【医療ニュースPickUp 2015年8月28日】 減少傾向がとまらない“ベッド数” 医療施設動態調査結果より
2015年8月25日、厚生労働省は、医療施設動態調査の結果を公表した。平成27年6月末概数ではあるが、医療機関数、ベッド数ともに減少傾向が続いている。
およそ1,000床近くが減少
この調査は「病院及び診療所(以下「医療施設」という。)について、その分布及び整備の実態を明らかにするとともに、医療施設の診療機能を把握し、医療行政の基礎資料を得る。」ことが目的で、毎月行われてる。
今回公表された調査結果のポイントは以下の通りである。
- 病院の施設数は前月に比べ2施設の減少、病床数は 671床の減少
- 一般診療所の施設数は31施設の増加、病床数は253床の減少
- 歯科診療所の施設数は13施設の増加、病床数は増減無し
一般診療所に関しては、31施設が増えてはいるものの、そのベッド数は253床減少している。病院に至っては、2015年6月の1カ月間で、2病院が減少し、地域の中核病院の規模に相当する671床が減少している。病院と一般診療所を合わせると、およそ1,000床近くが減少していることとなる。
結核病床数は変わらず、感染症病床は4床増加しているものの、一般病床は55床減、精神病床は132床減、療養病床は488床が、1カ月の間に減少している。一般診療所においても、253床が減少している。
医療機関数でみると、地域医療支援病院の病院数は8病院増加しているものの、一般病院が3病院、療養病床を有する病院が5病院減少している。その一方、有床診療所が23施設減少しているが、無床の診療所は54施設が新たに開設されているという結果となった。
病院病床数の過去2年間の推移をみると、病床数が増加する月も数回あるが、全体的には減少傾向にあり、2013年6月の1,575,733床と比較し、2015年6月は1,566,965床であり、過去2年間で8,768床が減少しているという結果となった。
都道府県別では、2015年6月の1カ月間で
- 病院数が減少したのは、北海道(1)、秋田県(1)、神奈川県(1)、静岡県(1)、愛知県(1)、鹿児島県(1)で、香川県では1病院増加している
- 病床数が減少したのは、北海道(77)、青森県(24)、秋田県(82)、山形県(4)、福島県(5)、神奈川県(192)、新潟県(18)、岐阜県(12)、静岡県(91)、愛知県(109)、三重県(3)、大阪府(62)、兵庫県(17)、愛媛県(23)、福岡県(219)、鹿児島県(81)
という結果となっている。
参考資料
厚生労働省 医療施設動態調査(平成27年6月末概数)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/m15/is1506.html
同上 医療施設動態調査(平成27年5月末概数)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/m15/is1505.html
同上 医療施設動態調査(平成25年6月末概数)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/m15/is1306.html
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
全国的にみると、病院やベッドの数って、たった1カ月間の間に、こんなに変わるものなのか、と思いました。医療保険制度の改革など、病院から在宅へ!という流れの影響の1つなのでしょうか。日本の少子高齢化の現状をみれば、
その数の延び率はお世話する人 <<<<< お世話される人
となることは明らかですので、これも致し方ないことなのかもしれません。
本文には書きませんでしたが、病床数が増えている都道府県、というのも実はあります。
岩手県(123床)、埼玉県(13床)、千葉県(22床)、東京都(42床)、山梨県(6床)、長野県(30床)、京都府(73床)、広島県(1床)、香川県(38床)です。
岩手県は、病院数も1つ増えています。既存の病院でベッド数の減少があっても、病院が1つできれば、それなりにベッド数も増える、ということなのでしょうか。
ある地域に新しい病院が新設される時、その地域では“看護師争奪戦”が起こります。例えば、大学の付属病院などの場合は、看護師の管理職は“大学から派遣”もあるかもしれません。
しかし看護師は基本的に、“医療機関に雇われる”ものですので、新しい病院ができる → 看護師の大量採用が必要 → 大々的に募集広告を出す → 大量採用という現象が起こるわけです。
結果的には、その周辺地域の病院からの“引き抜き”もありますし、雇用条件がよくない病院からは多くの退職者が出ます。また、周辺地域の病院だって、常に募集広告を出しているような現状ですので、良い人材の“看護師争奪戦”が起こるわけです。
病院が新設される時、この現象は開設日の遅くても1年前には始まっています。病院規模にもよりますが、およそ半年前には“開設準備チーム”が出来、 “誰がどんな働きをするか”を決めます。病院の中では“地位の争奪戦”が静かに始まっているわけです。
この争奪戦に勝った看護師は、若くてもある程度の地位を築けますが、負けると上にあがることはなかなか難しくなります。目に見えない負の感情が渦巻いていることもゼロではありません。
医師の世界では、なかなか無いことかもしれませんが、新設の病院に赴任した際には、看護師同士の人間関係を観察してみると、面白いかもしれませんね。
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