【医療ニュースPickUp 2017年12月16日】美容医療で、一部に「クーリング・オフ」が適応される
2017年12月1日、一定の要件に該当する美容医療サービスについてクーリング・オフ等が可能になる、特定商取引に関する法律等(特商法)の改正法が施行された。
クーリング・オフは、特商法で政令や省令に定められた要件(提供機関、金額、施術内容等)に該当した契約が対象になるが、今回の改正で、クーリング・オフの対象となる要件に美容医療サービスに関するルールが新たに追加されることになったのだ。
美容医療サービスとは、医師による医療のうち、医療脱毛・脂肪吸引・豊胸手術・二重まぶた手術・審美歯科など、「もっぱら美容の向上を目的として行われる医療サービス」を指す。こうしたさまざまな美容医療サービスが身近になっていく中で、トラブルが発生することも少なくない。
全国の消費生活センターに寄せられる美容医療サービスに関する相談件数は、ここ数年は2,000件程度で推移しており、患者に危害が及んだケースも毎年数百件レベルで発生している。
今回の改正では、美容医療サービスにおいて、提供期間が1カ月を超え、金額が5万円を超える以下のサービスが「特定継続的役務提供」として規制される。
- 脱毛…光の照射や、針で電気を流して行う方法
- ニキビ・しわ・ほくろ・入れ墨などの除去や皮膚の活性化…光や音波の照射、薬剤の使用、機器を用いて刺激する方法
- しわやたるみの軽減…薬剤の使用や、糸を使う方法
- 脂肪の減少…光や音波の照射、薬剤の使用、機器を用いて刺激する方法
- 歯の漂白…歯へ漂白剤を塗る方法
こうした要件に該当する場合、サービス提供者は
- サービスの概要書面、契約書面の交付
- 迷惑な勧誘の禁止
- 不実告知、または故意の事実不告知
- 威迫、困惑行為の禁止
- 誇大広告等の禁止
などの規定を順守し、クーリング・オフ、中途解約などに応じなければならない。契約書面を受け取った日を1日目として、それ以降の8日間ならば、クーリング・オフが可能になる。
国民生活センターでは、美容医療を受ける際に注意すべきポイントとして、以下のようにまとめている。
- クリニックのホームページ等の記載だけで判断せず、情報を収集する
- 契約内容を理解し納得できるまで、医師から説明を受ける
- 即日施術や、本来保険適用となる施術に対して高価な施術を強く勧めるなど、問題のある勧誘をするクリニックとは契約しない
- 困ったときには消費生活センターなどに相談する
また、施術によって危害が発生した場合は、施術をやめて医師の診察・治療を受ける、補償などを求めたい場合には早めに医療機関で診察を受けて診断書をとり、弁護士に相談しておくなどの対策もアドバイスしている。
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【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
初めてこのニュースを目にした時、美容医療では「中途解約」や「クーリングオフ」が出来なかった、ということに驚きました。
「サービスの概要書面、契約書面の交付」もわざわざ明記されているわけですから、これまではこうした書面等が無いまま、施術を受けてしまうケースも、多かったのでしょうか。
例えば保険診療を行う医療機関であれば、何かしらの(患者さんへの侵襲が大きい)検査・処置・手術にいたるような場合は、必ず「承諾書」を書いて頂いていると思います。
特に手術の場合は「術中の不測の事態」にそなえるべく、手術室への入室直前、緊急手術の場合はモニター類装着後の麻酔直前のタイミングであっても、承諾書にサインを頂かないと、実際の手術が行えないケースがほとんどです。
例外として、患者さん自身に意識が無い、なおかつ家族が来るまで待てない、といったような場合には、「承諾書無しで緊急手術」となる場合もあるのかもしれませんが、少なくとも、麻酔をして体にメスを入れるならば、「事前の承諾書」は必須なのかと思っていました。
ところで、最近テレビCMなどのマスメディアなどで、美容外科クリニックの宣伝が増えてきたように感じます。今年は美容外科分野にとって、大きな動きのあった年だったのではないでしょうか。Webサイトを広告と認め、過大広告に対する監視(ネットパトロール)が始まり、そして今回です。
確かに、美容医療の施術を受ける側は一般の方ですから、難しい医療用語を並べ立て、相手を混乱させることで、その機に乗じて「今なら半額ですよ」などと決定を焦らせる方法は良くないと思います。
一度スタートしたら途中解約できない、満足がいかなくても費用は負担しなくてはいけないなど、そのやり方は決して褒められるものではありません。
とはいえ、これらが「規制されなくてはならない」という仕組み自体、どこか間違っているように思えてなりません。
正式な「契約書」が無いままにスタートしたものは、満足いく結果が出なければ払いたくない、という気持ちも良く分かります。
医療サービスの消費者側も、賢くならなければいけませんよね。
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