【医療ニュースPickUp】2015年6月26日
医療にまつわる気になるニュースを当研究所独自の目線で掘り下げて記事にしている「医療ニュースPickUp】。このコーナーでは、まだ大手マスメディアが報道していない医療ニュースや、これから報道が始まるだろう時事的医療ニューストピックを、どこよりも半歩素早く取材・記事化していくコーナーです。
介護の人材不足の数値が驚異的
2015年6月24日、厚生労働省は、今後の介護の人材不足の状況をまとめた資料を公表した。これによると、今から10年後の2025年には、介護人材の供給は全国でおよそ215万人となるが(推計)、需要見込みは253万人であり(推計)、およそ37.7万人のギャップがあるとしている。
需要の見込み(約253万人)は、各市区町村がとりまとめている、第6期介護保険事業計画に位置付けられた、サービス見込み量等に基づいて推計された。
一方の供給見込み(約215万人)については、近年の入職・離職等の動向に将来の生産年齢人口の減少等の人口動態を反映した、現状推移シナリオによる推計となっており、この中には平成27年度以降、追加的に取り組む予定である新たな施策の効果は含まれていないという。
都道府県ごとの推計データによると、需要と供給のギャップがもっとも大きいのは東京都で、その数は35,751人。次いで、大阪府(33,866人)、埼玉県(27,470人)、神奈川県(24,701人)、愛知県(24,391人)と続く。
一方、供給が需要を上回る都道府県は無いものの、そのギャップが比較的小さいのは、島根県(326人)であり、これに佐賀県(605人)、高知県(901人)、鳥取県(907人)と続く。
ギャップが大きくなっている地域では、そもそもの介護職員数が少ないわけではない。例えば東京都では、2913年現在で154,609人と全国で最も多くの介護職員が存在している。2017年度の推計ではその充足率も92.7%だ。
しかし年々、需要見込みに対する供給数との差が開き、2025年度には3万5千人以上が不足する、という計算になる。他の地域をみても、ギャップが拡がる都道府県は現時点での人口が比較的多い地域でもあり、今後の少子高齢化に対する人口増加率などから鑑みて、新たな人材確保が難しい状況にあることが伺える。
厚生労働省では新たな人材確保の方針として、現在のような専門性が不明確であり、介護に対する役割が混在する「まんじゅう型」の状況から、介護に対する裾野を広げ、より専門性の高い人材を育成する「富士山型」の姿へと転換を図るとしている。国や地域での基盤整備が必要であり、具体的には
- 参入の促進
- 労働環境・処遇の改善
- (介護職員の)資質の向上
という3つの方針を掲げ、介護を担う人材を目指したいとしている。
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
日本では10年以上前から、医療の人材不足が問われています。ここにきて、介護もこれだけ人材不足なのか、という現実がやっと見えてきたのかもしれません。介護保険制度が始まった当初はおよそ55万人だった介護職員数は、2013年にはおよそ3倍に増えているそうです。それでもまだまだ人材が足りない。少子高齢化の影響って本当に大きいのだと、改めて実感しました。
厚生労働省が現在計画している施策をみると、介護職への参入のしやすさを推進するところに重点を置いている気がします。例えば、「中高年齢者の地域ボランティア参画等の促進」「他産業からの参入促進を図るため、通信課程を活用」「資格取得の支援(実務者研修の受講期間の柔軟化等)」「代替職員の確保等による研修機会の確保」などです。
「裾野を広げる」となっていますが、とにかく人を集めたい、その為には基礎的な知識を持たない人でも活用する。例えば就業していない女性・他業種・若者・障害者・中高年齢者など、使えるものは何でも使う、と見て取れます。
医療分野でも、将来的には人材不足がさらに進むことが想像されますが、こちらは「基礎的な知識を持たない人でも活用する」とはいきません。国の施策として「病院から在宅へ」という動きも活発になっていますが、家に帰れば結局は医療と介護の両方が必要になりますので、じゃあ在宅になれば安心か、というとそうでもないですよね。
今回公表された資料には一言も書かれてはいませんが、そろそろ「外国人の労働力」を、受け入れるべき時期に来ているのかもしれません。
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