【医療ニュースPickUp 2016年6月25日】認知症予防に向け、健常者対象の新オレンジプラン統合レジストリがスタート
2016年6月22日、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(以下 NCNP)は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「認知症研究開発事業」の支援により、国立長寿医療研究センターなどと共同で、認知症の発症予防を目指したインターネット健常者登録システムIROOPTM(IntegratedRegistryOfOrangePlan:以下、アイループ)を開発し、登録・運用を開始すると公表した。
国際的にも極めて大きな意義
日本は、2025 年には団塊の世代が 75 歳を迎え、国民の 4 人に 1 人が 75 歳以上になる。これに伴い、ここ数年で急増している認知症人口も、2012年時点の462万人から、2025年には700万人にまで増加すると予測されている。これは、日本だけの現象ではなく、世界全体で高齢化が加速していることから、認知症人口は世界規模で急増している。
こうした背景により、認知症、特にアルツハイマー病に対する対策が、国際的に喫緊の課題となっている。
しかし現在は、アルツハイマー病を根本的に治療する方法はない。その原因の1つには、認知症の発症予防の方策を見つける研究や、認知機能の改善が期待される薬剤の開発がなかなか進まないという現実がある。
そんな中、欧米では環境要因や生活習慣病への取り組みにより、認知症の有病率が下がったという報告もある。日本においても、これらの予防策の有効性を実証すべく、広く一般からの参加者を募るのが狙い。
アイループは、日本に在住し、日本語を母国語とする40歳以上の健康な国民を対象とする。登録時ならびに半年ごとに、インターネットを通じたアンケート調査を行い、記憶力や認知能力の変化をチェックする。登録者は、その結果を翌日以降、インターネット上で確認することができ、自分自身の経時的な認知機能指数(MPI)を確認できる。
今回のシステムは日本初となるが、既に欧米では、アイループ同様、インターネットを用いた健常者レジストリが運用されている。NCNPでは、「今後、アイループがこれらの欧米のレジストリシステムと協調することとなっており、アイループの果たす意義は、国際的にも極めて大きなものである」としている。登録者数は、初年度8,000人を目指す。
参考資料
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター プレスリリース
国立精神・神経医療研究センターが認知症予防のための日本で初めての
健常者対象の新オレンジプラン統合レジストリ;『IROOPTM』の運用を開始
http://www.ncnp.go.jp/pdf/press20160622.pdf
厚生労働省 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)概要
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/nop1-2_3.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
あくまで個人的なものですが、ついに日本も動き出しましたか!というのが素直な感想です。
世界的に高齢化が加速し、どこの国に行っても、認知症人口は増加の一途をたどっています。その中でも、もっとも高齢化が加速しているのが日本なのですから、もっと前からこういった取り組みがあっても良いのでは?と思っていました。
現在のところは、アルツハイマー病の直接的な原因って分からないわけですから(これが要因の1つ、というものはあったとしても)、じゃあどんな生活を送っていれば、アルツハイマーになりにくいのか?というテーマは、日本人の脳で調べる必要があるのではないかと思います。実際、全国民に対する認知症人口の割合も多いですし。
もちろん、認知症の原因はアルツハイマー病だけではありませんが、統計上は認知症人口のおよそ半数を占めているわけですから、「アルツハイマーにならない生活」が分かれば、少なくとも、認知症人口の増加率には歯止めがかかると考えられます。
2025年、私自身はまだ「高齢者」ではありませんが、あと10年、この脳を維持していけるのかどうか、全く分かりません。決して、他の人に誇れるような生活習慣とも言い難いですし、自分自身へ戒めのため、あるいは自分自身の認知機能の経時的変化を把握するためにも、登録してみたいと考えています。
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