【医療ニュースPickUp 2016年9月7日】なぜか“はしか”が流行中 厚生労働省からも注意喚起
厚生労働省によると、全国的に“はしか=麻しん”への感染例が増えているという。日本は、2015年 年3月に、世界保健機関西太平洋地域事務局より、麻しんの排除状態にあると認定されていたが、その後も海外への渡航歴のある患者や、その接触者からの患者の発生が、症例数が少ないながらも続いている。
罹患者がコンサート会場に出現するという事態
麻しんは感染力が強く、発症している人とマスクなしで対面で会話や握手をしただけでも感染の可能性があるといわれている。
麻しん患者が他人への感染性を示す時期に、広範囲の不特定多数の者に接触すると、広範な地域において麻しん患者が発生する。
今年7月には千葉県で、高熱の症状を呈していた男性がコンサート会場へ出かけていたことが分かったり、同8月からは関西国際空港の職員の間で集団感染の可能性が広がるなど、一部の地域ではあるが感染が拡大していることが分かっている。
これらを受け、厚生労働省では2016年8月24日付けで、各都道府県、各保健所設置市、各特別区の衛生主管部(局)長宛に、「麻しんの広域的発生について」という事務連絡を発出している。
同様の事務連絡は、公益社団法人日本医師会宛てにも発出されている。
厚生労働省は医療機関においての留意点を次のように示している。
- 医療機関等において、発熱や発しんを呈する患者が受診した際は予防接種歴の確認など麻しんの発生を意識した診療を行うこと
- 麻しんと診断した場合には都道府県知事等へ速やかに届け出ること
- 麻しんの感染力の強さに鑑みた院内感染対策を実施すること
尚、国立感染症研究所が公表している感染症発生動向調査(IDWR)によると、8月24日までの1週間で、13名の感染者の報告例が出ていることが分かる。
過去5年の中で比較すると非常に少ない症例数ではあるが、1週間の間にこれだけの患者数が報告される現象は、2015年以降はみられていない。
さらに2016年1週目から33週目までの累積患者数は32で、そのうち19例が国内感染であることから、注意喚起が続いている。
参考資料
厚生労働省 事務連絡 「麻しんの広域的発生について(情報提供)」
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000134554.pdf
朝日新聞デジタル 「関西空港職員ら16人、はしかに集団感染」
http://www.asahi.com/articles/ASJ80319YJ80PTIL00K.html
読売新聞 「はしか感染増加、厚労省有識者会議が早期受診呼びかけ」
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160901-OYTET50028/?catname=news-kaisetsu_news_kenko-news
国立感染症研究所 感染症発生動向調査 感染症週報(IDWR)
2016年第32週(8月8日?8月14日):通巻第18巻第32号
http://www0.nih.go.jp/niid/idsc/idwr/latest.pdf
同上 速報グラフ 2016年第33週
http://www0.nih.go.jp/niid/idsc/idwr/diseases/measles/measles2016/meas16-33.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
日本は、公衆衛生面を考えると、世界的にみて感染症の流行が多い国とは思い難いのですが(私見です)、今度は“はしか=麻しん”の流行が懸念されています。
日本国内での感染例は、2014年以降、激減していたようですが、ここにきて、全感染例の半数以上が国内感染、という結果が出ているようです。
もっとも感染者数が多いのは千葉県であり、国内感染例が多数を占めています。また、この1~2週間で関西空港の職員間での感染の拡大がありますので、関西地方での感染報告例も増えていると推測されます。
麻しんは、年齢を問わず、命にかかわることがありますが、一番の予防手段が子供の頃に行う予防接種。
今時の子ども達は、予防接種はちゃんと受けましょう!というのが浸透しつつあるので、かなり接種率は高いのだと思いますが、例えば現在の40歳代以上の人たちは、すでに自分が子どもの頃に予防接種を受けたかどうかも不明な人が多いですし、その親たちだってどうだったかは覚えていないでしょう。
自分の母子手帳とかがあれば別ですが(そう考えると、母子手帳って一生持っていたい大事なものですね!)。
まだ予防接種を受けていない乳児の間で感染が拡大するのは何となく予測が出来ますが、国立感染症研究所の資料によると、2016年 第1~33週の累積患者の年齢別割合は、30~39歳が最も多く(25%)、次いで20~29歳(22%)だそうです。
この年齢の人たちは、予防接種を受けてこなかった世代なのか?という疑問が浮かんできます。同じ資料を良く見ると、この世代の人たちは予防接種を「受けていない」あるいは「不明」に人が多いようです。
まだまだ暑い日が続き、ジカ熱の心配もさることながら、麻しん予防への対策も、しっかりしていきたいと思います。
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