【医療ニュースPickUp 2016年1月12日】国立がん研究センターによる、がん情報データベースの一元管理がスタート
国立がん研究センター(東京都中央区 以下、国がん)は2016年1月8日、「がん登録センター(センター長:西本寛、Center for Cancer Registries:CCR)」をがん対策情報センター内に開設したと発表した。これは、全国でのがん登録を推進し、国民・患者に役立つがん登録の確立を目指すためのもの。2016年1月1日から施行「がん登録等の推進に関する法律」が施行されており、法に基づいて開設された。
「全国の正確ながん罹患数」の把握が可能に
全国のがん登録、および院内がん登録の推進と、がん対策の情報基盤となることで、「国民・患者に役立つがん登録」の確立を目指す。
国がんの発表によると、「がん登録センター」で行われる業務は主に3つある。1つは、全国がん登録において、全ての病院等から都道府県に提供されるがん情報を、一元的に集約すること。2つ目は、都道府県と国のがん対策の基盤として用いられるよう、データベースを整備することであり、3つ目はここで整備されたデータの提供・分析を行うことである。
「がん登録等の推進に関する法律」により、全ての病院や都道府県が指定した診療所には、届出義務が課せられているため、がん情報が漏れることなく収集される。結果的に、「がん登録センター」が稼働することで、日本全国どこの医療機関でがんと診断されても、国のデータベースで一元管理されることになる。
例えば、都道府県をまたがった受診や、転居による重複や漏れを防ぐことができる。さらに、万が一死亡した場合には、その情報は各市区町村から提供されるという。
国がんはがん登録センターが稼働することで、今まで集計できなかった「全国の正確ながん罹患数」を把握でき、国や地方自治体でのがん対策に役立てるとしている。
がん診療連携拠点病院等ではすでに「院内がん登録」が実施されているが、これにつては、データの収集(一元化)および分析と提供、院内がん登録実施医療機関との連携を強化するという。
いずれのがん登録においても、情報の収集には人材の育成や、情報収集のルール、さらには手順の標準化が不可欠である。これらの作業においても、リーダーシップを発揮するとしている。
参考資料
国立がん研究センター プレスリリース
全国がん登録を推進し、国民・患者に役立つがん登録の確立を目指す 「がん登録センター」開設
http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20160108.html
同上 がん登録センターの概要(PDF)
http://www.ncc.go.jp/jp/information/pdf/press_release_20160108_summary.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
全国がん登録、いよいよ動き出しましたね。「がん登録等の推進に関する法律」は、平成25年12月に制定されました。それからおよそ1年、やっと「施行」されたようです。
医療ITに関する仕事をしていて、常に感じていたことですが、データって集めるだけでは意味がないですよね。集め方にも共通したお作法が必要ですし(いわゆる標準化というやつです)、集めるリスクも考えなくてはいけません。
このデータベースは、患者の個人情報を含んだ、非常に秘匿性の高いデータになるそうですから、集め方にはものすごく気を使って欲しいです(いわゆるセキュリティです)。
そして重要なのが、集めたデータをどう活用するかということ。
ここ20年ほど、全国各地では「医療情報の一元化」とか「病院のカルテをクリニックで活用する」といった、ITを使った医療システムが構築されることがよくありました。国や都道府県の補助金を使った実証実験だったりもしますが、これらは今、どれくらい稼働を続けているのでしょうか。
やってみて終わりではなく、せっかく集めた生きたデータなのですから、どうせなら思いっきり活用して欲しいと思います。
実際に結果が出るのは数年先だと思いますが、動向には注目していたいと思います。
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