【医療ニュースPickUp】2015年6月17日
医療にまつわる気になるニュースを当研究所独自の目線で掘り下げて記事にしている「医療ニュースPickUp】。このコーナーでは、まだ大手マスメディアが報道していない医療ニュースや、これから報道が始まるだろう時事的医療ニューストピックを、どこよりも半歩素早く取材・記事化していくコーナーです。
MERS すでに近隣の国への拡大リスク?
2015年6月16日現在、韓国でのMERS感染者数は、累計で154人となっており、その内すでに19人が死亡し、17人が退院している。韓国内でのその他の状況としては、
- 感染疑いのある患者 累計5,897人
- 濃厚接触者として隔離対象となっている者 累計5,216人
- 14日間の健康観察を完了した者 3,122人 となっている。
近隣諸国の状況を見ると、中国では感染が確認された韓国人男性に対し、起訴される可能性が出てきた。この男性は、香港経由で中国へ入国したことが分かっている。
入国の際、空港の衛生検疫職員が発熱・咳などの症状について確認し、さらにMERS患者との接触の可能性と、中東地域への渡航歴を確認したが、この男性は否定したと報じられている。
しかし、当の男性は、自分が感染していることを自覚していなかった可能性がある。ここでも、韓国の初動対応の遅れが指摘されている。
一方、日本でも韓国内で感染者と接触した可能性があり、隔離対象となっていた日本人2人が、すでに日本へ帰国していることが分かった。入国時より保健当局が対応しているが、現在のところは特に症状は見られていないという。
日本では6月1日付で、韓国からのMERS感染者入国に対する注意喚起について、厚生労働省から各自治体への通達が出されている。その後も、各検疫所での韓国への渡航歴の確認や、韓国からの帰国者に対する対応について、情報提供を行っている。検疫所にはポスターなども掲示されている。
また、国立感染症研究所は2015年6月4日付で「中東呼吸器症候群(MERS)のリスクアセスメント」を公表している。この中に、韓国での初発例の患者について「発症から確定診断されるまでの10日間に4つの医療機関で加療を受けており、そのうち3つの医療機関において2次感染が発生し、さらに2次感染例が加療を受けた医療機関において3次感染が発生した」という記述がある。
これは韓国特有の文化ともいえる「医療ショッピング(体調不良などの原因がすぐに分からない時、原因が確定するまで、複数の医療機関を受診するという習慣)」によって、医療機関内での感染拡大につながった可能性を指摘している。
参考資料
朝日新聞 MERS隔離対象の邦人、すでに帰国 日本で健康観察
http://www.asahi.com/articles/ASH6H7VJ2H6HUHBI04Q.html
厚生労働検疫所FORTH 2015年06月16日更新 韓国における中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況
http://www.forth.go.jp/topics/2015/06161416.html
同上 2015年06月02日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新25
http://www.forth.go.jp/topics/2015/06020911.html
RecordChina 香港政府、MERS感染疑い隠して入国した韓国人男性を起訴へ―中国紙
http://www.recordchina.co.jp/a111184.html
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
MERSのニュースを見ると、どうしても2003年ころに中国での感染を皮切りに、アジアを中心として世界各国に感染が拡大したSARSや、2009年頃の新型インフルエンザの事を思い出します。
当時、新型感染症が出た!という状況で、検疫所でもかなり厳重なチェック体制が敷かれていたとは思うのですが、特に新型インフルエンザの時、初めて「日本に入国した」という報道を見た時は、「とうとう来たか!」と、かなりドキドキしたことを覚えています。
今回のMERSは、ラクダから始まった感染症ですが、そもそもラクダのいない(一部の動物園などは除く)地域である韓国で、これだけ流行してしまったのは、やはり初動の時点で大きな間違いがあったのではないかと考えてしまいます。
日本では、16日夜に成田空港のある千葉県で、医療関係者などを集めた緊急のセミナーが開催されたようですし、全国的(特に千葉県)に緊張感が高まっているのではないでしょうか。
今朝方ですが、WHOが今回のMERSの感染拡大について、「緊急事態」に該当するかどうかの検討を始めており、これは昨年8月の「エボラ出血熱の緊急事態宣言」に続くのものだそうです。
日本は、すぐ近隣でこの状況を目の当たりにしているのですから、万が一日本で感染確定者が出ても、ここまでの拡大がないことを祈っています。
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