【医療ニュースPickUp 2017年12月4日】世界初!超細型カメラ搭載の新型内視鏡が誕生 阪大とパナソニックが開発
2017年11月28日、国立大学法人 大阪大学(大阪府吹田市、総長 西尾章治郎、以下 阪大)とパナソニック株式会社(大阪府門真市、代表取締役社長 津賀 一宏、以下 パナソニック)は、世界初の「イメージセンサー先端搭載型血管内視鏡カテーテル」の実用化に成功したことを発表した。
パナソニックのプレスリリースによると、これまでの血管内治療には、超音波(IVUS)や光干渉断層法(OCT)などが用いられてきた。
しかしこれらの機器は、単色であり、血管断面の観察に対しては効果を発揮してきたが、血管内部を直視できるデバイスは無かった。
実際の臨床においては、リアルタイムで血管内腔を見ながら治療したいというニーズがあり、今回の開発を行うことになった。2013年からおよそ4年をかけて開発されたことになる。
今回開発された「血管内視鏡カテーテル」は、先端にイメージセンサーを搭載することで、フルカラーで血管内腔から、前方方向を観察することを可能にしているという。
今回の開発にあたっては、血管の中に挿入する細いカテーテルの先端に、更に小さなイメージセンサーを実装する精密加工技術、およびこれらを制御し高画質画像を構成する技術、二つの技術が必要だった。
阪大らのグループは、2013年11月に国際医療機器展MEDICAにて、パナソニックが持つ技術に出会い、帰国後すぐに共同開発の体制を整えたという。
翌年からは経済産業省、さらに翌年からは国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の医工連携事業化推進事業の支援を受けた。その後、さまざまな実験のフェースを経て、約4年をかけて実用化に至った。
主な特徴としては
- 世界初!のイメージセンサー先端搭載血管内視鏡カテーテル
- フルカラーで血管内の前方視を実現
- 直径1.8mmで約48万画素相当の高画質を実現
などがあげられている。
パナソニックでは、今回の製品について、「血管内の動脈硬化の様子や、血栓、ステント留置後の状態を、高画質のフルカラー画像で把握することが可能になる。
これにより、血管内治療における病変部の情報を術者に提供できるだけではなく、近年増加傾向にある完全閉塞病変など治療難度が高い症例において、前方方向にある治療ターゲット部位の情報をリアルタイムで提供できる。」としている。
さらに、新薬の効果や新しいステント、人工血管などを評価し、血管内治療の発展に大きく貢献することが期待されている。
参考資料
パナソニック株式会社 プレスリリース
世界初!イメージセンサー先端搭載 次世代血管内視鏡カテーテルを開発
―大阪大学とパナソニックの産学医工連携で実現―
http://news.panasonic.com/jp/press/data/2017/11/jn171128-1/jn171128-1.html
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
このニュースを始めて見たとき、「内視鏡で血管を見るの?」という驚きがありました。ついに内視鏡もそこまできたか、というのが正直な感想です。マッチ棒よりも細い内視鏡、これを思いついた阪大のグループもスゴイですが、実際に作ってしまったパナソニックもスゴイと思います。
内視鏡といえば真っ先に浮かぶのが「消化管内を観察する内視鏡」でしょうか。腹腔内、膀胱内の手術や、脊椎の手術にも使われていますよね。それでもやはり、一番進歩して見えるのは、消化管内の内視鏡という印象があります。最近では、レーザー内視鏡やカプセル内視鏡なども出てきており、それだけでも「ずいぶんと進歩した」と感じたのですが、さすがに血管内に入る細さになると、素直に「スゴイ!」と感じます。
元看護師という視点でみると、少し気になるのが、内視鏡によるトラブルです。例えば、消化管内視鏡による偶発症としては、穿孔や出血などがありますよね。検査回数に対していえば1%にも満たないくらいですが、それでも死亡例があるようなケースもゼロではありません。
こういったことを考えると、血管内内視鏡を行う際には、万が一に備えた準備(例えば血管損傷部を修復するための器械や医療材料)をしておくべきなのか。
自分自身が手術室看護師だったので、こういったことが少し気になりました。
実際、私が手術室に勤務している間に、「胃カメラによる胃穿孔」という症例にはあたったことが無いので分かりませんが、もし血管の穿孔があったらとしたら、血管の太さ(部位)によっては緊急手術になるのでしょうか?と、要らぬ心配をしてしまいました。
とはいえ、そういったトラブルを差し引いても、今回の開発は単純に「スゴイ」と思いますし、これも「医工連携」の一つの形なのだと思います。
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