【医療ニュースPickUp 2017年10月15日】医療、福祉事業の倒産件数が2017年1-9月で累計186件に
東京商工リサーチは2017年10月10日、2017年1月から9月の間の「医療、福祉事業の倒産件数」が、186件にのぼっていたこと発表した。
前年同期の155件から20.0%の増加で、今年に入って月平均20.6件のペースで倒産していることになる。
このまま推移すると、年間倒産件数は250件に迫り、介護保険制度の施行された2000年以降で最多となる可能性もある。
1月から9月の医療、福祉分野における負債総額は326億700万円、前年同期比で82.5%の増加となり、9月の時点ですでに前年1-12月の負債306億4500万円を上回った。
全体を見ると、負債1億円未満の小・零細規模の施設が83.3%と多くを占めており、業種別では、マッサージ業、整体院、整骨院、鍼灸院などの「療術業」が57件、(前年同期比50.0%増)、
「病院・医院」が22件(同29.4%増)、「障害者福祉事業」が18件(同125.0%増)と、いずれの業種でも増加していることになる。
一方、「老人福祉・介護事業」は71件(同7.7%減)と前年より減少しているが、件数は全体の4割近くを占めており、2年連続で年間100件を超える可能性が見えてきた。
原因別では、
- 販売不振(業績不振)が104件
- 失敗が39件、
- 赤字累積などの既往のシワ寄せによるものが12件
となった。
倒産した事業者は9割が破産して事業が消滅しているが、民事再生法により再建した事業者は14件と、前年同期の4件に比べて大幅に増加した。
再建したのは「病院・医院」が6件(前年同期1件)で、とある地域での総合病院などが含まれている。
他は「老人福祉・介護事業」が4件(同ゼロ)、「療術業」が2件(同3件)などとなっている。
全国9地区別の内訳を見ると、近畿65件(前年同期44件)をはじめとして、関東55件(同53件)、九州22件(同18件)、中部16件(同13件)、中国12件(同5件)、北海道7件(同5件)、東北3県(同9件)、北陸3件(同6件)四国3件(同2件)の順になる。
2018年4月には、診療報酬と介護報酬のダブル改定を控えている。
国策として「医療費と介護費の抑制」が求められる中で、こうした変化に対応できない医療・福祉関連施設は、さらなる淘汰の波にさらされることになると予測されている。
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
今回は、医療や介護分野での「倒産状況」の調査結果からのニュースです。
このニュース、すでに目にしている方も多いかと思いますが、私自身は正直なところ「そんなに倒産の憂き目にあう事業者っているのか」というのが、最初の感想でした。
ニュースソースとしたサイトには、倒産件数と負債総額の推移グラフがあります。
これを見ると、倒産件数は年々増加傾向にありますが、負債総額は2007年あたりが最高で、それ以降は上下推移がみられるものの、2017年については2007年のおよそ半分程度のようです。
負債総額10億円以上の大型倒産も目立っているようですが、やはり負債総額1億円未満の事業者等が8割以上をしめており、弱者には厳しい戦いが強いられている状況は変わらないようです.
東京商工リサーチでは「老人福祉・介護事業」の倒産理由等を挙げ、「安易な起業や本業不振のため異業種からの参入失敗など、事前準備や事業計画が甘い小・零細規模の業者が思惑通りに業績を上げられず経営に行き詰まったケースが多いとみられる。」と推測しています。
これは、医療・福祉分野に限らず、どのような分野にも言えることだと思いますが、「今までの業務内容による業績が振るわないから、他業種へ」というのは、非常に大きな賭けになります。
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