【医療ニュースPickUp 2016年3月10日】「どう考えていきてきたか」が疾患リスクと関係? 国立がん研究センター
2016年3月4日、国立がん研究センター(東京都中央区 以下、国がん)は、多目的コホート研究(JPHC Study)の結果より、「日常経験するいろいろな問題や出来事への対処方法とがん・循環器疾患リスクとの関連について関連について」という調査報告書を公表した。この研究成果は、「Cancer Epidemiology」および「European Heart Journal」にて、Web先行公開されている。
積極的に情報を収集し、健康診断を受け、医療機関に相談する可能性が高い対処型の行動が大事
国がんの研究チームは、日常的に経験する「問題や出来事」に対し、人がどのような対処を行い、その結果として、がん罹患及び死亡、循環器疾患罹患・死亡との関連との関連を検討した。
研究チームは、「心理的ストレスに対応する」行動と疾患と疾患への罹患・死亡との関連性を調査するため、被験者に対して、次の6つの行動パターンについてそれぞれの頻度を質問するアンケート調査を行い、それぞれを頻度の少ない群と多い群に二分し、がんや循環器疾患のリスクを比較した。
- 対処型行動:「解決する計画を立て、実行する」「誰かに相談する」「状況のプラス面を見つけ出す努力をする」
- 逃避型行動:「変えることができたらと空想したり願う」「自分を責め、非難する」「そのことを避けて他ほかのことをする」
対象となったのは、がんの研究対象に該当した55,130人で、7~11年間の追跡調査を行った。その結果、5,241人が「がん」を発症し、1,623人のがん死亡が確認された。また、循環器疾患については、57,017人に同様の追跡調査を行い、304人に心筋梗塞、1,565人に脳卒中が発生した。さらに、191人の虚血性心疾患死亡、331人の脳血管疾患死亡が確認された。
その結果、それぞれの疾患に対しては、以下のような傾向がみられた。
【がんへの罹患・死亡リスク】
- 対処型行動をとる人でがん死亡のリスクが低下
- その中でも、「状況のプラス面を見つけ出す努力をする」人でがん死亡のリスクが低下
- 全がん罹患では有意な関連はみられず、対処型行動で限局性がんや、検診でがんが発見されることが多い
【循環器疾患への罹患・死亡リスク】
- タイプ別で罹患のリスクに有意な違いはみられず
- 対処型行動をとる人では、脳卒中のリスクが低下
- 対処型行動をとる人で循環器疾患による死亡のリスクが低下
国がんでは、今回の調査結果より、積極的に情報を収集し、健康診断を受け、医療機関に相談する可能性が高い対処型の行動を培うことが、(疾患への罹患・死亡リスクを軽減するために)重要と考えられる」としている。
参考資料
国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究グループ
2016/3/04 日常経験するいろいろな問題や出来事への対処方法とがん・循環器疾患リスクとの関連について関連について
http://epi.ncc.go.jp/jphc/773/3782.html
同上 日常経験する問題や出来事に対する対処の仕方とがん罹患及び死亡との関連について
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3776.html
同上 日常経験する問題や出来事に対する対処の仕方と循環器罹患及び死亡との関連について
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3777.html
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
今回のニュースも、国立がん研究センターからです。
いわゆる生活習病のリスクとして、食事・運動などの生活習慣が関連していることは分かっていましたし、これらの生活習慣が、循環器疾患だけではなく、がんにも関係しているとはいわれてきましたが、「物事への考え方・対処の仕方」も関係している、というのが今回の調査結果です。そういわれてみれば、何事に対しても「逃避型の対処行動」をしない人、逆に「積極的に解決する計画を立て実行するような対処型の行動をとる人」では、自分自身の健康管理への関心も違うから、ということのなのでしょう。
私の周りの人を見ても、前者よりは後者の人の方が、健康診断を受けること、治療に対して積極的に取り組むこと、などをしているように思います。自分自身はどうなのか?と考えてみましたが、どちらかといえば前者なのでしょうか。
とはいえ、ここ3年ほどは(出産とかもあったので)まともに健康診断も受けていませんが、今年は受けることにしています。
そろそろ、がんや生活習慣病がが増えるお年頃でもありますので、ちょっとどきどきしていますが…。自分の身体は客観的に見ることも必要だということは、今の仕事をする上でも見てきていますので、きちんと健診は受けようと思います。
「医者の不養生」という言葉がありますが、患者さんだけではなく、医師や看護師などの医療者も、自分自身の身体を労わってあげてほしいと思います。
この記事をかいた人
医師キャリア研究のプロが先生のお悩み・質問にお答えします
ツイート