【医療ニュースPickUp 2018年2月1日】長期にわたるストレスでがんリスク増。国立がんセンターが発表
高いストレスを長期にわたって感じている男性は、がんになるリスクが2割高まるという研究結果を、国立がん研究センターのチームが2018年1月19日までに発表した。
研究チームによると、ストレスががんになる危険性を高めるという研究はすでにあるが、長期間にわたる大規模調査をもとにした研究報告は初めてという。
この研究は、1990年~2012年の間、分析の対象になった40歳から69歳までの男女7万9301人※1に対し、平均17.8年間の追跡調査を行ったもの。
追跡調査の結果、追跡調査中にがんになったのは1万2486人。
長期的に自身が感じるストレスレベルが高いとすべてのがんで罹患リスクが高くなり、男性にその関連性が強いことがわかった。
特に肝臓がんと前立腺がんでは、自覚するストレスが高い場合にリスクが上昇した。
※1 :1990年は岩手県二戸・秋田県横手・長野県佐久・沖縄県中部、1993年は茨城県水戸・新潟県長岡・告知県中央東・長崎県上五島・沖縄県宮古・大阪市吹田の計10保健所管内の在住者で、追跡調査開始時にがんではなかった者
調査では、開始時とその5年後の計2回、本人が感じているストレスの度合いについて、低・中・高の3段階に分けて質問し、その後にがんにかかったかどうかを確認した。
2回とも「ストレスが低い」としたグループを基準にして比較すると、2回とも「ストレスが高い」と回答した男性のグループは、がんになるリスクが2割高いという結果が出た。
この原因として、高いストレスを常に感じていたのは主に男性であったこと、ストレスの多い男性は飲酒や喫煙など、がんのリスクを高める生活習慣を持ちやすく、統計時にこれらの影響を完全には排除できなかったことなどが可能性として考えられる。
しかし、まだがんとストレスの関連は研究が進んでおらず、原因は特定できていないという。
ストレスがさまざまな病気のリスクを高め、特に慢性的なストレスは一時的なストレスよりも影響が大きいことは従来指摘されている。
しかし、そのメカニズムは未だ解明されてはおらず、がんとの関連も研究が進んでいない。
今回、研究チームでは「肝臓についてはストレスの影響を受けやすい可能性があるが、他の部位については現在まで得られた知見が少なく、今後ストレスとがん罹患のメカニズムについて更なる検討を行うことが重要」としている。
参考資料
国立研究開発法人 国立がん研究センター
多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果 自覚的ストレスとがん罹患との関連について
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2018/0120/index.html
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【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループが行っている多目的コホート研究(JPHC Study)の一環として行われたもののようです。
これは「「多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究」(主任研究者 津金昌一郎 国立がん研究センター社会と健康研究センター長)」の元、全国11保健所と国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、大学、研究機関、医療機関などとの共同研究として行われているものです。
今回の研究では、女性よりも男性で「ストレスとがんの関連性が高い」という結果が出ています。国立がん研究センターではこれについて
- 本研究の対象者のうち、常に高いストレスを受けていたのは主に男性であった
- 女性よりも男性の方がストレスに対する生理的影響が大きい可能性が考えられる
- ストレスレベルが高い男性は、喫煙や飲酒など、がんのリスク要因となる生活習慣をもつ傾向が強く、統計学的にこれらの影響は考慮したものの、完全に取り除くことはできなかった可能性がある
としています。
確かに、がん罹患率や5年生存率などで比較すると、どちらも男性の方が高いがんというのはあります。
全がん罹患率だけではなく、部位別でも男性の方が高くなっているがんがいくつかあります。
ただ、今回のような「男性の方が女性よりも、ストレスによりがんになりやすい」という情報が公開されると、一般の人たちの間で間違った認識が広まってしまうことが懸念されるのではないでしょうか。
実際、同じニュースソースで書かれたニュース記事の中には「男性」を強調しているような記事があります。
必ずしも女性だからといって強いストレスを受けにくいということではなく、現在のようなストレス社会、さらに「女性も働きに出る」という風潮の中では、男性以上のストレスを感じている女性もいます。
彼女たちが10年後、20年後にがんになっているかどうか、その間のストレスの大きさや生活習慣はどうだったのか、その辺が見えてくると「ストレスとがんの関係性」が、より明らかになるように思います。
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