【医療ニュースPickUp 2016年11月21日】平成29年度の医師の臨床研修の実施体制を公表 厚生労働省
2016年11月16日、厚生労働省は「平成29年度の医師の臨床研修の実施体制」を公表した。
これによると、大都市部を除く道県での募集定員割合が新制度導入以降昨年度同様最大の水準になっているという。
研修医受け入れ先が最も多かったのは平成21年度の1,114か所
【臨床研修実施施設の状況】
公表された資料によると、「平成29年度から臨床研修を開始する研修医を募集する臨床研修病院・大学病院」は、1,030か所となり、平成28年度の1,027か所よりも3か所の増加となっている。
研修医の受け入れ先となる医療機関は、平成16年に現在の医師臨床研修医制度が導入されて以来、わずかながら増減しており、平成16年度(927か所)と比較すると、平成29年度ではおよそ1.1倍。
この間、もっとも多かったのは平成21年度(1,114か所)だった。
【募集定員の状況】
平成29年度の研修医募集定員は、11,390人となり、平成28年度の11,272人よりわずかに上回っている。
この中には、一定規模以上の医療機関に必置となる「小児科・産科」の研修プログラムに対する特例定員(441人)も含まれている。
地域別では、大都市部のある6都道府県(東京、神奈川、愛知、京都、大阪、福岡)を除く各道県における募集定員の割合は63.7%となり、平成16年度以降最大の水準となっている(平成28年度は63.4%)。
【新 医師臨床研修制度 導入後との比較】
しかし、現在の臨床研修医制度となって以降、研修医の受け入れ病院の数が増加し、それに伴い指導体制等に格差が生じているとの指摘もある。
これに対しては、平成22年より、臨床研修病院の指定基準を強化するなどの見直しが行われている。
それにも関わらず、研修医募集定員と、実際に応募するであろう研究希望者との間にも格差がある。
平成29年度に臨床研修をスタートさせると見込まれる、現役医学生(医学部6年生)の人数は、おおよそ8,900人あまり。
平成23年の医学部定員は8,923人だったことから、そこには2,500人弱の開きがあることとなる。
臨床研修医の募集定員を地域別にみると、6都道府県では減少傾向、その他の道県では増加傾向ではあるが、研修医が都市部に集中しやすい状況は続くと予測される。
参考資料
厚生労働省 平成29年度の医師の臨床研修の実施体制を公表します
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000142928.html
同上 平成29年度の医師の臨床研修の実施体制
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10803000-Iseikyoku-Ijika/232.pdf
同上 平成29年度に臨床研修プログラムを実施する予定の臨床研修病院一覧
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10803000-Iseikyoku-Ijika/532.pdf
同上 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会(第6回)
医師需給分科会 中間取りまとめ(案) 補足資料
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000120212_5.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
こういった情報を見ている、と医師の研修医体制はやはり他の職種等とは違い、全国規模で規定されるものだということが分かります。
医師は、国全体で育てるもの、そこから全国での「偏在」問題を解決していかなければならないもの、という特徴がありますよね。
同じ医療者でも、看護師や薬剤師、その他のコメディカルでは、こういった「全国規模で“一人前に育て上げる”仕組み」は、無いのではないでしょうか。
もちろん、看護師にもそれぞれの年数での「達成すべきレベル」はあります。しかし、養成機関を出て“就職”することで、その就職先での基準に基づいた教育が行われるものであり、看護師が不足している地域への派遣、というようなものはありません(大学病院等、全国規模で関連施設をもつところはこの限りではないかもしれませんが、通常は“就職した病院でのプログラムに則って”です)。
また、研修医の頃から「小児科・産科プログラム」という、医師不足が深刻化している特定の科に対する特別なプログラムがあり、それを国が決めているというのも、一般的には分かりにくい仕組みなのかもしれません。
恐らく、こういった仕組みを整えておかないと、地域によっては「産科が閉鎖」という状況も、有り得るのだろうなとは、容易に想像できます。
以前、とある地域の中核病院を見学させて頂いた時、産科病棟の設備の充実さに驚いたことがあります。病院自体が新しく、設備が整っているという面もありましたが、自宅にいるよりも快適なのではないか?というくらい、設備が整った部屋(個室)でした。
でも出産費用はそれほど高くは無い、むしろ東京都内の病院よりも安いくらい。
理由を聞くと「出産費用を高くしたいのは山々だが、そうするとこの地域の人は子供が産めなくなるから」と仰っていました。同地域内には、他に出産可能な施設が無いから、とのことです。
それにしても、「研修医として応募する人数」と、その受入先となる「募集定員」の間にこれだけの開きがあると、定員割れする医療機関が多数存在することになりますよね。
研修医として入った病院に、そのまま就職する医師が大多数を占めたとしても、「医師の偏在」問題が解決するまでには、まだまだ時間がかかりそうですね。
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