【医療ニュースPickUp 2018年2月28日】大規模国際共同研究3,750症例の5年生存率を公表:がん研
2018年2月20日、国立がん研究センター(以下 国がん)がCONCORD-3※1の5年生存率を公表した。この研究は、国立研究開発法人国立がん研究センターがロンドン大学衛生熱帯医学大学院および40の国際研究機関と共同で行ったもの。
71カ国・地域における322の人口ベースのがん登録を用いて、2000~2014年の15年間で診断されたがん3,750万症例について、生存率を調査したもの。特定の病院からのサンプリング等でなく、一般人口で比較できる唯一の統計となっている。
国がんよると、日本のがん患者生存率は、従来通り世界的にトップレベルにあるものの、皮膚の黒色腫、成人のリンパ性・骨髄性悪性疾患については、欧米諸国と比較すると低い結果となった。
この調査は2008年から始まり、今回が3回目。対象となる部位は、成人の食道、胃、結腸、直腸、肝、膵、肺、女性乳房、子宮頸部、卵巣、前立腺、皮膚の黒色腫、成人と小児それぞれの脳腫瘍、白血病、リンパ腫の18部位。
前回調査の10部位よりさらに拡大した。大部分のがんの生存率はこれまで通り、米国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド・デンマーク・フィンランド・アイスランド・ノルウェー・スウェーデンで最も高くなった。生存率は予後不良のがんでも上昇傾向が見られ、肝がん、膵がん、肺がんで最大5%の生存率向上が見られた国も複数あった。
今回用いた日本のデータは国内の総人口4割をカバーし、データの入力や集計・算出方法が国際標準で行われているため、国際比較に用いるには現時点で最も信頼できるデータとなっている。
日本は消化器のがんの生存率が世界で最も高い水準にある国の一つで、肺がんや肝がんでも予後が良好となっている。
一方で皮膚の黒色腫や成人のリンパ性・骨髄性悪性疾患の生存率が低い結果となっているのは、日本人に発生しやすいがんの構成が、他の地域と異なることが考えられるという。
CONCORDのデータは2017年にOECD(経済協力開発機構)が保健医療の質を評価する指標の一つに採用しており、日本でも今後のがん対策に役立てられるだろう。
この研究結果は、イギリスの学術雑誌「The Lancet」に2018年1月30日付で発表された。
※1 CONCORD-3:2000-2014年の15年間に診断されたがん3,750症例の生存率に関する大規模国際共同研究
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【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
今回の研究では、日本の16府県のデータが使われているようです。これは日本の総人口のおよそ4割にあたるそうです。
極個人的な感想を述べるならば、日本の全国がん登録が始まったのが2016年ですので、今回の調査の対象には入らなかったのかもしれませんが、数年後に同じような研究を行うと、少し違った結果が見えてくるのかもしれない、と考えました。
公表されている今回の結果(日本)を見ると、5年生存率が高い順番に、前立腺がん、小児リンパ腫、女性乳がん、急性リンパ性白血病、子宮頸部がん、結腸がん、直腸がんとなるようです。
中でも前立腺がんは、調査対象国での生存率の大まかな範囲=70-100%、日本の5年生存率=93%、日本の経時的推移=20%向上 となっていますので、日本だけではなく世界的にも、予後が良いがんなのだということが、改めて分かりました。
これと比較すると、やはり肝臓がんやすい臓がんは、難しいがんなのですね。
今回は精度の問題で「参考値」という扱いになっているようですが、他の部位のがんの生存率と比べると、かなりの開きがあります。
すい臓がんは10%にも満たないようです。
国がんでは、日本の消化器がんの生存率が世界的にも高い理由として「医療水準のみならず、検診の実施状況や、罹患が多いことによる一般的な関心の高さが早期発見につながり、良好な生存率に貢献していると考えられます」としています。
しかし膵臓がんに対しては、「もしかして?」と疑うような初期症状(自覚症状)が無い事、有効なスクリーニング検査方法が無いこと、高齢化の進展や糖尿病患者数の増加などが、その原因と考えられていますよね。
しかし、年間で3万人以上が膵臓がんで亡くなっていることを考えると、有効な「早期発見の方法」が見つかることを、切に願います。
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