【医療ニュースPickUp 2016年3月30日】食バランスガイドを守ると、脳血管疾患や循環器疾患の死亡リスクが下がる?
2016年3月23日、国立がん研究センター(以下、国がん)は、多目的コホート研究 JPHC Studyの研究成果として「食事バランスガイド遵守と死亡との関連について」を公表した。この研究成果は、イギリス医師会雑誌 British Medical Journal(2016年3月22日号)に掲載されている(Web公開済)。
世界的にも大きな期待が寄せられる
今回の研究では、2005年に厚生労働省・農林水産省が策定した「食事バランスガイド」に対し、遵守度を点数化し、平均15年の死亡(全死亡・がん死亡・循環器疾患死亡・心疾患死亡・脳血管疾患死亡)リスクを比較しました。調査は、以下の方法で行われた
- 対象者は、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所(呼称は2014年現在)管内に住んでいた40~69歳、
- 平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、食事調査を含む生活習慣についてのアンケートを実施
- 5年後の平成7年(1995)年と平成10年(1998年)には、より詳しい食事調査を含む2回目のアンケートを実施し、当時の生活習慣についての回答を得た
- そのうち、1回目と2回目の調査時点で、循環器疾患、がん、肝疾患のいずれにもかかっていなかった男女約7万9600人を、2回目の調査時点から平均約15年追跡した
これらの調査結果にもとづいて、食事バランスガイド遵守と死亡との関連を調べた
その結果、「食事バランスガイド」の遵守得点が高いほど、総死亡のリスクが低下し、遵守得点が10点増加するごとに、総死亡リスクが7%減少した。死因別では、がん死亡については統計学的な関連がみられなかったが、循環器疾患による死亡および脳血管疾患による死亡はそれぞれ、7%と11%のリスク低下が確認された。
心疾患死亡については統計学的な関連し絵は見いだせなかったものの、遵守度が高いほど死亡リスクが低い傾向がみられた。
今回の研究で、「食事バランスガイド」の遵守度が高い人ほど、特に脳血管疾患の死亡リスクの低下との関連が明確になった。また、循環器疾患のリスク低下は、「食事バランスガイド」の副菜および果物の遵守度が高いほど、顕著だったという。これらのことは、野菜・果物摂取により循環器疾患のリスクが低下したという国内外の研究と一致している。
また、主菜の「食事バランスガイド」遵守度が高いほど、脳血管疾患死亡のリスクが低下したことになり、魚や肉の摂取量と脳血管疾患のリスクとの関連性がより明らかになった。
参考資料
国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ
2016/3/23 食事バランスガイド遵守と死亡との関連について
http://epi.ncc.go.jp/jphc/773/3787.html
同上 食事バランスガイド遵守と死亡との関連について-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果報告-
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3788.html
BMJ Quality of diet and mortality among Japanese men and women: Japan Public Health Center based prospective study
http://www.bmj.com/content/352/bmj.i1209
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
ここ数年、「食事バランスガイド」って本当にいろいろなところで見かけますが、これが作られたのって、10年ほど前だったんですね。さすがに10年も経つと、かなり広範囲に普及しているように思います。
私自身がよく見かけるのは、糖尿病に関する記事作成などの仕事をしている時でしょうか。実際、糖尿病患者さんに取材などに伺うと、「食事バランスガイド」の使い方などを伝授されることもありました。
これって、どの辺まで改変して良いのかが分かりませんが、いろいろ検索してみると、「妊婦さん版」とか「鹿児島県版」など、バリエーションがあって面白いです。どうしても、国が最初に作ったものですから、例として挙がっている食材が、一般的ではありますが地方の特色のようなものはないですよね。
ましてや「妊婦さん版」って、考えた人はスゴイと思います。妊娠中期からは、主菜・副菜・果物を増やし、妊娠後期と授乳期は主食と乳製品も増やすそうです。
ちなみに、鹿児島版を見てみると、主菜の中に「きびなごのさしみ」や「とびうおの開き」が、果物には「でこぽん」がありました。福井版は主菜に「かに」があったりします。さすが!
食事療法が必要な疾患になると、「食べる楽しみ」よりも「生きているために決められた量を食べる」ようになってしまいがちですよね。こういった地域性ゆたかなものがあると、少しは「食べる楽しみ」を味わうことが出来るかもしれません。
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