【医療ニュースPickUp 2015年9月25日】 健診でわかった「労働者の6割以上に異常所見」 山形県労働局調査より
2015年9月24日、山形県労働局が、昨年度に県内で行われた職場の健康診断結果をまとめたところ、6割以上の労働者に、異常所見があったと報道された。山形県労働局では、9月初旬にこの結果を公表し、注意を呼び掛けている。
毎年9月を「職場の健康診断実施強化月間」と位置付け
山形県労働局によると、常時50人以上の労働者を使用する事業者から提出された報告書を元に、分析を行ったという。その結果、次のことが分かった。
- 職場の定期健康診断において、何らかの異常の所見があるとされた労働者の割合は、60.1%(全国平均53.2%)であり、全国で4番目、この10年間の推移をみると、異常所見のあった労働者の割合は横ばいで推移している。
- 検査項目ごとに、異常所見があった労働者の割合では、血中脂質検査が38.8%と最も高く、次いで、血圧(19.3%)、肝機能(17.9%)、心電図検査(14.6%)、血糖検査(13.2%)と続き、これらの項目はそれぞれ全国平均を大幅に上回っている。
- 主要業種別に異常所見があった労働者の割合では、建設業が72.3%(全国平均62.6%)と最も高く、運輸交通業65.8%(全国平均61.0%)、 製造業61.3%(全国平均51.9%)となっており、いずれも全国平均を上回る結果となった。
この結果を受け、山形県労働局は、全国労働衛生週間準備期間である毎年9月を「職場の健康診断実施強化月間」と位置付け、健康診断の確実な実施と、健康診断実施後の措置を徹底するよう指導を行うこととしている。
さらに、事業者ならびに産業保健スタッフへ、労働者のからだと心の健康管理等の総合的な支援を行っている「産業保健総合支援センター」の利用を呼びかけている。
公表されている資料によると、山形県内の産業保健総合支援センターは、2014年4月より、運用体制の強化が行われている。労働者のからだと心の一体的な健康管理や作業環境管理、作業管理などを含めた、総合的な労働衛生管理の進め方についての相談などを受付けるなど、企業内での産業保健活動への総合的な支援を実現すべく、それまでは3つに分かれていた事業を一元化させた。
尚、厚生労働省が公表している「業務上疾病発生状況等調査(2014年)」によると、職場の健康診断で何らかの異常所見が認められた労働者の割合が最も高いのは沖縄県(63.8%)で、これに秋田県(63.7%)、福井県(62.9%)が続いている。
一方、異常所見が認められた労働者の割合が最も低いのは鳥取県(49.4%)であり、これに、三重県(49.9%)、愛媛県(50.0%)が続いている。
参考資料
山形県労働局 職場の健康診断で、働く人の約6割に黄色信号!!
~ 脳・心臓疾患に関係する項目が全国平均を大幅に上回る ~
http://yamagata-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/yamagata-roudoukyoku/info/kijun/eisei/pdf/h27/201509140930.pdf
厚生労働省 平成26年 業務上疾病発生状況等調査結果
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/dl/h26-10.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
私自身、これまでには十数回の「職場の健康診断」を受けてきましたが、とりあえず異常所見が確認されたことはなかったので、世の中の実情を、今回初めて確認しました。異常所見が確認される労働者って、意外と多いなというのが、個人的な感想です。単純に計算すると、健康診断を受けた労働者のうち、一番少ないところが2人に1人の確率で異常所見がみられ、多いところでは3人に2人の確率になりますよね。
日本予防医学協会のサイトでは、判定区分の種類を、異常なし(所見なし)、有所見健康、生活注意、要経過観察、経過観察中、要再検査、要精密検査、要医療(要治療)、加療中(治療中)、判定不能の10段階で設定しているようです。
今回の厚生鵜労働省および山形県の調査結果では、どこまでを「異常所見」と取っているのかが分かりませんが、「異常なし(所見なし)」以外すべて、というのであれば、数は増えるだろうなとは思います。
それにしても、建設業の72.3%って、やはり多いですね。社長以下10名の建設事業者であれば、「社長と事務員の女性2人を除く全員が何らかの異常所見あり」ということになりそうです。実際、こういった中小企業は結構あるのではないでしょうか。
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