【医療ニュースPickUp 2016年6月10日】虫が媒介する感染症 WHOがオポローチウイルス熱の患者を報告
2016年6月6日、厚生労働省が運営する「厚生労働省検疫所 FORTH」は、ペルーの保健省がオロポーチウイルス熱の患者57人を報告したと公表した。これは、世界保健機関(以下、WHO)が公表した、2016年6月3日付けのDisease outbreak newsによるもので、アマゾンの熱帯雨林帯にある街からの報告であったという。
ペルー国内で感染患者が確認される
ベル―国内で「オロポーチウイルス熱」の患者が確認されたことはこれまでにもあったが、今回、確認された地域は、ペルー国内のクスコ県にあり、この地域で患者が確認されたのは初めて。
今回。ペルーの保健省からWHOへ報告されたのは57症例。このうち、79%は2016年1月、7%が2月、14%が3月に確認されている。これまでに死亡例はなく、全員が対症療法によって回復しているという。
WHOによると、有力な媒介昆虫はヌカカの1種であるCulicoides paraensis midgeとのこと。過去に症例が確認されていないこれらの地域で、今回、特異的にオロポーチ熱の症例が確認されたのであれば、このヌカカがクスコ県に生息していることを確認することが重要だとしている。
この先、クスコ県とペルー国内、その他の地域でさらなる患者が発見される可能性もある。アメリカ大陸では現在、有力な媒介昆虫が広い地域に分布していることから、今後、他の国や地域で患者が発見されるというリスクは重要であるとしている。
オロポーチ熱は、潜伏期間が4~8日程度で、デング熱と同じような症状を発現する。突然の高熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、嘔吐などの症状があり、一部の患者では、無菌性髄膜炎を起こすことがある。
現在までには、人から人へのウイルスの直接伝播は記録されていないが、アメリカ大陸では、ブラジル、エクアドル、パナマ、ペルー、トリニダード・トバゴ共和国の農村部や都市部の地域で、過去にもオロポーチウイルス熱の流行が確認されている。
参考資料
厚生労働省検疫所 FORTH
2016年06月06日更新 オロポーチウイルスの発生について -ペルー
http://www.forth.go.jp/topics/2016/06061326.html
同上 感染症定期報告の報告状況(2010/3/1~2010/5/31)
http://www.mhlw.go.jp/stf2/shingi2/2r9852000000k6i4-att/2r9852000000k7t6.pdf
WHO Oropouche virus disease - Peru
http://www.who.int/csr/don/03-june-2016-oropouche-peru/en/
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
「オロポーチ熱」って、初めて聞きました。ちょっと響きが可愛らしく聞こえる感染症ですが、国立感染症研究所が運営する感染症疫学センター(IDSC)のサイトには、情報が無いようです。普通にGoogleで「オロポーチ 感染症」などで検索しても、有益な情報があまり出てきません。厚労省のサイトではかろうじていくつか見つかりますが、「過去に感染例があった」という報告です。オロポーチ熱の病状とか疫学的なことは、まだあまり公開されていないようです。
こういった、耳慣れない感染症(しかも虫が媒介)を聞くと、症状は?治療法は?予防法は?と、色々気になってしまいます。性格的なものか、経歴が関係しているのか…。
ところで、ヌカカって今回初めて聞きましたが、調べてみると「糠粒のように小さな蚊のような虫」といいうことから、ヌカカと呼ばれているようです。夏の水辺で一塊になって飛んでいたり、網戸をすり抜けて住居に入り込んだりするとのこと。体長は1㎜程度なので、外を飛んでいても、まず気づかないでしょうね。
塊になって飛んでいれば別ですが。よく、川辺とか草むらで、塊になって飛んでいる小さな虫で、ユスリカというのがいますが、これの仲間のようです。「蚊」といっていますが、実はハエの一種で、一部のメスが吸血性をもっているのだとか。今度はハエか!
日本での感染例はまだ無いようですし、南米大陸で見つかった感染症が今すぐ日本に入ってくることは少ないだろうと思いますが、今年の夏は虫対策が必要かもしれません。
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