【医療ニュースPickUp 2015年9月25日】 採血せずに未熟児の黄疸をチェック 神戸大学の研究結果より
2015年9月23日、神戸大学は、脳性まひや難聴の原因ともなる「未熟児の黄疸のレベル」を、皮膚に計測器を当てて調べる方法を、神戸大学を中心とした研究チームが発見したと公表した。この研究成果は、日本時間の9月23日、米国小児医学雑誌「The Journal of Pediatrics」電子版に掲載された。
赤ちゃんに痛みを感じさせずにモニタリング
この研究は、神戸大学大学院医学研究科の森岡一朗特命教授、飯島一誠教授(小児科学分野)らを中心とした研究グループで行われた。
研究グループはまず、成熟児の日常診療に用いられている「経皮黄疸計」に着目、未熟児の脳性まひや難聴の原因となる黄疸を、「採血などによる痛み」を伴わない方法で、皮膚を客観的にモニタリングすることにより、予防できる可能性を提唱した。それと同時に、適切な測定部位の検証を行った。
対象となった未熟児は、神戸大学、加古川西市民病院、兵庫県立こども病院、姫路赤十字病院、高槻病院の、NICUに入院した体重1500グラム未満で出生した85人。これらの未熟児に対し、計383回のビリルビン値を測定した。それと並行し、採血後1時間以内に「経費黄疸計」を用いて、経皮ビリルビン値を測定した。
その結果、未熟児の胸部あるいは背部がもっとも感度が高く、採血による「血中ビリルビン測定値」との誤差が少ないことが確認されたという。測定結果の実際のデータを見ると、
- 額部(n=277):感度 84.2%、特異度 88.0%
- 胸部(n=222):感度 100%、特異度 85.5%
- 背部(n=177):感度 100%、特異度 85.4%
- 下腹部(n=174):感度 63.6%、特異度 86.5%
- 腰部(n=157):感度 84.6%、特異度 93.1%
という結果になっている。
現在の日本では、未熟児医療技術の発展や、新生児集中治療室(NICU)が整備されたことで、未熟児の救命率は世界一となっている。しかしその一方、出生後の黄疸により、未熟児の脳性まひや難聴が残る症例が後を絶たない。
この研究の背景には、在胎30週未満の未熟児のうち、1000人あたり少なくとも2人以上で出生後の黄疸による脳性まひや難聴が残る症例が発生しているという報告があること、NICUに入院中、長期間にわたってモニタリングする必要性があること、その一方で、未熟児の黄疸は毎日の採血によるモニタリングが事実上不可能であったことなどが挙げられている。
森岡特命教授は「小児科医の間でも新生児黄疸はすでに解決された疾患と思われがちだが、未熟児の脳への影響はまだまだ不明なことが多い。未熟児への適切な黄疸管理を提供することにより、脳性まひや難聴の後遺症を予防したい」と述べているという。
参考資料
神戸大学 未熟児の脳性まひ 皮膚でモニタリングし予防を
http://www.kobe-u.ac.jp/NEWS/research/2015_09_23_01.html
The Journal of Pediatrics
Screening for Hyperbilirubinemia in Japanese Very Low Birthweight Infants Using Transcutaneous Bilirubinometry
http://www.jpeds.com/article/S0022-3476(15)00965-8/abstract
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
新生児の黄疸って、多いのかどうかは分かりませんが、私自身、下の子が生まれた時、早期黄疸により光線療法を受けていたことを思い出しました。
在胎41週目の出産でしたし、体重が3,000グラムを超えていたので、未熟児ではないのですが、出生直後から熱発し(新生児の体温測定って、どうやって測定したのかは、見ていなかったので不明ですが)早期黄疸が確認されたということで(どうやって?は、やはり不明、多分採血はしていたような気がしますが)、出生後4時間くらいで、小児科病棟へ子どもだけが転棟していきました。
ちび助に会えたのは翌々日。光線治療の器械の中で、点滴されながら眠っているのを見て、結構驚きました。
緊急帝王切開だったので、私自身も4日間ほど子どもと離れて入院しているのは、それなりに体調は整いましたが、それを考えると、トータルで3日間ほどは、光線治療を受けたいたことになります。結構、長いですよね。幸いなことに後遺症は(今のところ)ありませんが、原因は血液型にあったのかもしれないと言われました。
私が出産した病院にはNICUはありませんでしたし、超未熟児はいなかった(専門病院へ搬送されていた)と思いますが、2500グラム未満くらいの未熟児は入院していたように思います。3000グラムを超えていた私の子どもでも、毎日の採血とかは難しいだろうなと思いますので、未熟児であればなおさらですよね。
赤ちゃんにも痛みを感じさせないこの方法で、1人でも多くの未熟児が救われることを祈っています。
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