の内視鏡画像を記憶させ、ディープラーニング(深層学習)によって病変部を推定できるようなシステムを構築し、これを用いて新たな内視鏡画像を解析したところ、早期がんとポリープの発見率は98%だったという。
一方、医師の目視のみで行った場合、診断の技量にばらつきがあり、ある報告によれば、内視鏡検査で見逃されている病変は24%もあるという。
大腸がんは、ポリープから発生することが明らかになっており、米国の研究では、がん化しやすい大腸腺腫性ポリープを内視鏡手術で取り除いたところ、大腸がんの罹患率を76~90%抑制し、死亡率を53%減らした、という結果が出ている。
大腸がんの予防には、前がん状態であるポリープのうちに切除することが重要だが、内視鏡検査を受けたにもかかわらず大腸がんに至るケースが約6%あり、そのうちの58%は内視鏡検査時の見逃しが原因という報告もある。AIによって肉眼では見つけにくい前がん段階の病変の発見率が向上すれば、医師の技量による診断の格差が解消し、大腸がんの予防と早期治療に大きく寄与できると同センターは期待する。
今後は、大腸ポリープの質の診断や大腸がんのリンパ節転移の予測も可能になるよう、さらに研究を進めるという。
参考資料
国立がん研究センター プレスリリース
AIを活用したリアルタイム内視鏡診断サポートシステム開発 大腸内視鏡検査での見逃し回避を目指す
http://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/press_release_20170710.html
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
このプレスリリースを読み、いよいよ、がん診断に「AI」が登場する日が来たな、という印象を持ちました。今回の研究成果としては、あくまでも「ここにもポリープらしきものがありますよ」という警告をしてくれるものであり、実際に「それを切除するかを判断する」のは、内視鏡検査を行っている医師であることには、変わりありません。
しかし、医師も人間なのですから「見落とし」はあり得ますよね。それを「ここにもポリープらしきものがありますよ」という警告を発してくれるシステムは、頼れる相棒になるのではないでしょうか。
現在、AIはものすごいスピードで進化しています。前回のニュース記事でも「AI」に関するものを取り上げていますが、医療とAIはどこまで進化するのでしょうか。
現在のところ、AIの中でも「画像を元に深層学習を行い、特定の画像と似た様な画像を探し出す」というのは、もしかすると一番進んでいる分野なのかもしれません。また最近では、日本語音声入力アプリにAIが搭載され、音声入力を文字変換するだけはなく、その文脈に見合った顔文字の好捕を出してくれるものも登場しています。
そのうち、電子カルテへの入力が、医師による音声入力や(最終的には医師が確認してOKを出さないと、記録されないようにしないといけませんが)、検査画像からのキー画像候補のピックアップ、検査データの推移から「今必要な処置や投薬」の候補を挙げるものなどが、出てくるかもしれません。
これらも最終的には医師の「OK」が必要ではありますが(診療や記録に対する責任という意味で)、いずれにしても医師の負担軽減、患者さんへの安全性の向上、などに期待が持てそうです。
ただし、あまりにAIに頼りすぎてしまうと、「やるべきことが出来なくなる医師」も出て来てしまうのかもしれません。自分で考えることをしなくなる、そんな懸念も個人的には持っています。
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